花鳥諷詠
雨が降ってきた。それは、こんにちはと言うんだ。けれど、道行くひとびとには気づけなくて、それはだんまりとひとびとの肩にのっただけ。
のっただけのそれに、
肉屋の裏の猫が最初に気づいたみたい。
猫がそれを囲うんだ。
寂しかったね、猫はそれに気づいただけ。
軈て、
まだまだ風の吹くころには、遠くに運ばれてまた肩にのり、それでも気づかれず。知らない国を旅した。いつしか、ひとびとがそれに名前をつけるころに、
ようやくと哭くんだ。
ほんとうに長い道程の果てだった。けれど、それは形が思い出せないくらいになっていて、ひとびとはそれを醜いといった。
夏がくれば、忘れてしまう。
冬がくれば、一層と醜くなるからね。
次は鳥にのせてもらうよ。
そうして、いつか誰もいないところで咲く。
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