読書編④【クララとお日さま】カズオ・イシグロ
人工知能を搭載したロボットのクララは、病弱な少女ジョジーと出会い、やがて二人は友情を育んでゆく。愛とは、知性とは、家族とは? 生きることの意味を問う感動作。
久々に新刊で本を買いました。
この作家さんの作品は映画「私を離さないで」で知って、夜想曲を途中まで読んだきりでした。
映画がとても素敵で好みだったので夜想曲もと思ったのですが、その頃はあまり読書に向いてなかったんですね。
全部読まず、早数年。
新刊が出ると知ったと同時くらいに「忘れられた巨人」を読んでいて、やはり好みだったのですぐに購入。
私はこの方の書くコトの雰囲気がとても好みです。
この作品ではクララ目線で描かれていて、まだクララの理解し得ない部分があったりしてなのか難しすぎる表現などはなくて児童書感覚に近い気もしました。
クララの《見えている》表現も映画っぽい感じで、そこもしっかりクララ目線。
クララと一緒に暮らすジョジーという女の子の世界は厳しい科学による差別化があるようでした。
子供のうちに何かしらの「処置」をされているか、いないか。ちょっとガタカのようです。そのせいで体調が悪くなっているのか、何なのか原因はよく分からないままジョジーの体調は一進一退。
クララはジョジーの調子が悪いときにすぐに気付けるように丁寧に観察する日々。
そして話が進むごとにクララの先行きが不安になっていきます…。
アンドリューとかブレイドランナーとか思い出しちゃいます。
*ネタバレ注意です。
AIは仕事だけじゃなく、いつか誰かに変わって心を癒やすコトが出来るようになるかもしれない。
でもクララがジョジーを継続出来たとして、心も継続出来たのなら、クララにも心が出来ているのじゃないかな…とか。
その時のクララの心は?
例え血肉から出来ていなくても、人の形をして、自分で考える相手をただの機械にしかみない?
ジョジーはしなかった。ジョジーのママも。
とんでもない計画をしていたママだったけど、パパの言うようにジョジーを継続しても拒絶していたかもしれない。
でもその後は一緒にいられない決まりなのか、クララのラストの居場所に切なくなります。
クララの見つけた心、複雑でとんでもなくめんどくさい心と頭の中。
優しいのに私は感動というより、ちょっとビターな気がしました。
クララの献身とジョジーの笑顔で優しい気持ちなのにどうしようもなく切ない。
ビターチョコをミルクチョコでコーティングしてるような感じといいますか。
でも素敵な作品でした。
忘れられた巨人もそうでしたが、情景も好みに思います。
エクス・マキナも高性能AIの女の子の話(映画)でしたが、全くタイプの違う女の子でした。
でも作る側のセンスでそうゆうAIの性格の指向?設定も出来ていくようになるのかもしれないですね。
ともあれカズオ・イシグロ作品は他のも読んでみようと思っています。