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【映画批評】#20「フォールガイ」映画に関わる全ての人に宛てたラブレター

「ブレット・トレイン」「ワイルド・スピード スーパーコンボ」のデビッド・リーチ監督が、ライアン・ゴズリングとタッグを組んで描いた痛快アクション大作「フォールガイ」を徹底批評!!
スタントマン出身のリーチ監督が、映画を支える裏方をはじめとした全ての映画関係者に宛てたラブレターのような映画。前回#19とは打って変わって、全編映画愛に満ち溢れた素晴らしい作品をありがとう~~!!


鑑賞メモ

タイトル
 フォールガイ(127分)

鑑賞日
 8月16日(金)14:10
映画館
 MOVIX堺(堺浜)
鑑賞料金
 実質0円(ムビチケ:エポスポイント利用)
事前準備
 特になし
体調
 すこぶる良し


点数(100点満点)& X短評

98点


あらすじ

大ケガを負い、一線を退いていたスタントマン=コルト。
愛する元カノの初監督作で久々に現場復帰するが、主演が突如失踪してしまう!行方不明のスターの謎を追ううちに、コルトは危険な陰謀に巻き込まれることに…
彼は己のスタントスキルで、この危機を突破できるのか!?

「フォールガイ」公式HPより引用

ネタバレあり感想&考察

映画沼に"落ちた男"
D.リーチにしか作れない映画

今年ダントツで一番楽しかった映画。もう間違いない。
正直、対立側の設定が複雑で脚本がやや散漫な面があることと恋愛要素がピンと来ていない感想を少し見受けられたが、称賛する方々の熱量がハンパないイメージがある。自分もその中の一人だ。

観に行けるなら、こんなの読んでないで今すぐ行ってほしい。
観た人はもう一回行ってほしい。後で配信になってから家で観るより、絶対スクリーンで観た方がいい。そのハデさとバカバカしさと痛快さを全身で浴び、打ちひしがれてほしい。映画というのはそのためにあるのだ。

こういうのが観たくて映画館に行く。みんなそのはずだ。

大体の話はこうだ。
仕事中のスタント事故で1年ほど離脱し、落ちぶれたスタントマンが隠された意図を持ったプロデューサーより再オファーを受けて復活するも、主人公はその意図に翻弄される。しかしながら、持ち前の頑丈な肉体と長年のスタントで培った身体能力を駆使して、身に降りかかる危機を痛快かつ豪快に乗り切り、かつての信頼を取り戻していく。終始、スタントによるアクションを表現していくことが主題の映画ではあるものの、ライアン・ゴズリングとエミリー・ブラントの恋愛もしっかり描きこんでいるため、普通のアクション映画よりは消化すべきものが多く、若干脚本が散漫なのは否めない。たしかに弱点はある。

序盤にトム・ライダーの部屋に侵入する際のスタントガールとの攻防は、アクション自体は十分目を見張るものだが、なぜ戦っているのかはよくわからない。この先、こういったシーンが続きますよといったチュートリアル的な役割以外はあまり感じられなかった。ラスト、トム・ライダーの犯行自白を狙う手法も正直かなり強引だとは思った。(やってること自体はめちゃくちゃ面白い)

ただ、それ以外の話はアクションシーンに持っていくための必要性はあり、多少わかりにくいところもアクションシーンの魅力で黙らせる豪快さがある。この豪快さがこの映画の最も大きな魅力である。登場人物一人一人のキャラクターも高尚さはなく、気の抜けた面々が多いため、締まったアクションとのギャップが効いていて、メリハリをうまくつけている。
スタントが映画製作の過程でどのように行われ、最終的にどのように表現されるのかを一本の映画の中で違和感なく説明できているのが画期的。だからエンドロールは絶対観てほしい。多少大味な部分はあるがアクションに持っていくまでの過程は考え抜かれた脚本であり、自分はそこまで気にならなかった。うまいというより好きにさせる精一杯の努力を感じさせる。

何がそうさせるかは、D.リーチの仕事だからといって差し支えないだろう。
彼自身がスタントマン兼俳優としてキャリアをスタート(ブラッド・ピットのスタントダブルを担当)し、アクションコーディネーター等を経て、「ジョン・ウィック」で初めてメガホンを取り、「アトミック・ブロンド」(大名作)にて実質的監督デビューと、スタントからアクション大作映画の監督にまでなった男が撮ったのが本作だ。
だからか、そこかしこにスタントやアクションへの愛があふれているし、なおかつ映画を作ることそのものへのそれに溢れている。
パンフレットにもあるが「映画を製作する裏方に充てたラブレターのような映画」だと本人が語っているようだ。
本作内で制作される映画「メタルストーム」は実際にあった映画らしく、本作もテレビドラマの「俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ」のリメイクである。映画内の登場人物たちと本作を作っているスタッフの熱量と密接にリンクしている構造で、作っている側の楽しさがそっくりそのままにじみ出ている。

満場一致で最高の男 デヴィッド・リーチ

自分が好きな【文化祭実行委員的高揚感】が見事に表現された一作だと思う。これはなかなかお目にかかれないし、作っている側のそれが本質なのも珍しさに拍車をかけている。文字通り映画沼に"落ちた男" D.リーチにしか作れない映画だ。バカ笑いする映画なのに、映画への情熱と仲間への信頼を感じて泣かされた。まごうことなき傑作だ!

