【映画批評】#37「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」 痛快娯楽作ド真ん中!
「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督が、2016年の韓国ドラマ「元カレは天才詐欺師 38師機動隊」を原作に、真面目な公務員と天才詐欺師が手を組んで脱税王から10億円を奪い取るべく奮闘する姿を活写したクライムドラマ「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」を徹底批評!
満を持しての上田監督×豪華キャストで贈る痛快娯楽作はお世辞抜きに大成功と言っていいでしょう!待ってました!!
鑑賞メモ
タイトル
アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師(120分)
鑑賞日
11月22日(金)18:10
映画館
なんばパークスシネマ(なんば)
鑑賞料金
1,400円(会員割引)
事前準備
特になし
体調
仕事後、やや疲れあり
点数(100点満点)& X短評
90点
上田監督本人から直接リポストいただきました。
ありがとうございます!
あらすじ
ネタバレあり感想&考察
ご都合主義が気にならない
痛快娯楽作の基本のキ
いやー面白かった!気色ええ!
悪いヤツがしっかりやられるのを観るのは本当にサイコー!
ゴキゲンに映画館を出ることが目的なら今すぐ行け!特に言うことなし!
結構ご都合主義で話が進んでいくのは間違いない。
公務員がそんなん引っかかるかーとか、悪モン言うてもここまであからさまなヤツおるかーとか、そっちにも味方仕込んでたのズッコない?とか、挙げだしたらキリがない。ただ、正当な理由で、不当ながら正当に勧善懲悪を果たしていく痛快さは、フィクションならではのものだ。
やっぱり娯楽はこうでないとと思わせてくれる作品。ご都合主義を気にならなくさせるパワーを作品が持ってればええんじゃ!という気概も感じられた。だからご都合主義なんかこれっぽっちも気にならない。痛快であればあるほどそれを無に帰する。そういう映画だ。ごちゃごちゃ言わんとノレばいいのである。
個人的に本作は2016年新日本プロレス大阪城ホール大会のケニー・オメガvsマイケル・エル○ンのラダーマッチぐらい、面白要素の詰まった興行だった。現地で観た中でもトップクラスに楽しくアガった試合だ。様々な紆余曲折を経て、果たされる勧善懲悪は何にも勝る気持ちよさを持つ。
おいお前映画で例えろよってことだと思うので、今年観た映画と比較してみよう。痛快で言えば「フォールガイ」、現金強奪も含めれば「密輸1970」みたいで、邦画にもそれ系のいい作品が出たなと言った感じ。
岡田将生×緊張感のある駆け引きで言えば「ゴールドボーイ」の要素もある。本作含め、2024の映画たちはハンパない。良作が多すぎる。
決して「犯罪都市」のような型通りの痛快さではない。怒りを蓄積するタメが効いたストーリーテリングに明らかな違いがあるからだ。
上田監督のキャリアのタメも効いた
待たせすぎだこの野郎(感謝)
本作はアバンタイトルが出るまでのタメがめちゃくちゃ効いている。これは本当に観て体感してほしい。タイトル通り、怒りゲージをMAXまで持っていってくれたからこそ、映画の質を担保したと言っていい。
そのタメは上田監督のキャリアにも通ずるものがある。
あの「カメラを止めるな」公開からもう6年も経っているのだ。
その間は自分もあまり追えておらず、100日ワニの監督なんかやらされちゃって気の毒だなぐらいに思っていた。(失礼なこと言ってごめんなさい)
本作までの作品もタイトルを確認したが観てないどころか、公開されていることも知らない状態。だから本作は満を持して感を勝手に感じていた。それに見事に応えてくれた感じがして本当にうれしい。
待たせすぎだこの野郎(笑)
監督のキャリアにも通ずる演劇にフォーカスが当たるのもエモい作りだ。
本気で詐欺をやるなら当然必要な要素だし、原作があるとはいえ、自然とそれを要する構造に落とし込んだのはお見事。演劇だから役者陣の演技合戦だけでも十分な魅力を放っているし、何よりこの映画は座組が良い。良いメンツが集まった。
小澤征悦が岡田将生を殴るシーンで神野美鈴さんが止めるんだけど、これ本当の母親だからリアルに止めてるとか想像できてもう一回表情を確認したくなっている。結構観客も騙されながら観ているので、あとで確認したいところが多々起きる仕組みだ。これは「カメ止め」と同じような現象だろう。
脚本が考え抜かれている証拠だ。アホの三谷は上田監督のワークショップ混ぜてもらって勉強した方がいいんじゃないか?
うん、差があるよ(長州)
失礼。話を戻す。
当然ながら内野聖陽の演技が素晴らしかった。
なんでこんなイケオジがフルポン村上みたいに映るねん!と思えてしまうほど、何とも気の抜けた市井の人になりきっていた。
動きまでなんかカクカクしてて、そこもポンさん感溢れてて本当に笑っちゃったな。でも本気になったときの秘めた闘志と表情はグッとくる。
この前に映画で彼を観たのは「初恋」の反社の親分役だった(超カッコいい)ので、ものすごい落差だった。そこも余分に楽しめた気がする。
岡田将生はみんなの期待する岡田将生だった。
昨年で言うと「1秒先の彼」、今年は本作と「ゴールドボーイ」「ラストマイル」で当たり映画かつ当たり役を引きまくっている。
結婚もしたし、今一番勢いあるイケメンだね。「1秒先の彼」と「ゴールドボーイ」もぜひ観てほしい。最高です!
そして何より小澤征悦だろう。
梅宮辰夫もドン引きの稀代のワルっぷり炸裂だった。本作のMVP!いくらなんでも悪人ヅラとはいえ、ここまでやってくれる懐の深さに感動した。本当にヒールが似合う。キング・オブ・ダークネスEVILに匹敵するヒールが小澤征悦だったとは!また一つ勉強になった。
次はちゃんとした正義側のキャラで観てみたいな。面構えがいいからどんな役やってもいいでしょ!
とにもかくにも、今かかっている映画の中では最優先で見るべき映画なのは間違いないです!大金現ナマ強奪のダイナミックさも本作の大きな魅力!
ぜひ観てください!
まとめ
良くできているし、楽しくて楽しくてもう語る必要がないというか…笑
プロレスの話ばっかりしてしまうのはそれだけエンタメとしての核といいますか、コアな要素が詰まった作品だからだと思います。文句なしです。
なかなか前向きになることができない暗いニュースばかりの日本でもこんなに胸を打つアツい正統派の映画が観られるのはやはり幸せなことだと思い知りました。ちょっと泣きましたしね。
その他の役者さんもみな素晴らしかったです。
特に皆川猿時さんの存在が大きかった気がする。節度を持ってできることを最大限していく姿勢は人に必要な、それこそ核の部分だと思うのです。
本当に良い映画でした。ありがとうございました。
最後に
現・女子プロレスベストヒールは上谷沙弥です。
※先日の新日×スターダムの合同興行の写真、筆者撮影