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「赤ちゃんの鼻づまりはカゼですか?」

皆様こんにちは!今回のすぐナビ担当は、毎日かわいい赤ちゃんに癒やされている新生児科医の小西悠平です。

今回のすくナビは”教えて!近大先生~新生児編”です。小児科の外来でよくいただくご質問にお答えするシリーズです。

今回は1か月健診に来院した赤ちゃんのお母さんからのご質問です。

「鼻がつまるようで、よくフガフガいっているのですが、カゼをひいているのでしょうか?」


早速ですが、結論です。

「発熱がなく哺乳や呼吸に支障がなければ、様子をみていても大丈夫です!」

その理由を詳しく説明しますね。まず赤ちゃんの特徴を理解するとわかりやすいと思うので3つ紹介します。

・1つ目は、大人は口と鼻から空気を吸えますが、赤ちゃんは生後3ヵ月くらいまで口からは上手に吸えず、鼻での呼吸(鼻呼吸)が主体です!

・2つ目は、赤ちゃんの鼻の通り道は、元々狭く少しの鼻水でもつまったようになります。しかも、粘膜が刺激に敏感です!

・3つ目は、母乳やミルクを吸って、飲み込む運動を協調運動と言いますが、協調運動は生後2~3ヵ月頃に完成するので、一部の母乳やミルクがうまく胃の中に入らず、喉から鼻へ流れることがあります!

したがって、元々狭く、過敏な空気の通り道のため、空気が冷たかったり、乾燥したり、乳汁などの刺激により分泌物が増えると一時的にさらに鼻がつまり(鼻閉)、鼻呼吸が主体の赤ちゃんはフガフガいうことが増えるわけですね。
決してカゼやアレルギーではありません!成長とともに聞こえなくなるので安心して下さい!

でも、哺乳しにくそうなときや眠りにくそう、機嫌が悪そうなときは赤ちゃん用の鼻吸い器で吸ってあげるのも良いと思います。ドラッグストアや赤ちゃん用品店、もちろんネット通販でも手に入ります。

鼻吸い器

ただし、咳や熱がある場合や、次に述べる呼吸SOSのサインがある場合は病気のこともあるので医療機関を受診しましょう。ここからはもう少しお時間をいただいて「哺乳や呼吸の支障」について説明しますね。

赤ちゃんが頑張らなければうまく呼吸できない様子を努力呼吸といいますが、次のようなサインがある状態です。

・1つ目は多呼吸です。生後1か月までの赤ちゃんの呼吸回数は1分間に60回未満(おおよそ40~50回/分)が普通なので、静かに呼吸をしているのに60回以上が続く場合は多呼吸です。

・2つ目は鼻翼呼吸です。息を吸うときに鼻の穴が膨らむ呼吸です。

・3つ目は陥没呼吸です。息を吸う時に肋骨と肋骨の間(肋間)や、みぞおち付近がへこむ呼吸です。静かに呼吸をしているときに見られるのは要注意です。

これらは、赤ちゃんからのSOSサインのことがあるので覚えといて下さい!
これらの努力呼吸が強い場合は、呼吸するのに一生懸命で、哺乳どころではありません。医療機関へのゴーサインです。

また、鼻から喉頭(のど)までの空気の通り道を上気道といいますが、上気道に生まれつき狭い部分がある場合、例えば鼻腔狭窄【鼻の穴から奥までが極端に狭い】や後鼻孔狭窄【鼻の奥がのどにつながる部分が極端に狭い】などがある場合は常に鼻がフガフガ鳴って、呼吸や哺乳がうまくできない原因になります。健康な時はそれほど困らなくても、カゼで鼻水が出て余計に狭くなるとたちまち呼吸や哺乳ができなくなる赤ちゃんもいます。

その他にも、表のように上気道狭窄の原因はたくさんあるので、「鼻がフガフガいい、呼吸や哺乳に支障がある」場合は、レントゲンや耳鼻科の先生に内視鏡(ファイバースコープ)でのぞいてもらうなどして原因を詳しく調べなければならないことがあります。

この様な話を直接聞きたい、またはかかりつけの先生から専門医への受診をすすめられたという方は近畿大学病院小児科を受診してください。
また、このブログを読んだ感想などがあれば、コメントをいただければ「すくナビ」を続けていく上でとても参考になるので、どうぞよろしくお願いします。

参考文献  

1) 砂田 哲. 鼻づまり、喉のごろごろ with NEO 2019: vol.32 :812-817

2) 中村 英記. 努力呼吸・無呼吸 with NEO 2022: vol.35 :196-201

3) 長 和俊. 喘鳴.周産期の症候・診断・治療ナビ. 周産期医学2007:vol37:386

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