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それキケン③ ~商品への向き合い方~

キケンな会社、とは


キケンな会社というのは、
その兆候が端々に出ているもの。


ここで言うキケンというのは、
文字通りの「危険」「危うさ」という意味。


公になったら、関係機関の
お世話になってしまう危うさ、

自分がそこに染まったら
世間の常識とズレてしまう危うさ、

無理に馴染もうとすると、
自分がおかしくなってしまう危うさ、

そして最後に、
企業として存続していくことの危うさ、

の意味を含んだ、
「キケン」。


そんな幾つもの「キケン」な兆候がある中で、
ビジネスに取り組むスタンスが垣間見える
行動について記したいと思います。

商品との向き合い方、お客さまとの向き合い方


企業として存続していくためには、
その会社が提供するサービスや商品を
購入してくれるお客さまがいないと
成り立たない。


物販の会社であれば、モノである「商品」は
お客さまに購入して頂く、大切なもの。


だから、検品などをする際、
販売する「商品」を開けて触れる時は
極力、白手袋などをして扱うのが好ましい。

店舗バイヤーに買付けてもらうためのサンプル(見本品)や
メディアに撮影・掲載してもらうためのサンプルも、
良い印象を持って検討してもらいたいので

丁寧に扱うのは、当然のこと。


ただ、そういった感覚が欠落していて
商品やサンプルなどを雑に
扱っている会社は要注意。


商品は「お客さまに買っていただくモノ」
という認識が希薄だと、

例えば、
物流センターで商品の出し入れをする際、
ゴミがゴミ収集車に投げ入れられるかの如く
放り投げたりする。

放り投げられることでB品(不良品)になるリスクが高まる、
なんて観点がなくなってしまっている。


また仮に、B品にしてしまったとしても
誰かに指摘されたくはないし、社内処理の手続きが面倒なので
見て見ぬふりをし、そのまま出荷してしまう。


更に発送用段ボールに梱包するときにも、
平気でシワやキズが入りそうな入れ方をする。


これらは、以前いた会社で実際に起こっていたこと。


「商品は大切に扱うもの」という認識がないのはもちろんのこと、
その商品をお買い上げいただいて初めて、
自分たちの給料の原資になる、という認識も抜けていた。



だから、セール価格になった商品の扱いなんて
特に酷いものだった。

セール品の扱いは、もっとヒドい


投げるのは当り前で、キズがついてもお構いなし。
「だって、セール品じゃん」という言い分らしい。

扱いが雑なので、キズは増える一方。


そんなキズだらけの商品なんて、
割引しても絶対売れないのに

なぜか、後生大事に保管し、セール時期に
また引っ張り出してとりあえず、店頭に並べる。

そして、セール時期が終わるとまた保管して、
必要になると引っ張り出してくる。


無駄な負のスパイラル。


商品を雑に扱うくせに、
廃棄処分(除却損)は出したくないのだ。


だったら最初から丁寧に扱って、
少しでも購入確率を下げないようにすればいいものなのだけれど
そういった思考にはならない。

付加価値を見いだせないのは、終わりの始まり


商品を雑に扱うことは
商品の品質的な観点の問題に加え、

ブランドビジネスという観点でも、
携わる人々がそのブランドの商品に
付加価値を感じなくなってしまうので

そこにも大きな問題が発生する。



上司や先輩が商品を雑に扱う、ブランドを雑に扱うと
部下や後輩、販売スタッフも同じように雑に扱うようになる。


そういった価値観は伝染する。
そして、なぜか悪い価値観の方が
時間を掛けずに蔓延していく。


売場ではブランド商品が単なるモノ(コモディティ)化し、
販売スタッフはモノとしてしか扱わなくなるし、
お客さまへも、モノ切り口の提案が中心になる。

モノだから当然、お客さまも
価格軸でしか評価しなくなっていく。


そして店頭は
モノを並べているので、

ブランドとして計算された
統一感のあるディスプレイは行われず、

雑然としたディスプレイに
なっていく。


そういった状態が更に悪化すると、
売場にいらっしゃるお客さまの層まで
変わってくる。


わかりやすい変化は、転売ヤーが増える。


そして、転売ヤーに対応することで
自体は更に悪い方向へ進む。


転売目的で商品を仕入れる「転売ヤー」に大量に販売すると、
売場に商品を探しに来てくださる一般のお客さまが
「欲しい」と言っても、在庫がなく欠品状態になってしまうのだ。

