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アウトドアクライミングでは、”危険予知能力”が生死を決める

こんにちは。クライマーのKinnyです。

今日は、頑張りでは、アウトドアのリスクは回避できない、ということについて、です。

現在、日本のクライミング界は、スポーツクライミング上がりの人が99%みたいな現状になっています。これは、日山協を始め、人工壁を登るスポーツクライミングだけに、ここ30~40年注力してきた結果です。

ところが、アウトドアクライミングのリスクって、

 スポ根の頑張り

で、回避できます?

いや、できないのです。 必要なのは、”頑張り”ではなく、

 冷静なシミュレーション

のほうです。冷静なシミュレーションを 危険予知、と言います。

■ 事例: 落石があるところにピクニックシートを広げる初心者アウトドアクライマー

例えば…?

岩場で、落石があるところにピクニックシートを広げる…という行為。

こうしたことは、伝統的には、山岳会に属していれば、「〇〇さん、そこは落石があるよ~」と誰かが教えてくれて、自然に身についていたことでした。

ところが、昨今、そうした組織や伝統に属さず、友人同士で登り始める人がほとんどです。そのため、岩場に行ったときに、そこは危険だよ~と教えてくれる人がいるわけではありません。

ところが、落石って、そう頻繁に起きることではありませんから、1回や2回の外岩クライミングで、そこにピクニックシートを広げたことで、ひどい目に遭うことは少ないです。

それで、これでいい、という確信が生まれてしまいます。

しかし、一回でも、人の頭大の石が落ちてきて、それが当たったとしたら?

大けがであり、大事故であり、そして、死亡事故も起こりえます。

たった一回のことで…。

そして、それって、”運が悪かった”と言えますか? 

正直、言えません。

そもそも、落石が予想できるところに、ピクニックシートを広げるべきではないからです。

だから、いつか落石に当たることは時間の問題、だったのです。

■ ギャンブル性

これは、客観的に見てギャンブルで、続ければ、続けるほど、落石に当たる確率が上がっていくので、ロシアンルーレットと言う意味です。

これは、一般の社会でも、同様の現象が起きています。

例えば、低い土地に、多くの人が集合する設備などを作らない、という知恵などが無視され、田んぼとして利用されていた場所に、駅ができたり、学校ができたり、家を建てたりした結果、何年間かに一度の津波で流される、などです。

しかし、一般的に不運で片付けることに…

■ 不運で片付けるとどういうことが起こるか?

これを不運で片付けたとしたら、どういうことが起こりうるでしょう?

 反省がなく、また同じことをする、

ということになります。

おそらく、これがクライマー界を含めた、日本の登山界に起こっていることです。運が悪かったということで片付けられるため、教訓として学ばれず、未来に生かすべき、貴重な教訓は生かされず、延々と同じ過ちが繰り返されている、ということです。

これが大事であるのは、一回のミスで、甚大な被害があるから、です。

交通事故などと同じです。

■ スポ根と裏表の関係にある安全意識

実は、危険予知についての軽視、というのは、スポ根と裏と表の関係にあります。

スポ根の人は、「がんばることが正しいこと(善)」という想いが強いのです。

すると、怖さを我慢して頑張ることになります。

「お前、男だろ、これくらいで怖いとは何だ!」という奴です。

これは、心の中の声でも同じです。

しかし、怖いのは、リスクを感知した、という人体の機能、お知らせ機能ですので、危険を察知したら、危険でなくなるように行動しなくては、意味がありません。

そこで我慢するのが良くないのです。

そこで我慢するようになっているのは、

 心理的な自動反応 (トラウマ反応)

です。男が廃る!みたいなやつです。

そこには、男のくせに、とバカにされたりとか、こんなこともできないの、とバカにされたりした、という未解決の感情があるかもしれません。

その感情は、未処理の恥の感情、こんな自分は情けない、怖がるなんてダメだ、ということかもしれません。

我慢する、というのは、自動反応(無意識)なので、本人は気が付くことができません。

我慢してしまえば、自己否定になります。

それを利用して、奮発させよう、という競争社会が男性の社会には良く見られるようです。

漫画とかでもよく出てきますよね。そして、バカにした、バカにされた、という関係で、どっちが上か、みたいなのです。

友人のK君は、屋久島で、終了点の腐ったボルト1本にぶら下がるのが怖かったのに、なんだお前はそれでも男か、とバカにされたのだそうです。それで屋久島フリーウェイに対してリベンジクライミングを考えていたみたいです。

こういう関係性って男性社会独得で、女性社会で、こんな働きかけ、虚勢を張らせるような声掛けはめったにありません。

これは、なんだ、とか言われなくても、「ふーん、怖いんだ」とかでも同じです。

私が出会ったことがあるクライマーの中には、

・見捨てられ不安が強く、「もっと頑張らなければ見捨てられる」と考えがちな方

・「がんばらないと愛されない・うまくいかない」という悪夢(見捨てられビリーフ)

がある人もいました。

しかし、アウトドアのリスクって、

 頑張り

で、回避できます?

いや、できないのです。必要なのは、”頑張り”ではなく

 冷静な危険予知シミュレーション

のほうです。

繰り返しになりますが、これは、ここ30~40年、スポーツクライミングだけを推進、強化してきた結果、が現実に現れてれているということにすぎません。


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