戦慄の絆(1988)
鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督の描く心理サスペンス。カナダのトロントで産婦人科医院を開業する一卵性双生児の名医、エリオットとビヴァリー。幼い頃から文字通り一心同体に育った兄弟は、しかしある日、一人の女性に出会った事から、それまでのアイデンティティの均衡を崩してゆく……。主人公の一卵性双生児役を一人二役で演っているジェレミー・アイアンズが逸品。
<allcinema>
何度目の登場でしょう、デヴィッド・クローネンバーグ監督です。
この作品もとっても好きです。
オープニングは真っ赤な背景に中世の医学的な書物の挿し絵のような絵が流れていくんだけど、優しいような不気味なような美しい旋律と重なって芸術的な場面だと思います。
医療器具なのか拷問器具なのか…。
フェティッシュの塊。
音楽はハワード・ショアという方でクローネンバーグ監督作品でもよく担当されてます。あと「羊たちの沈黙」でも音楽担当されていてエレガントな印象もありながら不穏さを感じる音楽が素敵な感じがします。
双子の婦人科医を演じるジェレミー・アイアンズ。
この作品でも乱れて美しく堕ちてます。錯乱している姿がこんなに美しい俳優さんはなかなかいないんじゃないでしょうか。
初めてジェレミー・アイアンズを意識したのはリメイク版の「ロリータ」で、隠した変態性を醸す端正な顔立ちが印象的でした。
二人の関係を変えてしまう女性クレア。
珍しい子宮を持つ設定。三つの道に三つの部屋がある。
実際に二つの子宮を持つ重複子宮というのはあるようで最近のニュースでも重複子宮の女性が双子を妊娠とありました。
でもこのクレアは三つという設定。
内も外もとても魅惑的な彼女に二人は興味を持ち、弟のビバリーは恋をします。
しかし兄はその恋も共有したがったのでビバリーは秘密にする事に。
そこから二人の関係は歪んでいってしまいます。
婦人科医として有名な二人。
真っ赤な手術着は儀式のよう。
次第に歪んでいった関係はビバリーの精神にも及んでいきます。
クレアの家に逃げ込んでも逃れられない二人の絆に蝕まれるビバリーの精神。
もうここからは堕ちるに任せて二人の関係も精神も重なるように混濁していきます…。
この作品も実話がベースとなっていて、双子の婦人科医の謎めいた悲劇的な事件を元に小説、映画と作られています。
この作品の私のイメージは絵画に近いかもしれません。オープニングから真っ赤な手術部屋、医療器具とも拷問器具とも見えるオブジェ、シンクロする双子。
また印象の違うクローネンバーグ監督の素晴らしい作品だと思います。