遺伝子にはあらがえぬ
最近のわたしは母に似てきたと
よく言われる。
家族、親戚にも似てきたと言われるが、
お久しぶりの親戚なんかは
ふつうに見間違えるらしい。
声まで似てきたようで、
電話にでると母にかけてきた人が
内容を話し始めるので焦る。
自分ではあまりわからないけど、
みんながいうし、そうなんだろう。
ある時、仕事の取引先のパートさんに
お会いする機会があった。
もちろん初めましての女性。
母くらいの歳のようにみえる。
目があったとたんに「!?」という顔を
された。
「〇〇ちゃん(母の名前)のむすめさんじゃない?」
「え… はい。母の名前は〇〇ですが…。」
「やっぱり!旧姓□□さんよね!△△に住んでた!」
「そうです。どうして…」
「だーって!あなた瓜二つなんだもん!わたし同級生だったのよ。お母さん元気にしてる?」
戸惑うわたしをよそにパートの女性は
あまりにもハイテンションだった。
顔だけで身の上がバレたわたしは
どうリアクションとってよいのかもわからず、
失礼のないように軽い返事だけして
仕事にもどった。
似すぎているのを指摘されるのは
なんだか恥ずかしい。
実はこういうのが1回でもないのだ。
かなり顔バレする。
うっかりした事はできないぞ。
そんな事がありながらも、
わたしは母の純和製な優しいおっとり顔が
好きだ。
だから言われて悪い気はしない。
若い頃のわたしはもっとつり目だった。
少し気も強かった。化粧もがっつりしていた。
どちらかというと父方の叔母に似ていると言われ
とてもいやだったことがある。好きな叔母ではなかった。
そういう人柄が人相にでていると思っていたからだ。
若い頃、ギラギラしてたな。
根拠のない自信があった。
もっとなんでもできるって信じて疑わなかった。
この機能不全家族すら、どうにかしてやる。
若い勢いがそうさせていたんだろうなぁ。
でも、もがいても、戦っても、
何もよくならなかった。
世間の厳しさに打ちのめされたり、
命が去る時に何度か遭遇し、悲しんだり、
時間とともに癒したり、
そんなふうに過ごしている間に
ギラギラだったトゲが
ポロポロ取れたのかもしれない。
残ったのは遺伝子だったというわけだ。
わたしは母になら喜んで似るよ。
アル中で暴言ばかりの父のフォローも
ダウン症の弟のケアも
メンタル虚弱のわたしの愚痴も
摂食障害に近いほど食が細い妹の悩みも
ぜーんぶ請負っている本当の意味で強い人。
わたしは母のようになりたい。
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