1, videoはとっくに終わっていた。 陽が斜めになっているから午後3時は過ぎているのだろう。 全部見た記憶はないが、彼に関する記憶は十分に蘇ってきた。 僕は確かに昨日送別会があり今は自由の身、ということになる。 自分の妻は随分前に亡くなってしまっていたから今はひとり、そういう意味でも自由だ。 "Photographer"のvideoを作った時に、彼が語っていた場所の説明を細かく書いていたNoteが残っていた。それは一つ一つの写真に対しての日にち・場所・時間帯が
1, 送別会が終わり僕はうちに帰ってすぐに"Photographer"のビデオを探し始めた。明日からはもう会社に行かなくて良いのだから何時まで探しても大丈夫なので、とっても気分は爽快だった。ビデオ類はほとんどが仕事の作品集で倉庫のどこかの段ボールに入れてあったと記憶していた。倉庫と言っても8畳くらいの広さで仕事の機材がほとんどを占領している。その機材が積み上がっている奥に作品集、と書かれたダンボールを見つけた。そのダンボールの数は約30箱、僕は一箱づつ、そうアルバムを見るよ
1, 2022年7月。僕の勤めていたstudioで送迎会が行われていた。 僕は65歳になっていた、自分の退職を祝ってくれている。 今の時代フリーランスのengineerが多い中、僕は一途に同じ会社にいた。 近年はもう現役のengineerではなく、資料整理とか他のengineerのスケジューリングが毎日を仕事で、いささか飽きていた。 還暦を機に会社はやめようと思ってはいたが、管理する人が足りずやむなく定年延長となった。 50歳を過ぎた頃、仕事が急激に少なくなってきた。まあ周り
1、 四国、足摺岬。 一人の男性がBikeの傍に佇んでいた。 ちょうど夕陽が観れる時間帯を知っているかのように、彼は、いた。 近寄って見ると彼のバイクはKAWASAKIと書いてあった。 2気筒のbikeは横から見ても前から見ても後ろから見てもバランスがとってもよく美しい。 彼はcameraを取り出してアングルを切り始めた。bikeを少し動かしては携帯を見ながら何かを確認しつう、cameraをのぞいていた。 カシャ、っと明らかにフィルムカメラのシャッター音が岬の波