短編小説『性の火葬』
川辺でうずくまり涙する青年。上等なスーツが汚れてしまうことも忘れているのだろう。日が昇り始めたばかりで人通りは全くない。目の前には燃え盛る焚き火。その中では毛の長いウィッグ、女物の下着やドレス、着物が炎に絡み取られ朽ちてゆく。濁った煙が緩く風に吹かれて水面を這った。
「貴巳様、そろそろ消火いたしますか」
その様子を直立不動で見つめていた深緑のスーツの男が抑揚のない声で尋ねる。
「駄目だ。まだだ。KIKAI、お前は燃えゆくものの映像記録だけしていろ。ああ、俺の声入ってしまった。