30 day book challenge 第22日

第22日、「LGBTQであるラブストーリー」

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これも最初はまったく思い浮かびませんでした。かろうじて浮かんだのが「蜘蛛女のキス」(マニュエル・プイグ)。でも映画を見ただけで本を読んでないし(映画いつ見たんだろう? だいたい本当に見たんだろうか? 予告編だけでは?)。そもそもこれ、ゲイの登場人物が出てくるだけでラブストーリーでも何でもないし……

としばらく放置していたら、ありました。あったじゃないですか、愛読書が!

この、本へのリンク。なるべく密林じゃなくて大元の出版社を、という方針で毎回探しているんですが、出版社ではとうに絶版になってたり、書影もなかったりでがっかりすることが多いです。今の出版事情を表しているのでしょうか。ama*onだとあるんですよ書影が。ほれ。

版元がんばれ。出版されなきゃ、取り次ぎだって成り立たないのだから。
でもそれには私たちが本を読まなきゃならないのか。ううむ。

さて、森茉莉は森鷗外の長女。晩年は週刊新潮に「ドッキリチャンネル」というコラムを連載し、歯に衣を着せぬドラマ評、人物評などで楽しませてもらいましたが、これは初期の小説集。4つの小説が収録されています。

表題作の「恋人たちの森」は、美貌の中年仏文学者と小悪魔的な美青年が恋をして蜜月を過ごしやがて悲劇的な破局を迎える物語ですが、なんというかもう退廃と耽美と贅の極致。学者の名は義堂(ギドウ)で美青年は巴羅(パウロ)、パンは麵麭で、チーズはどんな漢字だったっけ(手元にあったはずの本がなくって大慌て)。

漢字表記だけでなくて、文体から描かれる場面からすべてが絢爛。あるところは咲き誇る薔薇のようであり、あるところは枯れて崩れてなお香る薔薇の残骸のようでもあります。これがめちゃくちゃ好きでした。高校生の頃です。素養はあったのですね。「薔薇族」なんか書店でこっそり立ち読みする女子高生でしたので。しかし大学に入って歳を取りこの厨二病的なお耽美志向はいつのまにか影をひそめてしまったのでした。

でも今でも好きです。茉莉さん。「贅沢貧乏」なんて他の誰にも書けないエッセイだと思います。

「恋人たちの森」はこの本の中で二番目の物語。三番目が「枯葉の寝床」で、このふたつの小説はほぼ同じ構図、同じような人物配置で物語の構成としては同じといっていいでしょう。でも読み比べると、読者によってどちらが好き、ってのがあるんですよね。わたしは「恋人たちの森」が好きでしたが、「枯葉の寝床」の方がややお耽美度が高いような気もします。

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