『あいたくてききたくて旅にでる』
1年前に出版され、色んなところで評判であることは知っていたのですがやっと手に入れました
とんでもなく良い本です
むかし、むかし。あるところに——
海辺の町や山奥の集落で、口から耳へと語り継がれてきた「民話」
東北で50年ものあいだ、一軒一軒の戸を叩きながら「民話」を乞うてきた民話採訪者が聞いたのは
民話とともに語られた「民の歴史」、抜き差しならない状況から生まれた「物語の群れ」だった
これまで50年にわたり東北の村々を訪ね、民話を乞うてきた民話採訪者・小野和子。
採訪の旅日記を軸に、聞かせてもらった民話、手紙、文献などさまざまな性質のテキストを、旅で得た実感とともに編んだ全18話と、小野の姿勢に共鳴してきた若手表現者—濱口竜介(映画監督)、瀬尾夏美(アーティスト)、志賀理江子(写真家)の寄稿がおさめられています。
表紙や本中には志賀が東北で撮りおろした写真を掲載。一字一字を精密に美しく組んだ大西正一によるデザインワークも魅力のひとつです。
東北で50年、自分の足で集めた民話をまとめた本
バスに乗り、見つけた民家の戸を叩き
「昔話が聞きたいので教えてください」と尋ねて行く、あてのない旅
年末年始の楽しみに、と思っていましたが
読んでしまいました
民話というと「むかしむかしあるところに…」で始まり、その地域の人に古くから伝わり、教えなり秘密なりが込められている、という形式のあるものだと思っていましたが
この本は違いました
古い歴史に隠された話、小さい頃に聞かされた話、実際に経験した不思議な話、忘れられない思い出、
そして、そのお話に出会うまでと話してもらっている情景までが収められています
語りの手の人生も
全体を通して
東北らしい人懐こい優しさと、他者を受け入れないような壁と、人生通しての生活の厳しさ苦しさが
ずっしりのしかかってきます
苦労話ならいくらでも…という語り手さんが多いのですが
そんな暮らしの中で「お話」がどういう役割であったかがとても興味深いのです
教訓を伝えたり、個人的な思いを伝えたり
語ることで気を紛らわせたり
語ること自体がコミュニケーションであり思い出であり
語ること、聴くことが
まさに生きることなんだな、と
どんな世の中であっても、それが不変の生きる力なのかもしれない
簡単に言いますと…
大感動でした!!
泣きました!!
多くの方に届いて欲しい本です!!
というのが、わたしの感想のど真ん中です
文学、民俗学、旅行、スピリチュアル、オカルト…
他にもありそう
全方向の方へおすすめです
私は馬、犬、猫とのお話が好きだったな
なんなら対人間よりも愛が溢れていた
本自体のデザインも素敵です
カバーを外すと一面写真なのですが、神秘的で素朴で美しく陰鬱
文字も生々しく語られる内容と反するように、整然と感情を排したように並べられているようで
本当によい仕事
素晴らしいです
読み進めるとあまりにも厳しい人生ばかりに辛くなったり、
自分と比べ、私なんて文句ばっかりでダメだわーと思ったりもしちゃうのです
苦しさに耐えた方が偉い、楽しいのはダメだというわけではないけど
語り手の方々の辿ってきた道を思うと涙が…
時も場所も違えど、その思いに寄り添うことができるのも不思議なものだ
語る、聴くという無形のものが
大きな力を持っているのは間違いないですね
私が誰にも話さず、ここに綴った話も
語り出したらそれは民話になるんだな
そして、遠野へ行った時の宿のおばあちゃんのお話を思い出しました
まさにこれだ↓