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神経系の書籍紹介〜たった3日で脳卒中の予後を予測できる?〜
今日もお疲れ様です!近畿OuTPuT会、理学療法士の吉川です!
『脳卒中機能評価•予後予測マニュアル』を紹介します。すでに持っておられる方も多いと思いますが、僕なりの意見も添えて書きます。
<もくじ>
・予後予測は3日でできる?
・この論文を臨床に生かす
・注意すべきこと
・まとめ
予後予測は3日でできる?
①座位が30秒保持できる!
②麻痺側下肢の3関節のMMT(股関節屈曲、膝関節伸展、足関節背屈)がどれも1以上、もしくはどこか1関節以上がMMT4以上!
この①.②の基準を3日以内に満たせば、発症6ヶ月後の歩行が自立する可能性が98%。
逆に3日以内に①.②を満たさない場合は、27%まで低下します!
さらに9日以内に満たすことができなければ、その可能性は10%まで下がってしまいます!!!
たしかに、発症後3日の段階で、6か月後の歩行を獲得する可能性のパーセンテージが分かるのは、僕としても非常にありがたい論文!
Veerbeek JM, Van Wegen EE, Harmeling-Van der Wel BC,et al :EOOD Investigators.Is accurate prediction of gait in nonamblatory stroke patients possible within 72 hours post stroke? The EPOS study.newrorehabil Neural Repair 25:268-274,2011
この論文を、臨床に生かす
1つ目
3日以内に①②を満たさない場合、27%の確率で、歩行獲得できない可能性がある。そのことを頭の片隅に置きながら、早めに介護保険の申請、又は区分変更などをMSW(医療相談員)に依頼し、後方病棟へしっかりつなぐことが大切になると考えています。
2つ目
早期に(3〜9日)座位の獲得を目指すことは、歩行予後の改善につながる可能性があるということです。ガイドラインでは早期歩行開始、下肢の運動が推奨されていますが、座位練習も疎かにはできません。早期に介助下で歩く練習ができても、座位保持ができなければ6ヶ月後の歩行獲得の可能性が減る恐れがあります。時間のない急性期病棟だからこそ、再度座位の評価を見直すことはいいかもしれません。
注意点
この研究結果だけで、理学療法を進めるのは良くありません。なぜか?
この研究対象は、
『初発の前方循環系の虚血性脳卒中』
『コミュニケーション、記憶、理解に重い障害がないもの』
などが含まれています。
前方循環系というのは、前大脳動脈、中大脳動脈を含む内頸動脈を指します。つまり、梗塞部位が大まかにしか評価されていないということ。
小脳、脳幹硬塞は含まれていないことに注意しなければいけません。
また、コミュニケーションなどに問題がないことから、高次脳機能障害はない、もしくは非常に軽度?であることなどが読み取れます。
また、9日以内に①.②を満たさない患者でも10%は歩行を獲得できるということ。一見、重症であっても諦めてはいけないということ。
最後に、これは前向きコホート研究のため、エビデンスレベルとしてはやや弱いということ。
以上の注意点を踏まえて、目の前の患者さんがどうなのかを見極めて評価すべきであると考えます。
まとめ
僕たち理学療法士に、求められていることは予後予測です。
しかし、脳卒中において急性期の段階で歩行の予後を予測するのは、かなり難しい。実際に急性期で求められているのは、大まかに予後を予測し、急性期から自宅へ退院するのか、どの後方支援病棟(回復期病棟or地域包括病棟)に行くのがいいのかを、根拠を持って判断することです。
この本には、”回復期での予後予測“だけでなく、“急性期での予後予測”についても触れられています。
気になった方は是非一度読んで見て下さい!