私の父はコントロールフリークで癇癪持ちで。
気持ちを表現するのが下手で内弁慶な人だった。
子供の頃、私は父が怖かった。
ほんとに怖くて、毎日の食卓で父の顔色ばかり見ていた。
私は運動音痴で、その方面はてんで駄目な奴だったから、
近所のお家からもう使わないからって子供用の自転車を譲り受けて、
父から自転車乗る練習しようって言われた時、
縮み上がった。
全てうまく運ばず、父から怒鳴られるって反射的に思ったから。
だけれど、緊張しきってガチガチだったのがかえって功を奏したのか、驚くことに30分程の練習で私は自転車に乗れるようになったんだった。
「tonchikiが、自転車乗れるようになった。
あっという間に乗れるようになった。
広いところで手を離したら、すーーっと一人で乗れてなあ。」
晩酌しながら、何度もそう話す父。
私は嬉しいような、なんだかひやひやした気持ちでもいて。
「一度乗れたら、不思議と忘れないもんだ。間があいても。」
そう言われたことをなぜだろう、忘れられずにいる。
そうして、このごろ何度も思い出す。
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