
🦉地母神からあなたへ🦉
「この世界では幸せと不幸の総量が決まっているから、誰かの幸せは必ず誰かの不幸に繋がっているの」
「誰かが不幸になっているのに、私だけ幸せを享受して笑うことなんてできない」
そう言って彼女は今日も人々の痛みを引き受けます。
いつの世も悲しみが消えぬというなら
私が引き受けましょう。
はるか昔
彼女は身体を八つ裂きにされました。
彼女は大地そのものでありましたから、
地震や噴火や洪水等を恐れられたのかもしれません。
彼女の霊は特殊な器を持つ一族の童子に封じられました。
彼女は夫を亡くし、寂しさのあまりに快楽に身を寄せ、殺し、喰い続けた過去がありました。その罰を受ける時がきたと、封印を甘んじて受け入れたのです。
八つ裂きにされた彼女の身体からは多くの植物が生まれ、世界中に広がっていきました。
植物達は彼女の分霊であります。
刈り取られるたび、
食べられるたび、
彼女の魂は痛みを覚えるのですが、
愛する我が子である人間たちのために耐え続けるのでした。
彼女の優しさはある意味で「支配」でもありました。
作物を育てるということを覚えた人々は
定住をするようになり、
社会をつくり、
ルールをつくり、
階級をつくりだしました。
彼女のつくる箱庭としての社会では、
朝起きて
朝食を食べ
会社や学校に行き
昼食を食べ
帰宅して
夕食を食べて
眠りにつく
時折、
恋愛をしてみたり、
趣味を持ってみたり、
旅行に行ってみたり、
家族を作ってみたり
なんとなくこれじゃ駄目だという漠然とした不安が芽生えても、
夕食を食べたら…
まぁいいか。
そんな日々が続きました。
彼女にとっての愛は自ら痛みと引き換えにそれらを与えること。
それ以外の愛し方は知らないのです。
彼女の力は「稲荷」として今日も人々の願いを叶えるために都合よく使われるのですが、
一方で人々もまた彼女から愛という支配を受け、
社会の歯車として生きるのでした。
めでたしめでたし ?
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