愛を知る

愛情には2つの分かれ道がある
これから誰かの日常も尊ぶ程にその人を大切に想う愛情。
それから、異常なまでに相手に縋り付き、自分を愛してくれる人で自分の寂しさを埋めようとする歪んだ哀情。

後者を私達は依存 と呼ぶ。

愛は人という存在を形づくる基盤のひとつだ。
幼少期の豊かで素直な愛情は
人格形成に大きく影響する。

ところで、その愛とは何なのか、
romanceの香りがする恋愛の愛なのか
親が子を子が親を、愛おしく思う無償の愛なのか
 
愛は 人それぞれで形が変わる。
質量も、彩りも？バランスも？
そして、その愛の対象が何にあるのか、
意味があるのか、それすらも人によって異なる。

長い長い旅の中で時に全てを失ったり、信じることが出来なくなったり、守れなくなることがある。絶望を感じることもあるし、何も大切にできなくなる時もある。

それでも私達は絶望と希望を抱いて矛盾にも
居心地の悪い温もりの中で生きていく。 
間違えてばかりの人生だ。
履き違えてばかりの人生。
愛情のフリをした依存という悪魔が自分が真実だと言わんばかりの顔で心を蝕む。

あぁ、また間違えちゃったなぁ。
なんて思っても、根本的な悪魔の正体に気付かなければまた同じように自分から沼に浸かっていく。

なんて愚かで、美しい矛盾なんだろう。

ところで、私は今、やっと依存という悪魔から抜け出せたところだ。 
誰に縋っても 自分の心の寂しさは埋められないし、人に幸せの価値を委ねるべきでもない。

自分の心臓に突き刺さったナイフで出来た傷は
人が治してくれるわけじゃないし、人は痛み止めでもない。絆創膏でも無い。

自分で引っこ抜いて、致命傷になっても、
何気ない日常の中で大切な人の言葉がふと脳裏に残っていればなんだか 少し痛みが和らいでいく気もする。

全てを知る必要もなければ、
全てを背負う必要も無い。

何かを愛しているという共通項を持った関係。
それに過ぎない。 

私の時間も、貴方の時間も、全てが愛おしいとそう想える。 

そう思えて、やっと気づけて、依存から抜け出せた。 

依存から抜け出すのは安易ではない。
自分と向き合う孤独で苦い時間を送らなければ気づけない、変われない。

それでも、私達は誰しも、
本当に心の底から何かを愛することができる尊い生物である。