まっくろくろすけのくろいところ
介護生活真っ最中の友人から、連絡があって
「・・・・・・・たまらんわ~~~!!!」
って。
何が??
お母様の具合が悪いか??
ドクターと揉めたか??
「違う違う、そうじゃないそうじゃない」
って、あんたは鈴木雅之か。
「そうじゃなくてさ~~
妹の旦那!!!!
あーーーーーーーもうッ!!!」
彼女の妹の旦那さんは、教師。
妹さん夫婦は、友人の家から車で40分くらいの所に住んでいる。
「それがさあ・・・家に来るじゃん??
まあ、妹にしたら実家なんだからとも思うけど
そもそも・・・」
わかるよ
もはや別所帯だからね。
介護って、思うよりずっとお金もかかるし
実家であっても・・・ってことだってある・・・でしょ??
「そう!!!!
でさ~~~この妹の旦那がさー
いっちいち
毎回毎回
「それはヘルパーにもっと言って、融通をつけてもらうべきだ」とかさ
「医者との連携を、もっと深くするべきだ」とかさ~~~」
あーーーー・・・
「はてはその日の献立の内容までだよ。
この間さー鰻が好物だから、鰻をちょびっとだけ・・・って思って
用意していたのね。
そしたらさー
「ちょっと内容が重いんじゃないか?胃に負担がかかるんじゃないか?」
とか。横でずーーーーーーーーーっと。
判るけどさー
とりあえず「食べてくれる」ってのが一番に来ている訳よ、こっちは。」
本人食べたがってるんなら、いーじゃん。
「だよね!?でも、なんか、そう言われるとこっちも揺らぐのよ」
わかるわかる
でも、そこはあーたが一番わかってる部分なんだから、大丈夫だよ。
お母様が美味しいって食べてくれてるなら、それが答え!!!
「・・・ありがとー
・・・
・・・
で、さ。
医者やヘルパーさんの連携の話については、そりゃ正論だよ??
正論かもしれないけど・・・でもさー色々ある訳じゃん???
ぶっちゃけ、こっちはそんなこと言って、せっかく今までに築いた信頼関係
おかしくしたくない訳じゃん??」
わかる
わかる
そういうのって、関係性築くためには、時間かかるからね~~。
言いたいことあっても様子みながら・・・になるよねえ。
「で、さ。妹旦那のゴタクなんて、適当に「流す」じゃん??」
うん
「そしたら、あたしが恐れ入ったとでも思ったのかさ~~
まあ、語る、語る。
どこの本に載っていた話がこれこれで
どこそこの医者がこう言っている。
介護者も
息抜きしながらやっていかなくちゃとかさ。」
うへえ
「で、妹も、悪気はないのかもしれないけど、横で頷きながら
「そうよ。お姉ちゃんもリラックスしながらやらないと。
ばてちゃうもん。」
あたし、いけないと思ったんだけどさー
我慢できなくなっちゃって」
うん
「じゃあ1週間でいいわ。
ってか、休みの間だけ家に来て、泊りがけでみてくれる??
あたしその間、おやすみさせてもらうから」って言っちゃって~~~」
アハハ
そしたら?
「速攻帰った」
アハハハハ
「・・・でもさあ・・・そのやりとり・・・聞いていた訳じゃん?
母が。
後からさあ、聞かせちゃった・・・聞いてた母親から
「・・・・ごめんね」
って言われちゃって
もう、
もう
すっげーーーーーーー
自己嫌悪!!!!」
実際のところ、
介護者が孤独だって言われるのは、こういうことだったりするよなあ。
傍で見ている私だって気を使って話したのに・・・って
妹さんは思っていたよね。
きっとね。
でも。
夜の長さを。
胸を掴まれているかのような
張り詰めた思いを。
知っている訳じゃないなら
結局は「お客様」だっていう事実だって、そこには、ある。
あるんだけれど・・・それを認めない人って多い。
案外と。
自分が綺麗なままで、キラキラと関わることのできるほど
人間って、簡単じゃない。
「お客様」なら「お客様」でいいんだ。
「お客様」であるという自覚を持てるなら。
「お客様」という自覚を持って見守るというのは
それはそれでとても
とても・・・厳しい道だものね。
でも・・・。
「ああ、もう・・・失敗したわ~~~」
大丈夫
大丈夫
お母様には、伝わってるって。
「・・・そうかなあ」
そうそう。
なんつうても、自分の娘なんだからさ。
あーたの性根が、まっくろくろすけだってことは、
とっくのとうにお見通しだって!!!
「・・・ぶわはははははは!!!!
し、しつれいなッ!!!
鈴木雅之までは許すけど、誰がまっくろくろすけやねん!!!」
笑って
電話を切った彼女の
夜は
続く。
日々は
続く。
続くことの
喜び。
続くことの
修羅。