「ブレット・トレイン」未見なので、なるはやで観ます!!
本作ももう一回観ます!!D.リーチ!フォーエバー!!

"愛する女のために体を張る男"
このシンプルなプロットは今こそ光る!

一番好きなライアン・ゴズリングは?と聞かれると、大体は「ドライヴ」か「ラ・ラ・ランド」だと思うんです。自分もやっぱ一番好きな彼は「ドライヴ」ですよ。そらそうよ。
ただ、この先観たいライアンゴ・ズリングは?と聞かれたら、「ナイスガイズ!」と即答するぐらい、ゴキゲンな彼が観たかった。
ラッセル・クロウはその後、煽り運転するヤバいヤツとか、ちょっと抜け感のあるエクソシストの役とか、こっちが観たい(?)顔を見せてくれた。
ここに来てやっと、本作のライアン・ゴズリングは「キタキタキターーー!」(©鷹木信悟)と言いたくなるぐらい、待ってました!なキャラだった。自分が観たかった彼にやっと出会えた感動が何より先立っている。

鷹木信悟は本作に関係ありません

そして物わかりの良い淑女みたいなキャラが多かったエミリー・ブラントもまた、こういうのが観たかった!みたいなキャラに設定されていて最高としか言いようがない。本作の彼女はガチのマジで最高である。彼女じゃなかったらこの映画をそこまで好きになってないってぐらい良い!かわいすぎる!
いかにもちゃんとした映画が似合う二人でしっかりラブコメをやっているのもギャップが効いていて、そこも楽しめる要素になっている。しっかりバカップルだし!笑
分割画面の電話相談シーンはこの二人の関係の深さを的確かつ端的に表現されていて素晴らしい。決して頭空っぽにして観ればいいんだよ的な思考停止の感想で終わらせたくないぐらい、観客に配慮がなされている。

2024ベストカップル決定

アクションシーンがいろんなバリエーションで矢継ぎ早にやってくるので、ロマンス要素を【愛する女のために体を張る男】というシンプルなプロットに集約したことで圧倒的に観やすくなった。
さらに多様性への配慮が映画製作の自由度を下げているのではないかと勘繰りたくなるような状況の中で、手垢のついたようなプロットが逆に新鮮に映る。昨年「バービー」のケン役を演じたライアンが本作でコルトを演じたのも感慨深い。映画は観るタイミングもまた評価の一部なのだと思い知った。

音楽も最高に楽しい
The Darknessのあの曲はいいよなぁ

劇中で使われる曲も最高だったので、ひたすら紹介しましょう。

KISS「I Was Made For Lovin' You」

誰もが知ってるあの曲。作中何回もかかります。
YNGBLUDのカバーはまた違った不思議な魅力がある。

The Darkness「I Believe In A Thing Called Love」

本作で久しぶりに聴いてブチ上がった一曲。現在パワープレイ中!!
何がいいのかわからない変な曲だけど、やけに耳なじみの良い奇跡の一曲!

Taylor Swift「All Too Well」

二人のバカップルさを端的に示す選曲の妙!
これで泣くライアン・ゴズリングという最高のギャグ。

Phil Collins「Against All Odds」

ライアンを待つエミリー・ブラントがカラオケで歌う曲。
シドニー市内での大迫力カースタントアクションとの対比に爆笑!

数こそ劣りますが、80年代アメリカンポップスをガンガン使用した「AIR」を思い出すぐらい良かったですな。あの映画は本当に数が多かったのとほとんど耳なじみのある懐メロだったんで、余計に印象に残ってます。


まとめ

#12「密輸1970」の【最後に】で紹介した「ベイビーわるきゅーれ」シリーズの坂元裕吾監督のXポスト内に「こういう作品を観るために映画館に行っています」と記載がありました。自分の場合、本作がそれに当たります。その最適解と言っていい映画が出たなと思って興奮しています。

作り手が泣かせることを想定していないアクション大作で泣いたのはそれこそ「マッドマックス 怒りのデスロード」以来です。「マッドマックス」は崇高さや高尚さは感じましたが、本作はそういう要素を感じるような作りではありません。不思議な映画体験でした。

今年のベストは「ホールドオーバーズ」「哀れなるものたち」と本作の三つ巴の争いになりそうです。(邦画は「夜明けのすべて」が圧倒的)
上記2作と比べると明らかにキャラの違う作品が横入りしてきた感じで面白いです。もうさすがに上回る作品はないんじゃないかと思っていますが、戦々恐々としています。2024年の映画たちは容赦ありませんから。

冗談抜きで「フォールガイ」は絶対に押さえておくべき一作!
間違いない!!!!!


最後に

いやぁ楽しかった!ほんとそれだけです。
お盆終わってしまいましたが、今年は特に静かな長期休暇となりました。
焼肉食べたり、旧友と飲んだり、実家(近い)に帰ったりと精力的に活動しました。

そろそろ自分も決断のときが近づいているようです。
そのときは書ける内容のみ、報告できたらなと思います。
一つ言い忘れてました。ザック・セイバーJr.さん、G1優勝おめでとう!!!

それではまた!
次の映画はまだ決まっていません!!

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ご拝読、ありがとうございました。


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