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これぞ令和のサブカルチャー!『宇宙人のためのせんりゅう入門』

こんにちは、スタッフMです。2024年になりましたが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
本日は12月の新刊で個人的に特におもしろかった本をご紹介いたします!

『宇宙人のためのせんりゅう入門』
著:暮田真名
出版社:左右社

昨今のブーム(?)に乗った……というわけでもないのですが、私は短歌をときどきやっています。最近『起きられない朝のための短歌入門』(著:我妻俊樹・平岡直子/出版社:書肆侃侃房)というおもしろい入門書(あまり初心者向けではないかも)も読みました。
そんな中発見したこちらの本。同じ短詩ジャンルでも短歌ではなく、「川柳」の入門書です。
著者の暮田真名さんは川柳人。句集『ふりょの星』を左右社から刊行していらっしゃいます。
川柳といえば、季語のない俳句・575……というような乏しい発想と知識しかない私でしたが、ポップなキャッチコピーとかわいい宇宙人のイラストに惹かれて手に取りました。

▽▼暮田真名さんの句集▽▼

ある真夏の夜に宇宙人を拾ったクレダさん。拾った宇宙人に「せんりゅう」と名付け、川柳のことを教えて「NEO川柳」ブームの火付け役にしようとたくらむが……。というのがストーリーの大枠で、宇宙人と一緒に私のような何もわかっていない初心者も川柳(特に現代川柳)について学んでいくことができます。

▽▼冒頭を左右社さんのnoteで試し読みできます▽▼

ポップでシュールでよくわからなくて、だけどなんだかおもしろい!そのポップさは陰鬱さも含み、シュールさで以て社会に抵抗する、「なんだかよくわからないから……」なんて予防線を張った態度を吹き飛ばす。
暮田さんがつくりだす現代川柳の世界には、そんな印象を受けました。
川柳といえば、サラリーマン川柳やシルバー川柳しか印象にない方は多いと思うのですが、そういった庶民生活のユーモアさから少し外れたところもあるなんだかへんてこな現代川柳の世界に、皆様もぜひ触れてみてください。

ボカロPの端くれとしては、作中でクレダさんが「ボカロ曲」について言及していらっしゃる点も注目でした。ボカロを・川柳を、ひとつの「装置」ととらえ、言葉の意味よりもかっこよさを重視する。確かにある種の共通点を感じさせます。
個人的には現代川柳に、エリック・サティの音楽やそのタイトルを想起したりもしました。

川柳の歴史やおすすめのつくり方、句会についてもしっかり書かれていて、読み物としてだけでなくきちんと「川柳入門書」として役立つところも本書の素敵な点のひとつ。現代川柳の不思議なところは、宇宙人たちによってしっかりツッコミが入っている点もわかりやすさを高めています。

クレダさんの「自分のことを書くよりも書かない方が自然」や「書きたいことはないけど川柳を書きたいから書いている」という創作スタンスは、私にとって大変共感できるもので、「こういう風に考えても・そしてそれを表明しても良いのだ」と思えてとても嬉しかったです。
クレダさんと川柳の出会いや付き合い方についての章も、とても興味深く拝読しました。

川柳とは?から始まる現代川柳の入門書として、そしてひとりのクリエイターの創作論として、本書はポップに読み進めることのできる良書です。
「宇宙人のための」と書いてあっても大丈夫。地球人も宇宙人ですから。


▽▼さっそく現代川柳をやりたくなったスタッフによる一句▽▼
ひとりごとの多い宇宙人コンポート

※人生初川柳です。
※お題は「宇宙人」でつくってみました。