売れ筋商品は、転売ヤーが仕入れるものと間違いなくカブる。
そして、売れ筋なのでそもそも入荷も他店在庫も少ない。


こうやって、「在庫がないお店」というイメージを持たれ、
自ら負のスパイラルに入り込んでいく。

でも、そんな状況になっても
キケンな会社の人は何も感じない。

ファミリーセールで垣間見る、会社の本性


それはファミリーセールの時がとても顕著だった。
裏で転売ヤーを「業者、業者」と呼び、
来場すると「待ってました!」と言わんばかりに
大量に販売する。

そして翌日、
転売されているECサイトやアプリなどに商品が溢れ、
二次マーケットが荒れる。


希少性の高いアイテムならまだしも、
マスマーケットど真ん中に向けた
ベーシックアイテムが市場に溢れ

ブランド価値の毀損につながっていく。



ここでファミリーセールに関するネタをもう一つ。

ファミリーセールの撤去のときが一番、
その企業のカラーが出るんじゃないかと思う。

わたしがいた会社は
撤去が始まる閉店時刻の更に1時間前、
まだお客さまがいても商品をしまい始め、
店頭は最低限の商品フェイスにしていた。


そして閉店10分前の音楽が流れる頃には
半分以上の商品は梱包が終わり、
梱包された段ボールが会場内を移動し始め、
お客さまを煽り、退店プレッシャーをかける。


もはやお客さまを「お客」とさえ
思っても、扱ってもいないのだ。


早く商品をしまい始めることについて、
仮に百歩譲ったとしても

商品を「商品」と思っても扱ってもおらず、
「売場=お客さまの前」という認識もないので、
売場で段ボールに商品が投げ入れられる。


そんな風に扱われている商品を目にして、
「買いたい」とは到底思えない。

でも、その会社の多くの人は、そういった行動に疑問を持たず
さも当たり前、と行動していた。


それが、会社のカラーなのだ。



実は、多くの自社ファミリーセールは、
普段その運営会社の本社勤務をしている社員が
店頭で販売し、設営から撤去を行っている。


だから、ファミリーセールの最終日、
閉店間際にセール会場にいると、その会社の
社風が見られておもしろかったりする。


「あぁ、この会社はとても丁寧に商品をしまっているな」
「閉店時刻近くでも、退店プレッシャーかけてこないな」

など、商品やお客さん、ブランドに対する
スタンスが透けて見える。


とにもかくにも、自分たちの生きる糧である商品を
雑に扱う会社はとてもキケン。


備品も商品もモノはモノ


あとは、モノつながりで会社内の什器や備品の管理も
商品管理と少し似ている。


手入れが行き届いておらず、汚かったり
ボロボロの備品であっても更新せず、
そのままずっと使っていたりする会社はキケンかも。


来客用の備品はキレイでピカピカだけど
社内用はボロボロ、というのはよくある話だけれど、
その会社は、来客用の備品までボロボロだった。


社外の方も招き入れる会議室や
応接室の机の天板は、雑に扱うので
所々割れたり欠けたりしていて、

布張りの椅子は座面の奥にホコリが溜まり、
背もたれの頂点部分は黒ずんで汚れていた。


なんでも、オフィスの引っ越しの際に
机は雑に運んだから衝撃でひび割れ、

椅子はL字の座面部分を互い違いに合わせるよう
上下反転させて重ね、
2個イチで床に擦り付けながら運んだため、
背もたれが黒ずんだそう。


それがそのまま。
補修もされず、更新もされず。


また、イタリアのカッシーナの
革張りチェアがあるものの、手入れがされていないので
革の表面はひび割れ、ステッチの糸がほつれていたりした。

カッシーナの椅子、と言われなければわからない状態。

言われても、

「これが本当にカッシーナの椅子ですか?
パチもんじゃないですか?笑」状態。

でも、そのまんま。


高級なモノじゃなくても
手入れが行き届いていればそれなりに見え、

高級なモノでも
手入れがされておらず、ボロボロであれば
廉価品以下に見える。



全ては、「常識」「感覚」「意識」の
違いなんだと思う。


ブランドビジネスをしていて、コレは致命的。

単なるモノの扱い方から、壮大に飛躍する


こういったモノの扱い方がなぜ、「キケン」なのか。


モノを大切にしない
 ⇒ 商品を大切にしない
  ⇒ お客さまを大切にしない
   ⇒ 商品が必要とされなくなる
    ⇒ 会社が必要とされなくなる

こういったことに繋がる。



実は、入社後に知ったのだけれど
お客さまを大切にできないことが当たり前となっていたからこそ、
過去に、事業再生スキームを行っていたのだ。


当時の経営陣は責任を取って退陣。

資本は入れ替わり、親会社から代表者を受け入れたものの、
要職は全て、生え抜きの民事再生前の管理職もしくは
一般職が昇進し、担った。


おまけに入れ替わった親会社は当時上場していて、
ITバブルのブームに乗って株式交換で多くの会社を買収しており、
資金が潤沢だったので

旧会社から新会社へ移った際、従業員には退職金が支払われ
俸給制度は新会社の新制度に変わったものの、
旧会社の給与水準がそのままスライドする形だったそう。


だから、従業員の意識として

「会社がダメになったのは自分たちのせいではなく、
全て経営陣が経営判断を誤ったからだ」

という認識に至ったのではないか。


当時の経営陣による、経営の失敗もあったと思う。


でも、従業員の、会社を覆う全体の「意識」、
それが民事再生を行わなければならなくなった
大きなひとつの原因なのではないか
と、今でも思う。

再び、危機に直面する


因果なのか何なのか、
紆余曲折あって親会社から独立したものの
直近で資本増強が必要になり、大きな影響が出ない程度に
密かに取引先の資本が注入された。


それだけ、会社が傷んでいるということ。
変われずに進めば、存続自体がキケンになる。



会社の方向性を決めるのは役員、
でも会社の意識や雰囲気を作り上げるのは社員。

そして、社員に影響を与えられるのは、管理職。


とは言っても、影響を与えられる管理職は
一般社員より、人数が少ない。


頑張ってみても、キケンを取り除けないこともある。
そんなときは、距離を取りましょう。


辛辣に綴りすぎたかな、と少し反省しつつ
長文を最後までお読みいただけた方に、感謝。



最後までお読み頂き、ありがとうございます。

マネジメントでお悩みの方、
管理職になって日が浅い方、
上司の考えに「?」と思っている方、
カッチカチに古い体制の会社に疑問を持たれている方、
などなど。

お仕事でそんなお悩みを持たれている方に向けて
発信していきたいと思います。

 きのした

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