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【映画批評】#52「アンダーニンジャ」 内輪ノリより、話が掴みづらいのが一番の問題

「アイアムアヒーロー」などで知られる漫画家・花沢健吾が、現代社会に潜む忍者たちの姿を描いた人気コミックを実写映画化した「アンダーニンジャ」を徹底批評!
既に低評価の烙印が押されている雰囲気があるが、予想どおりの駄作であった。その手腕に疑問の声が聞かれる福田雄一監督について割とマジメに考えたい。


鑑賞メモ

タイトル
 アンダーニンジャ(123分)

鑑賞日
 1月24日(金)20:25
映画館
 あべのアポロシネマ(天王寺)
鑑賞料金
 1,300円(平日会員価格)
事前準備
 特になし、原作未読
体調
 すこぶる良し


点数(100点満点)& X短評

20点


あらすじ

日本の歴史を陰で常に動かしてきた“忍者”。
栄華を誇った彼らだったが、
戦後GHQによって組織を解体され消滅した。
しかし、現代でも忍者は秘密裏に存在し、
日常に潜み、世界中で暗躍している。
その数は20万人とも言われる。

ただ、末端の忍者は仕事にありつけないことも多く、
「NINニン 」所属の下忍・雲隠九郎もその一人だった。
ボロアパートで暇を持て余す暮らしをしていた九郎は、
ある日、重大な“忍務にんむ”を言い渡される。
それは戦後70年以上に渡り地下に潜り続けている、
謎の組織を調べること。

組織の名は――「アンダーニンジャ」。
通称「UN」。

「UN」が潜んでいるという情報を得て、
講談高校に学生として潜入する九郎。
クラスメイトの野口彩花は高校生らしからぬ言動をする
九郎を不審に思うも、何故か少し気になってしまう。

そんな最中、「UN」によって、「NIN」の
“精鋭”忍者たちが次々に襲われていく。
「UN」の目的は一体何なのか?
そしてついに、講談高校での襲撃が始まる…!

想像を超える戦いに巻き込まれていく、
現代忍者・九郎と女子高生・野口の運命は!?

「アンダーニンジャ」公式HPより引用

ネタバレあり感想&考察

福田に1ナノも期待していない私が
本作を観に行ったワケ

まあ駄作ですよね。

ある意味想定内というか、ブチギレるほどでもないというか…。

福田監督特有の内輪ノリも、もはや執着とか手段の目的化に感じてしまって本人を気の毒に感じるフェーズに入った。なんか本人が「自分といえばこれだ」的に勝手な使命感を感じているように映る。需要あるのかな?ないでしょ。福田雄一監督作という触れ込みで動員ができているのだろうと思っていたが、レイトとはいえ初日にしては少ない客数だった。
「アンダーニンジャ」がどの程度人気のマンガかは知らないが、勝算があってのことだろうと思っていたのでやや肩透かしを食らった。

なぜ本作に興味を持ったかというと、原作の花沢健吾が福田雄一監督で映画を作らせてどういう結果になるのか、がものすごく興味深かったからである。花沢健吾の作品は「アイアムアヒーロー」「ボーイズ・オン・ザ・ラン」の2作はマンガも映画も視聴済だ。

前者のマンガは途中で脱落したが、映画は邦画ではハイレベルのデキだったし、後者はマンガが人生トップレベルで好きで、映画もまずまずだった。ドラマ版も作られ、現SUPER EIGHTの丸山くんが主演していて顔良すぎだろ!と引っ掛かりつつもかなり良い作品だった。
特に後者は情けない男が泣けるようにできている。

花沢健吾は「アイアムアヒーロー」の1巻で完全に某三谷幸喜の風貌を模したイヤなヤツキャラを1発目に死なせている。(そこからの引き込み方がスゴイ作品だから、今思えば結構重要なキャラだったなとは思う)
だから花沢健吾はこういう某三谷のような業界で評価されているだけの浅薄な人を毛嫌いしているのだろうと思っていた。
ところがぎっちょん!業界で評価されているだけの浅薄な人の最右翼と目される福田雄一監督が花沢作品を撮るということで必要以上に興味が湧いた。

かなり悪趣味全開な動機であることは認める。

ただ新日ばっかり観てた自分がちょっとした興味で女子の興行を観てみたら、スターダムにドハマりしたということもあったので、好き嫌いせずにフラットに観てみようと。とはいえテンション的には普段、王道の新日全日を観ている男がたまにはFMWで大仁田のデスマッチでも観てみるか、といった味変するようなノリではあった。

結果は、逆の意味で伝説になったファイヤータッグデスマッチといった感じだ。

何をしてるかわからない、そもそもよく見えない、ほぼ炎上(酷評)間違いなしだろう、そんな鑑賞後感だった。選手(役者)達が頑張れば頑張るほど気の毒っていうか、それが際立つ。浜辺美波は特に。役者がかわいそうだと思わせたら、その時点でアウトである。ただ本人たちは楽しそうではあり、福田作品に出たいという役者さんが多いのは頷ける。ビシビシやる監督ばかりでは身が持たないだろうし、福田組は文化祭の延長のような楽しい空気感が現場にはあるのだろう。そこは否定しない。

本筋と関係ない内輪ノリより
本筋自体が脆すぎるのが問題

内輪ノリ自体は概ねサブかった。

この人マジで話に関係なかったよね?

