【映画批評】#16「ひどくくすんだ赤」典型的な"役者陣は頑張っている"映画
衝撃の短編映画「うまれる」の田中聡監督が新たに放つ禁断の問題作「ひどくくすんだ赤」を徹底批評!!
無類の特撮ファンである筆者との46分一本勝負は両者リングアウトによる消化不良?!
鑑賞メモ
タイトル
ひどくくすんだ赤(46分)
鑑賞日
8月4日(日)9:25
映画館
テアトル梅田(梅田)
鑑賞料金
実質0円(ムビチケエポスポイント利用)
事前準備
予告視聴
体調
すこぶる良し
点数(100点満点)& X短評
30点
あらすじ
ネタバレあり感想&考察
俗悪だったらリアルなの?
そこ一辺倒で来られてもノレない
正直、温度が低い。あまりノレなかった。
予告はすごくノレそうだったのに…。
あえてわざわざニチアサに観に行ったけど、ほぼ意味はなかったなと。
※ニチアサ:テレ朝の仮面ライダー・スーパー戦隊シリーズの放送枠が日曜日の朝のため、そう呼称されている
主演の松澤さんはじめ、役者陣の演技は目を見張るものがあった。
動画で観た舞台挨拶での松澤さんのお話を聞くと、一世一代の晴れ舞台なのは十分理解しているし、それ自体には感動した。作中の演技、特にラストは強烈で、ものすごく印象に残った。
今後の活躍が待ち遠しいと思える役者さんなのは間違いない。
子役時代の面々もほっこりするし、ピンクの女の子は近い将来売れると思う。これは本当に原石発見!といった感じ。
ただそういうところに楽しみを見出さないと持たない映画でもあった。
スーパー戦隊のレッドだった主人公が過去に犯した罪の贖罪と清算を40年越しに行うという物語。
46分の短編映画のため、描き切れなかった設定等は多分にあるだろう。ただそれにしても、そもそもの話の作りが弱い気がする。この40年がまるまる空白なので、想像で埋めるにはかなり無理がある。そこを描かないとやっぱり繋がらない。なんで40年もかかるんだよと思ってしまうし、登場人物の言うとおり何をいまさらとしかならなかった。
その過去の罪自体もあまりにも軽薄で俗悪なので、何だかなぁとしかならない。田中監督の過去作「うまれる」を観て、たしかに高い評価がされるのは理解できた。
しかしながら、本作と続けて観ると今後長編の脚本もオリジナルで自ら手掛けるとなるとやや力量に疑問が残る。本作は脚本力という弱点が露呈している気がする。話としてあまりにも強度が弱い。決して短編だからという理由ではない。正直、脚本は他者と協力しながらでもいいんじゃないの?と思ってしまった。
俗悪、露悪的な映像表現をしたい、それを役者に表現させたいという欲求が先立ちすぎているイメージ。
それは「うまれる」を観て、より強くなった。それ一辺倒で来られてもな、という観客がいてもおかしくない。ただそれがリアルだと言われるとそれは違うでしょと。
さらに「これがリアルな戦隊ヒーロームービーだ!」という謳い文句はもっと違うだろとしかならなかった。このキャッチコピーはめちゃくちゃノイズだった。
もちろん面白いと思って製作されているのは理解している。
それにしても、なんか通じ合わないなというもどかしさがあった。期待値が高すぎたのかもしれない。田中監督の次作についてはすごく興味はあるけれど、本作で監督との距離は遠のいた。予告観て面白そうだったら観ます。
そうなると今回と一緒だな。騙されに行くつもりで臨めば、ちょうどいいかも。
子役→戦隊→現在が結び付かない構成
特撮を取扱うこだわりも感じない
本作の決定的に良くなかったポイントだけ触れて、終わりにしたい。
脚本の強度を弱くした原因は、子ども時代から戦隊での凶行シーンまでがあまりつながっていないからだと思う。
58歳になった現在は別として、子役時代のレッドと凶行を働くレッドが同じ人とは思えない。
敵と認定した相手には容赦ない、以外は全く結びつかない。
頭に血が上ると周りが見えなくなる習性や、仲間へのぞんざいな態度、ピンクへのスケベ心などは多少種まきがされていたとしても、不足しすぎかと。
タメの部分があいまいで必要以上にウェットなため、あの凶行シーンは浮いてみえた。悪い意味でかなり突飛に映る。
あとレッドが粗暴で人格破綻者みたいな設定を強調しているが、45年以上続いている東映のスーパー戦隊シリーズでもそういったキャラはいくらでもいた。ハッキリ言って目新しさは全くない。
子ども向けなため、エロの描写がないというだけで、そこをしっかり描きました!目新しいでしょ!と言われても、志が低いなぁとしかならない。
※ちなみに本家のスーパー戦隊シリーズもエロ要素は全然ある。ダイレンジャーのキバレンジャーは子どもながらにホウオウレンジャーにセクハラしまくるし、カーレンジャー・ギンガマン・ゴーオンジャーはセクシー系の女優を起用している。
あんたそんなに特撮好きじゃないし、興味もないでしょ、と思ってしまう。
今も昔も特撮は大人が観ても楽しめるぐらい、よくできている。それを知っていれば、本作を「大人が楽しめる」と自ら発信できるはずがない。
あえて戦隊を選んだのなら、それぐらいは把握してより捻れた設定にしてほしかった。別にこれ戦隊じゃなくてもいい話ではあるので。
そんなところです。
まとめ
過去作の「うまれる」がわかりやすい脚本だっただけに、今回は比較的複雑な構成にした分、短編では若干はみ出してしまうスケールのお話にしてしまったが故のバランスの悪さが出てしまったかなというのが正直な感想です。
あくまで特撮をテーマにするなら、そこへの目くばせは必要だったと思います。それぐらい、厄介な存在なのが特撮ファンならびに関係者だと思うので。
特撮の現場にいる方々にこの映画を勧めるかといわれると、積極的には勧めないです。それぐらい、特撮自体が日本が誇る歴史ある重要なコンテンツだということです。
それ以上はとやかく言うことはないです。
田中監督の次作には期待していますし、長編製作にチャレンジしてほしい気持ちは変わりません。
最後に
本作を観たのが8/4(日)なのですが、前日の8/3に「マミー」を観たので、本作はそれより先出ししています。
短編で語るところが比較的少ないのもありますが、「マミー」が強烈すぎたので、緊急で順番をてれこにしての対応になっています。
この夏必見、あの夏の記憶がある人必見。
衝撃のドキュメンタリー作品ですので、観られる環境にある方は必ず観て、自身と対話をしてください。
もう一度映画館に観に行ってから、記事を公開したいと思っています。
脳がちぎれるぐらい考え抜きます。よろしくお願いします。