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牛と呼ばれた女

このnoteでは、ビジネススキルについての記事を書いていますが、時々気分転換に、日常のこと、ふと思い出したことなどエッセイ的なものも書いてみようと思います。

最近、ふと子供の頃の話を思い出したので、勢いに任せて書いてみました。

よろしければ、読んでみてください。


牛と呼ばれた女


小中学生が付けるアダ名は、驚くほど理不尽なことがある。
アダ名の由来といえば、元々の名前か見た目をちょっとモジって付けられることが多いと思うのだが、私の子供時代に周りにあったアダ名たちは、なかなか個性的だったように思う。

小学校5年の頃、同じクラスにとても可愛い女子がいた。
人気のある子で、彼女の名前は「山下さん」。

そして、アダ名は「へ」。「はひふへほ」の「へ」。一文字である。

由来は、名前からきている。
「山下 → やました → ました → 屁をかました →

気が抜けるほど子供じみている。
彼女からしてみれば、理不尽極まりないと思う。
誰が名付けたのか、全く思い出せない。でも、いつの間にか浸透していた。
 
「ねぇねぇ、『へ』も一緒に行こー」

普通に、女子同士でも親しみを込めてそう呼び続けた。
記憶の中の彼女は、「へ」と呼んでも笑顔で返事をしてくれていた。

「こんなに可愛いのに「屁」なんだよな……。
 でも、それがかえって可愛い♡」
なんて時々思っていたのは覚えている。
今で言うところの「ギャップ萌え」かもしれない。

一文字系で言うと、「だ」も居た。 

彼の名前は、「後藤くん」
当時の中曽根内閣の「後藤田(ごとうだ)官房長官」の名前は、なぜか小学生にも知られていたからだ。

「後藤→ 後藤

どういうわけか、残った「だ」のみ採用された形だ。

クラスが違っても、アダ名だけは知れ渡っていた「だ」
彼が、どんな子だったかはよく知らない。


そして、当の私は、「牛(うし)」と呼ばれていた。

そう、誰もが知っている、あの白地に黒のまだら模様の哺乳類、乳も肉も美味しい「牛」だ。

私の旧姓は「牛島」でも「牛山」でもない。
見た目にも「牛」っぽさはなかったはずである。
別に頻繁に「もー」などと言っていたわけでもない。

じゃあ、なぜか。

当時、「俺たちひょうきん族」というバラエティ番組が一世を風靡していた。
ひょうきん族には、いろんなキャラクターが出ていたが、その中で一時人気だったのが「吉田君のお父さん」だ。

同世代で「ひょうきん族見てたよー」という方には懐かしく思い出していただけるのではないだろうか。
(50歳以上くらいの人にしか伝わらない話ですみません。知らないけど気になるという方は、「吉田君のお父さん」で検索してみてください。)

どういう人かというと、素朴な酪農家のおじさんである。
そのおじさんが、牛を連れて出てきて、タケちゃんマン(ビートたけし)と共演していた。彼が、はにかみ笑顔で「ガチョーン」なんてやっていたのが、当時の視聴者に爆ウケしていたのである。

私も笑いながら見ていた記憶はあるが、今となってはなんで牛を連れたおじさんがそんなに面白かったのか、まったくピンと来ない。

その牛が「吉田君」で、おじさんが「吉田君のお父さん」。

そう、もうお気づきかと思うが、私の苗字は「吉田」だったのだ。
そうくるか、と思った。

こうして私は、小5か小6のころに「牛」と命名された。

中学に入って学年が上がるにつれ、「かすみちゃん」とか「かすみ」とか純粋な名前で呼んでくれる人も増えたが、一部のごく親しい友達には、中学卒業まで「牛」と呼ばれ続けた。
「いや、長過ぎやん?」と、今さらながら思う。


ふと、この記事を書いていて気になったので検索してみた。
すると、Wikipediaに「牛の吉田君」のページがあるではないか。

そこで、衝撃的な文章を見つけてしまった。

「吉田」の語感が「牛だ」と似ているということで「吉田君」と名付けられた

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

なんと、「吉田」が先だったのか!! 語感からだったとは……
40年目にして知る真実……
「山下」→「かました」と同レベルやん…… 
なんだろう、この、言葉にできない感情……

「んふっ」っという、音にならない
鼻から抜けるような笑いが込み上げてくる。
そうだったのか……

「ブルータス、お前もか……」とか
「ごん、おまいだったのか……」とか
全然違うんだけど、そんなセリフまで浮かんできてしまった。

いずれにしても、私は、
ひょうきん族という番組の犠牲者とも言えるだろう。

でも、思い返してみると、不思議とそんなに嫌ではなかった、ような気はする。
当初は、たぶん抵抗したはず。でも、定着してしまったのだ。

定着してしまえば、それが「あたりまえ」になる。

「これ、牛にもあげるね♡」
「わーい、ありがとー♪」

これが日常だったのだ。

給食で牛肉を食べてたら
「わ、共食いやん」とか

牛乳を飲んでたら
「やっぱり、牛乳好きなんやねー」とか

そんなイジりが、あったかもしれないし、なかったかもしれない。

とにかく、覚えていない。
つまり、やっぱり「あたりまえ」になってしまったから。

身体が大きくてボス的な「いかにも」な感じの「ジャイアン」(男子)もいたし、
動物系では「スッポン」や「かば」(いずれも女子)もいた。

「スッポン」よりは、いいかな。という感情は、たしかにあった記憶がある。
ちなみに彼女(スッポン)は、くっついたら離れない系女子(なんじゃそりゃ)であった。

そして、私を最後(中3)まで「牛」と呼び続けた一番の仲良しだった友達のアダ名は、「山さん」。

山が付く苗字だったからではあるが、出典は、レジェンドドラマ「太陽にほえろ」の、渋くて頼りがいのある刑事、露口茂さん演じる「山さん」だ(たぶん)。
「落としの山さん」、いつも落ち着いていて、渋くてカッコよかったなあ……

そして、彼女もまた「へ」同様、美少女だった。そしてモテた。
やっぱり、ギャップ萌えかな。

由来が人間なだけ私より全然マシやん、とも思う。

ほかには「豆(まめ)」とか「ヨーヨー」とかもいたなぁ、バラエティに富んでたなぁ……。まぁそれが日常だったんだなぁと、ほのぼのとした思い出にもなっている。

今の時代だったら、特に屁とかは(え、牛も?)、いじめだとか名誉棄損だとか問題になるのかな……なんて思ってしまうけど。

たくさんのアダ名が存在していたが、例のごとく、それぞれの名付け親は全く覚えていない。まぁ、そんなもんだろう。

以上、牛と呼ばれた女がふと思い出した、理不尽なアダ名にまつわる思い出です。

みなさんの小中学生時代にも、そんな思い出はありますか? 
あなたはなんと呼ばれていましたか?

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