落涙の末に

どこかで ボタっと落としたナミダ
思い出の体積を一切合切
一緒くたに包み一袋にして
雑に盗んで流れ落ちていったよくやくのナミダよ
形のナミダよ 熱のこもった 混色のナミダよ
わたしから抜け出してしまったナミダよ
お前に愛おしさはもう感じない
凍りつくことも蒸発することも
あっけなく跡形もなくただ流れ出ただけ

泣いて喚いて悲しんで散った
遠くへと響き渡った悲しみは
しらけてままになくなった
悲しみのひと時 ナミダにしまい 泣いておしまい

落ちて弾けた あっというま
さよなら

泣くことを許してしまったばっかりか
流すことを厭わなかったばっかりか
別れを惜しんだばっかりか
残ったのはカラのわたし

なにもでない
形も色も質量も物質も体液も
声も嘆きも回想や感触さえも

なにもえない
水面を時化らす風さえ感じない
詰め込まれたナミダ 落ちて弾けた音が
わずかに耳を震わせても
わたしにはもう流すナミダがない

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