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【映画批評】#34「十一人の賊軍」白石和彌のマジメさが裏目に?

江戸幕府から明治政府へと政権が移りかわる中で起こった戊辰戦争を背景に、11人の罪人たちが藩の命令により決死の任に就く姿を描いた時代劇アクション「十一人の賊軍」を徹底批評!
白石和彌×時代劇かつ三池崇史監督の大傑作「十三人の刺客」を彷彿とさせるタイトルに最大限に上げた期待値が裏目に。正直、話の滑り出し、座組、構造からそりゃ盛り上がりに欠けるだろうと思ってしまった。


鑑賞メモ

タイトル
 十一人の賊軍(155分)

鑑賞日
 11月1日(金)20:35
映画館
 あべのアポロシネマ(天王寺)
鑑賞料金
 1,300円(映画の日)
事前準備
 特になし
体調
 すこぶる良し


点数(100点満点)& X短評

50点


あらすじ

「十一人賊軍」公式HPより引用

ネタバレあり感想&考察

待ち構えるだけの舞台設定と捨て駒罪人軍
そりゃ盛り上がりにくいでしょ

なんだかなぁ…といった感想しか出ない。
考察のしがいのあるテーマも示されているし、その部分の魅力は理解しているけど、ノリ切れなかった。あと単純に長すぎる。

正直、今回は短文で済ませる。温度が低い。
それぐらい、観る前の期待値と観た後のガッカリ度の落差が大きい。
50点という点数は、とはいえ一定の出来栄えはあるし、役者陣の頑張りは目を見張るものがあるからであって、個人の気持ち的にはもっと低い。

元も子もないことを言ってしまうが、これ構造的に盛り上がりようがないだろうとしか思えない。もともとの十人の賊軍は本当に受け身で組まされたエクスペンダブルズ(消耗品)だし、各人の罪の恩赦が目的って話としてちょっとみみっちいなと。言っちゃうと大義がない。
この恩赦も体制が反故にするだろうことをその時点で読めてしまったが故に、早く結論に行ってくれといった態度になってしまった。新発田藩の侍たちも明らかに賊軍の扱いがぞんざいだから、返り討ち食らうのも当然というか、ある意味当たり前の結果が続く。ここも単調に感じる。

「十一人の賊軍」と聞いたら「十三人の刺客」を連想するのは必然なので、この戦う大義の中身に明らかな差を感じてしまった。人数の多さによる各人のキャラ描写も薄い。当然一致団結もしにくい。山田孝之が抜け駆けを図るのも理解はするが、複数回やられるといい加減にしろとなる。そのせいでまた長くなる。時代劇アクションが最大の売りであることには変わりないんだから、さっさと戦いに集中させてほしい。
それに加えて舞台自体が待ち構えるだけの設定となると、いよいよ盛り上がりに欠ける。心理的にも物理的にも遠いドンパチが複数回繰り返されるだけ。ラストのダイナミックなドンパチのためのタメとはわかっているものの、もうその時には飽きて疲れてしまっていた。

阿部サダヲの新発田藩と同盟軍、官軍との政治的攻防も見どころではある。
しかし、白石和彌的テーマに近いためかここの描きこみを厚めにぶち込むから、一本の映画に対して捌くべき要素が多すぎる。
「仮面ライダーBLACK SUN」のような理想と現実のはざまで思い悩み、痛みを伴いながらの苦渋の決断を描きたいのはわかるが、正直食傷気味である。
白石作品と距離を置く時が来ているのか。本作こそ職業監督に徹し、一つのテーマにフォーカスを当てるべきではなかったか。

「BLACK SUN」はドラマだから描きこみの時間は十分に用意されていたし、「凪待ち」のようなヒューマンドラマであれば役者の演技と脚本にフォーカスできる。ところが本作は観終わった後に時代劇アクションも、政治的攻防も、現代につながる説教的なテーマも、といろいろ欲をかいて捌ききれなかった印象が強い。せめてどれか一つブチ抜いて面白いところがあれば、大きく印象が変わったのかもしれない。

ひとつひとつの要素はたしかなだけにもったいなく感じた。非常に残念。


まとめ

仲野太賀はめちゃくちゃ良かったです。
座組からどうしても山田孝之が主役と勘違いしてしまいますが、仲野太賀のための映画と言っていいです。彼がいなかったら観ていられない作品になったかもしれません。

ほか、鞘師里保と佐久本宝も良かった。あまり観たことなかった役者なので、こういうキャスティングのセレクションはやはり白石監督、そこはしっかりクオリティを出してきますね。あとは井筒和幸監督作「無頼」組の松角洋平さんと佐藤五郎さんのキャスティングはテンション上がりました。

それだけにやっぱり素直に良い作品だって言いたかったなぁ…。

鷲尾平十郎役:仲野太賀
なつ役:鞘師里保
ノロ役:佐久本宝

最後に

SANADAくん、ようこそWAR DOGSへ!

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ご拝読、ありがとうございました。


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