未経験から無農薬農家に。元ちゃんファーム 小林 元さん
いやー、ごめんなさい!はじめに謝ります。
実は、お会いするまでは「元(げん)ちゃんは苦手なタイプの方かな…」と思っていました。
なにせ、いただいていた名刺のインパクトが強烈でした…(見てください!)
さらに、無農薬で野菜を作るなんて大変なこと、きっとこだわりが強い人がすることだろうから、かなり個性的な人だよね、会話が成立しなかったらどうしよう、と心配しながら取材に出かけました。(ほんと失礼…)
でも、安心してください。
たくさんの経験から考えて農業を始めた元ちゃんの野菜作りはとっても真面目。農薬や化学肥料を使わず作られており、たくさんのファンが付いています。
また、話を聞いていて、誰に対しても壁を作らず、困っている人がいたら自然と助けてしまう人なんだということも分かり、すっかり苦手意識は薄らぎ、それどころかこんなに際どいツッコミまでさせてもらっています(笑)
元ちゃんが化学肥料を使わず無農薬野菜を作ることになった経緯を聞きましたので、ご紹介させてください。
始まりは日本一周旅
以前、ピースボートという3カ月半で地球を一周する船に乗っていました。船を降りてから3年間はそこのスタッフとして働き、名古屋のセンター長もしました。ピースボートは「百聞は一見に如かず」を大切にしていて、自分の目で世界を見ることを目的に始まったNGOです。自分がピースボートで働いている間は、世界を飛び回る同僚から、世界各地の現状を知る機会はあるものの、自分の目で見られていないことが気になっていました。また、意外と日本の中で起きていることも知らないことが多いと思い知らされる日々でした。
もっと日本のことを知りたいという思いが強くなり、では日本を一周しよう!と思い立ち、ピースボートで出会った奥さんのよーちゃん(当時は彼女)と一緒に日本一周の旅に出ることにしました。
住み込みで農家の手伝い
日本一周をすると決めて半年間、仕事を掛け持ちして100万円を貯めました。旅に出ると決めてからは歴史の本をひたすら読んでいました。特に幕末はとてもエキサイティングでハマりました。
(だから名刺が坂本龍馬だったのか…!納得。)
秋田にいたとき、そこで知り合ったおばあさんのところで住み込みで農業を手伝うことになりました。
きっかけは、道の駅の少し変わった形のシャッターに傘が挟まって困っている人を見かけたことでした。僕の行動を見ていた別のおばあさんから「あんた、ウチに住み込みで働きなさいよ。」と声をかけられました。(実際には関西弁ではなく秋田の訛りで。)
ちょうどよーちゃんは一時帰宅していなかったので、二つ返事でやってみることに。
その農家さんでの畑仕事はすごくハードでしたが楽しかったです。毎晩たくさん飲まされたので太りましたし、ふらふらになりながら農作業をした日もありました。(笑)
最初は2週間のつもりでしたが、結局その農家さんには3週間ほどお世話になりました。
農業を仕事に!
農家さんの手伝い期間が終わり旅を再開。旅をしながら、次はどんな仕事をしようかとずっと考えていました。
そして大晦日の日に、約9カ月の日本一周の旅から戻りました。
自分が仕事に求めることや旅で出会った人の話、農家の手伝いをした経験などがパズルのピースが集まるような感覚になり、農業を次の仕事にしよう!とひらめいたんです。
農業を仕事にできたら、自分が仕事をする上で大切にしたい5つも全部叶えられると思いました。
その5つとは、
①自分で食べる物を自分で作りたい
②お金を稼ぎ、使う生活から距離を置きたい
③大好きな家族と一緒にいられる
④朝起きて夜寝る健康的な生活
⑤少しでも地球に還元できる仕事
です。
レタスとキャベツと白菜の違いもわからない
農業をやろうと決めたら、どうせやるなら有機で無農薬がいいと思い、有機農家を探して研修を始めました。
はじめた頃は、レタス、キャベツ、白菜の違いもわかってませんでした。
さらに言うと、親が農家だったわけでもないし、農家の友達もいない。お金も、道具も、売り先もない、「ない」だけは揃ってましたね!笑
毎日が初めてのことだらけで必死でした。3年目まではお金に余裕がなかったし、5年目までは絶対にやり直したくないと思ってます。今もまだ修行中だと思ってますが、その当時は右も左も分からず、ひたすら必死に農業をしていました。
楽しいこともあれば、うまくいかないこともたくさん経験し、その度に先輩農家に聞いたりしながら、よーちゃんと一緒に乗り越えてきました。
安心できるものを子どもに食べさせたい
今年で農業を始めて13年になるんですが、これまで「さぼった日」は一日もなく、ずっと必死に良い作物を作るために走り続けてきました。そうやって少しずつ信頼を得てこれて、今があるんだと思います。
うちのお客さんは、最近は特に小さいお子さんをお持ちのお母さんが多いです。安心できるものを子どもに食べさせたいと思っている方が多く「無農薬の野菜を」と元ちゃんファームを選んでくれているようです。
また、オルターや坂ノ途中といった、農薬や化学肥料を使わないコンセプトのサービスでも元ちゃんファームの野菜を扱ってもらっています。
農作物以外にお菓子も作っています。
長女が生まれたときに、安心して食べさせられるお菓子をと思い、福祉作業所の協力を得て「ぽんぽん菓子」を作ってもらいました。子どもが増えるとお菓子の種類も増える仕組みです。笑
3つの宣言
元ちゃんファームを始めた頃から以下の3つを大切に守り続けています。
1.遺伝子組み換え作物は植えません
2.農薬・家畜肥料・化学肥料は使いません
3.F1種(一代交配種)はまきません
日本ではまだ小さな農家も守られていると思うんですが、今後もし海外の巨大農業企業が日本に入ってくると、確実に弱小農家はやられてしまうと思っています。
そうなる未来も頭の片隅に入れつつ、今、農家として自分にできることは何だろうと考えると、主張することならできると思い、3つの宣言を主張することにしました。
元ちゃんファームは少量多品目で、年間100種類以上、基本的に自分が食べたい野菜を作っています。麦やお茶も作っていますし、最近はお米も始めました。
自分の作った物がどれだけ美味しいか分からないですが、3つの宣言は全ての作物に対して絶対に守っています。
そういった「安心」を感じることで、美味しく食べていただけるんじゃないかなと思っています。
あとがき
最初はとっつきにくいと思い込んでいた元ちゃんでしたが、インタビューが終わる頃にはなんだか「昔からの友達」みたいな安心感がありました。
日本一周旅の途中で傘を取ってあげた話が自然に出てきた時も、元ちゃんは、息を吸って吐くように目の前に困っている人がいたら手を差し伸べてしまう人なんだと感じました。
今の畑も、一人農家にしてはとっても広いのですが、それも広げようと思って広げたのではないんだとか。畑の草刈りに困っているおばあさんを見かねて畑の管理を兼ねて借り上げたりと、聞いていると意外とお人好し。(意外とは余計?)
そんな元ちゃんだから、良いご縁がどんどん繋がって、未経験からここまで信頼される農家になられたのかな、と想像しています。
そんな元ちゃんファームの安心・安全な有機無農薬野菜は元ちゃんファームHPから購入の問い合わせができます。