山崎賢人とムロツヨシのおふざけ合戦は正直笑ってしまったが、あれはしつこすぎる天丼によって観客が根比べに巻き込まれただけとも言える。他は本当につまらなかったし、何よりしつこいのが気に入らなかった。全く本筋と関係ないし、なかったら単純に時間が短縮できるからなおさらうっとうしい。

そもそもの過剰なコント的東京弁ツッコみとかも、いい加減どないかならんのかと思ってしまう。(シソンヌ長谷川キャスティングも納得)
単純にそれがキツい。こっちが大阪人だからとかではなく、こういうやり取り自体が映画のような長尺の映像では求められていない。これがウケるはずだ!という勝算を見込んでいる時点でキツいのだ。前時代的すぎるし、納得のフジテレビジョン製作である。そういったものが幾重にも重なれば、もう誰からも求められはしない。

ブラのくだりもねぇ…

こんな気持ちにさせる一番の問題はつまるところ、話の本筋がまるでわからないことに集約される。ここまで来てやっと本質の話に入るがこの話、ずっと何やってるかがわからなかった。忍者界が何で揉めているかそのものがよくわからない。本流忍者軍と亜流忍者軍の抗争なんだけど、わかりやすいコントラストがないから、ぱっと見でまずどっちがどっちかわからない。

これは観るうえで致命的だった。
なんか平田満が板挟みの立ち位置であるのはわかるが、だから何なんだ程度の存在でしかなかった。話がわからないんだから、アクションやギャグを頑張られても徒労にしか映らない。脱線してもレールがガタガタだからよくわからない方角に向かったまま、見知らぬ土地で降ろされるような感覚に陥る。

なんとなくで忍者間の抗争が進む
一般の高校生まで巻き込んだ理由もイマイチわからない

だから作品の出来不出来にも触れづらい。これ原作読んでない人はわからなかったとなるのがほとんどじゃないだろうか。いつの間にか宇宙も巻き込んでるし。それぐらい何が起きていて、何を目的にして戦っているのかがわからない。ガジェットとかアクション演出の工夫は痛いほどわかるが、それがどう活きているのかもわからない。

そもそも手裏剣を使っている以外、忍者ならではの演出や忍者である理由がないため、忍者という設定自体にも疑問が残る。(原作はしっかり理由があるのは推察できるが)
こんなんやったら、何週もしてる忍者戦隊カクレンジャー観た方がよっぽどええわ!としか思わなかった。実際、100%カクレンジャーの方が絶対面白いし、人生にも役立つ。

なので、ひたすら困惑した。
話運びがヘタとか、もっとメリハリつけろとか、わかりやすい課題が本作にはない。大枠の話ですら掴めてないから改善策も思いつかない。そういう意味で致命的なのだ。演出のオリジナリティを追求するのは好きにしていただいていいが、ベースとなるお話づくりの面で圧倒的な力不足を感じて、ちょっとかける言葉がないといった感じ。
アホの三谷のようにそもそもの姿勢に問題があるわけではなく、何かしら面白くしようというサービス精神はすごく感じるが故の厳しさを感じた。どうあがいてもお話自体を面白く作る能力が不足しているように感じてならない。だから原作者に営業をかけているのだろう。彼の戦略は今回で掴めた。これはほぼ確実だと思う。

しかし、原作があるといっても映画用に整理して脚本と世界観を作るのは、今回ヘタだと露呈した気がする。オリジナル脚本にあまり手を出さないのは、本人が本を書く力が足りていない、と自覚しているからだと思う。このこと自体は良いことだ。これすら自覚していない裸の王様と化した某三谷とは一線を画す。だからその点はできることできないことの整理が本人なりにはできているのかもしれない。ただやはり役者に道化を強いることを作家性とする向きは筆者は受け入れられない。話を作る力をつけることが喫緊の課題だ。

数をこなしたい気持ちの方が強いのだろうが、ここの面でもそろそろ世間の風当たりも本格的に強くなるころではなかろうか。明らかに本作の評判は総じて低いし、そもそもあまり期待すらされてないような空気も感じる。それまでの作品も同じくだ。

いつまでも福田に仕事が舞い込むとは思えない。
そんなフェーズに突入しているが56歳、本人にやる気があれば多少は巻き返せるのではないかと少しばかり期待を寄せたい。マジメにやれ!ではなく、一回マジメにやってみてよ、という気持ちになった。

山本千尋、坂口涼太郎
ニューフェイス登場

手厳しい批評になったが、最後は良かったところを挙げたい。

この2名は強烈に印象に残った。
それだけでも本作が作られた意味があったとは言える。

ラスボス山田役の山本千尋さんは初めて観たのだが、かなり良かった。
先日の「室町無頼」の武田梨奈、吉本実憂、そして今回の山本千尋とアクションのデキる日本人女優が一気に出てきた感じがしてうれしい。
もちろん、ベビわるの二人もいる。この層の厚さは活かしてほしい。彼女たちだけで一本映画作ってもいいんじゃないのと思う。

山本千尋さん

そして本作のコメディリリーフ(全体感がコメディなのでこの表現が合っているのかはわからないが)の坂口涼太郎さんも良かった。こういう一発で覚えられる顔って役者としては大きすぎる武器だと思うので、今後みかけたらうれしくなる役者さんリストに入りました。

坂口涼太郎さん

まとめ

ぱっと見のルックとアクションそのものが一定以上良いだけに、残念さが際立つ結果になりました。ただ低すぎるハードルすら越えられなかったものの、何となく真剣さの方向性が観客とすり合わせできれば、わずかながらの可能性はあるのでは?となぜか感じてしまいました。

あくまで対三谷幸喜比ですけどね。
与えられた予算を適切に使えるか、しっかり本を書ける人を相棒にするか、この2つが揃えば、一定以上の映画は撮れるやろお前と。

だからこそ、「できないことはできない」と認め、人に任せる勇気をもってほしいです。福田雄一監督、脚本別の人の映画が作られれば、また観たいと思います。以上!


最後に

フジテレビ、まだやってるよ!笑

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