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悪質なクレーム②

スマホを落として画面が割れてしまったので、新しいiPhoneに機種変更することにしました。

久々に携帯ショップへ行くと、ホストっぽい店員さんが接客してくれました。
スーツを着ているものの、サラリーマンっぽくはなく、髪色もやや茶髪、かなり毛先も遊ばせています。
歌舞伎町とまでは行かないが、相模原あたりのホストの様な風貌。
周りを見渡してみても、8人くらいの店員さんが皆同じような風貌。
ワイルドなヒゲ、モード系のスリムなスーツ、毛先を遊ばすの3点セット。
話し方も、所謂普通のビジネストークスタイルではなく、ちょっと崩した敬語。

携帯ショップの店員さんはこのようなスタイルが基本でしたっけ。忘れていました。
おじさんの偏った先入観ももちろんあるので、申し訳ないのですが少し嫌だなあという気持ちで接客を受けていました。

iPhone8からの機種変更。
一つだけ条件があったので先に伝えます。「色も何でもいいし、機種の希望もないのですが、この前落として割れてしまったので、しっかりした頑丈ケースを一緒に購入して、ここで装着していきたい」という内容。

「わかりました!たくさんケースも種類が置いてあるので全然大丈夫ですよ!後で選びましょうね。iPhoneの最新は13ですけど、12もあります。どちらにされます?」と店員さん。
13と12の差が何かを聞くと、カメラの性能とのことなので、写真なんて清掃作業の報告書写真しか撮らないので、お値段も少し安い12にすることにしました。

「じゃあ12の黒で準備しますねー」とのことで、その間にタブレットで説明動画を見させられたり、色んな書類にサインをしたり住所を書いたり。様々なオプションを勧められて、一個一個説明受けて精査したり。
店員さんを待っているだけの時間も含めると1時間半もかかり、疲れてしまいました。

「ではこちらにデータ入れ替えまして、新しいiPhoneが使えるようになりましたのでー」と店員さん。

全ての手順が終わって帰らされそうな感じだったので、あれ?と思い「すみません、ケースをここで購入して装着するのは…」と言うと、

忘れていたのでしょう。店員さんの顔色が変わりました。
「すみません、ではケースはこちらにたくさんあるので一緒に選びましょう」と陳列棚にたくさん並んでいる商品を見て回るのですが、全て13に対応の商品ばかり。12の商品がありません。

12関連の商品が一つも売ってないのです。

「すみません、ちょっとお待ちくださいね。倉庫の方に見に行ってきますんで」と出かけて行ってから、15分〜20分帰ってきません。

やっと帰ってきました。
「良かった!実は12のケースが在庫切れでして、1つだけ倉庫の奥に残ってたんですよ。ラッキーでした」

何がラッキーなんだ。
こっちはケースを選ぶ余地もないじゃないか。頑丈なケースが欲しいのに、なかなかペラペラのケースを持って来やがって。
とは思いましたが、これ以上時間かかるのも嫌だし、このケースでまあいいかと思い現金でその場で購入。
装着のため店員さんが箱から出すと、何とケースがすでに真っ二つに割れていました。

「不良品ですね。さすがにこれをお売りするのは良くないですよね?」
と、もしかしたら私がOKという可能性が奇跡的にあるかも?という聞き方。
ダメに決まっとるだろ。

「実は他のショップに在庫がないかと思い問い合わせもしたんですよ。どこのショップにも12のケースがもう置いてありません」

最新のタイプが出ると古い物はどんどん処分していくらしい。

「雑貨屋とか通販とかならまだ売ってると思うんですけどね」と別で購入してほしいと、やんわりと私の機種変更を終わりにしようとする店員さん。

いやいやいや。終わらない。

「ケースなかったら困るんで、やっぱり13にします」と私。
また一からやり直し。時間は勿体ないし、だいぶしんどいけど仕方ない。こんなことでは腹は立てません。文句も言いません。

しかし顔色が青ざめる店員さん。

「値段が上がってもいいんで13にしてください。ガッチリしたケースもあったのであのケースにします」と私が言うと、

「実は…もう機種変更の契約は終わっているので、13にするのは無理なんですよ、お客様はもう12になっているんです」

え?僕はもう13には出来ないのだとここで初めて知ることになりました。僕はすでに12。8のあの頃にはもう戻れないんだと。

「話が違うじゃないですか。機種はどれでもいいから良いケースだけはつけたいというのが、私の最大の希望だったじゃないですか?」

さて悪質なクレーマーの登場です。

「もう無理なんです」

「8に戻してください。8に戻せる人を呼んでください」

「8に戻せる人は当店にはいないんです」

と不毛なやり取りが続きます。

「どうでしょう?12のケースはドンキホーテなどに行けば多分ですが、あると思うんです。そちらに行ってもらえませんか?」

そんな不確実な情報では行けない。大体ここを出た時点で私の負け。彼に逃げられてしまう。逃げられたが最後、後日になったら言った言わないの水かけ論になってしまうのです。

実は10年ほど前にも携帯ショップで揉めたことがあります。
クレジットカードの新規申し込みを勧められ、このカードは使わなくていいし捨ててもらってもいいから登録だけしてくださいというのです。登録だけならと思い実行すると、その後携帯料金の引き落としがそちらのクレジットカードに移行していました。でもこのカードでは口座引き落としの登録をしていなかったため、携帯料金の毎月の支払いが滞っていることになっており、危うく携帯が停められる直前で気付きました。延滞金を支払いましたし、また引き落とし口座の変更も面倒で、大変でした。
携帯ショップにクレームを入れますが、その時の店員さんはすでに退職しており、言った言わないの証拠がありません。携帯ショップ側は言ったことを決して認めず、最終的には偉い人が出てきて「裁判所で会いましょう」と言われた悔しい思い出があります。

だから近所のドンキホーテに問い合わせして確認を取ってもらいました。売ってあるならそれでいいです。そちらに行って終わりにします。

「すみません、ドンキホーテにはありませんでした」と店員さんが帰ってきました。
危なかった。また逃げられるところだった。

「そうだ!あそこのロフトにあったような気がするんですよね」と店員さん。

普段からプロはスマホグッズの情報収集をしているんですね。見たことがあるという、多分あるよりは随分前に進んだ情報が出てきました。

「あそこのロフトに行ってみるのはありだと思うんですよね」と店員さん。

「じゃあ一緒にロフトまで行きませんか?」と僕も一歩進めてみることにしました。

仕事中の店員さんを店から連れ出すことに成功しました。
ここから出ることにはなりますが、まだ人質を取っている状態。
逃げられることは防げるでしょう。

私たちはロフトまで行きました。
わずかばかり12のスマホケースも置いてありますが、かわいいキャラ物のファンシーケースばかり。

「ありました!良かった!どれにしますか?」と店員さんは言いますが、44歳のおじさんにピンクのマイメロディのスマホを持たす気か。
そりゃないぜ店員さん。

しかし店員さんが、一番下の段に黒無地のケースが1つだけあるのを見つけてくれました。

「やったー!やりましたね!」

客と店員の関係を超えて、私たちは一つになれた気がしました。
もうホストのようなその風貌も喋り方も気にならなくなり、ホストとおじさんは昔からの旧友のようでした。
私のクレーム心もスッキリとなくなり、ありがとうしてお別れをしたという結末です。

この話も奥さんにしたら引いていました。
私はねちっこい男です。

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