儚き詩
生命の色が儚く滲んでいた。
あの子は、幸せな一生を歩めたのだろうか。
何の変哲もない日常で 当たり前のように
朝が来て、
今日も私は時計と睨み合いっこなんてしながら 自転車を走らせた。
車が絶え間無く、人の営みの中に生きている事を嫌だと思うほど実感するばかりだ。
ふと、視線を下に落とすと
そこには小さな体で精一杯生きた
子猫の姿があった。
見るに堪えない。
彼の表情を見ることは出来なかった。
小さな体を救うことも出来なかった私は
ただただ彼の来世が 幸せなものであることを祈るばかりである。
この世界は人間によって支配されている
そして私も支配している。
もし文明を発達させなければ
彼が亡くなることは無かったかもしれない
しかし、文明を発達させなければ
彼が生まれることは
出来なかったかもしれない
私達は そんな矛盾の中を生きている。
生命はいつ奪われるか解らない程
確かな形を取らず、
私達でさえも、明日を生きることは
保証されていない。
もしあの時、車に轢かれたのが
私だったら。
今を此処で生きているのが
私じゃなくてあの仔猫だったら。
ひとつの眩い生命を救えた私は
きっと安らかに眠っただろう。
命の重みは平等。
変わらないサイクルの中
生きている眩い生命は、
失われてはならないものだった。
それでも人は人が一番大切なものだと
考える。
人間ほど愚かな生命は居ない。
私は この世に存在してはならない種など
無いと断言したい。
生命は儚い。
簡単に奪われてしまう。
生きることだけで
儚く思ったり、罪悪感を感じたり、
自分の生命の重みを
他者の生命の重みと
比べたりしてしまう世の中で
矛盾の中を唯々生きている。
本当は今を生きるはずだった
彼に花を手向け、
彼の分も私は生きていく。
いつか私の生命の灯火が消えゆくまで
同じようにこの世界の儚く美しい
生命を私は愛し続ける。
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