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絵本で戦争と平和を語る

3月10日は東京の空襲で最も被害が大きかった東京大空襲の日だ。

この日の前後で、勤務している学校の6年生に戦争に関する絵本を読み聞かせようと、6年担任と話していた。

6年担任の1人に、7月から相談させてもらっていた。

はじめは原爆投下の日となる8月6日(広島)と8月9日(長崎)を前にして、ということを考えてはいたが、6年担任からは歴史の授業の中で戦争を扱った後の方がより入りやすいのではないかと考えていただき、学年末にやることとなった。せっかくやるので、東京大空襲の日の辺りでどうかと話して、快諾いただいた。

そして、日程調整をして3月11日と12日に、6年生3クラスを読み聞かせに回った。

選んだ絵本は、今年1月12日にご逝去された半藤一利さんの「焼けあとのちかい」である。半藤さんが東京大空襲を体験した一部が、分かりやすく描かれていることや、読み方次第で語り部のように子どもに伝わるのではないかと思いこの絵本を選んだ。

11日は6年1組の朝の時間、6年3組の1時間目に、12日は6年2組の朝の時間にそれぞれお邪魔した。

とにかく子どもたちが真剣に聞いてくれていた。

読み聞かせの途中、私なりに“ここは子どもたちにゆっくり語りかけるように伝えたい”と思うところは、少し間を空け、できるだけ子どもたち一人一人と目が合うように、子ども側からすれば、自分だけに語りかけられているかのように感じてもらうため、じっくりと子どもたちと目を合わせながら、その言葉を読み聞かせた。子どもたちの目は、とても真剣だった。

でも、集中が切れている子も中には1人や2人いた。私はそれでも全然気にせず、それはそれでいいと思った。そういった子は波があって、ものすごい聞き入っている場面もあれば、どうでもいいような聞き方になる場面だってあった。

ひとつの言葉や絵本からの何らかのメッセージが届いていればそれでよかった。

それにしても、全体的に聞き入り方はこちらが圧倒されるほど、全身で絵本に入り込んでいるようすを感じた。それほど、半藤さんの書きっぷりと、絵を描いた塚本やすしさんのタッチが見事なのだと感じた。

初日の2クラスは、東日本大震災10年目ということもあったため、絵本を読み終えた後、戦争と震災について3分ほど話して終わった。

・戦争は何も解決しない残酷な手段であること

・絵本の中にもあったように、戦争は人間が人間でなくなってしまうことに気づけなくなるというとてつもない恐ろしさがあること

・人は戦争を起こしたり、人を殺してしまったりする残酷な心が起きてしまうということ

・震災は天災だったが、戦争とは形は違えど、人災も起こったこと

・その人災とは、日本のエネルギー需給として良かれと思ってつくった福島第1原発事故であること

・戦争、そして原発事故で今も悔しい思い、苦しい思いをしている人、自ら命を落とす人など苦悩の中にいる人が大勢いること

・人は、野蛮な欲望や未来を見据えない考えと決断で、多くの人を傷つけ、命を奪うことができてしまうこと

・今回は戦争をテーマにした。体験した語り手が次々とこの世を去っている。私個人は、戦争を伝えることが大切だと思うと伝えた

そんなようなことを話した。最後に、

「みんなにとって、よりよい社会、みんなが本当に幸せといえる社会ってどのような社会でしょうね。これから中学生となり、大人へと成長していくみんなと私たち大人が、しっかりと一緒に考え続けなければいけないことだと思っています。今日はどうもありがとうございました。これで終わります」というように、読み聞かせの時間を終えた。

もう卒業してしまう6年生と、こうして戦争のことを話せたことは、とても有意義な時間だった。こうして時間を割いてくれた担任の先生に感謝の思いしかない。

しかも、私の読み聞かせに対する子どもたちからの感想を集めてくださり、プレゼントしてくれた。そんなことまでしてくれるなんて、感謝し切れぬ思いだ。

子どもたちの感想はどれもありがたく、胸にじいんときた。

「読み聞かせで、その時の人の思いや生活まで細かく知れた。」

「戦争はいけないと何となく分かってたけど、はっきりと恐ろしいものだと知れた。」

「戦争のことを語っていける人になっていきたい。」

「今生きていることの素晴らしさを実感していきたい。」

「自然災害という天災も人災になり得るのだと分かった。」

「体験した人は、思い出したくない体験を、私たちのために語ってくれた。次は、私たちが語り継いでいかないといけないんだと思った。」

「人間が起こした過ちで人間を犠牲にしたという事実を改めて知り、胸が痛んだ。」

「戦争は、人の心を大きく変えてしまっていることが、すごく怖いと思った。」

「読み聞かせを聞いていて、目の前で本当に起こっているかのような感じがした。少しでも、戦争のことを伝えられる自分になりたい。」

などなど。たくさんの有り難く、勿体ない感想をいただいた。担任からも手紙で感想をいただいた。有り難すぎる日だった。

これからも、戦争を子どもと語り合える教師であり続けたい。

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