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【オススメノベル】傍観者の恋【コミカライズあり】

原作 ナツ
コミカライズ 吉田 了

コメディでファンタジーで両片思いものが大好物のわたし。

そんな自分ですが、この傍観者の恋は、コメディでもファンタジーでもない両片思いものです。


あらすじ

とある大きな商会長の娘レイチェルは、隣人の病弱な、余命幾ばくもないが明るく美しい親友アリシアを大切に思っている。そしてその弟、ノアに恋心を抱いている。
そのノアは許されないと知りながら実の姉アリシアを愛していた。
そんなノアの気持ちを知り、それでも恋し続けることの喜びと残酷さを交互に味わいながらレイチェルはその家族の善き隣人、あるいは親友として関係を築いてきた。
ある時、レイチェルの父が自分の部下の男性とレイチェルの縁談を用意し、新居用を兼ねた新事業所の管理者を置くため保養地に買った屋敷に、アリシアも招き同居したらどうかという話が持ち上がる。その話を、同じく父の会社で働くノアから聞くレイチェル。
だったらノアと結婚する、仮初めの夫婦として。それならば全部うまく行く。ノアもアリシアと離れずに過ごせる。ノアもレイチェルの父の会社で働いているから仕事もある。
自分の気持ちだけをこれまで同様に隠し犠牲にすればーー。

傍観者の恋

苦しい恋心を押し殺し、気丈に振る舞い続けるレイチェル。日に日に弱る親友アリシア。
アリシアを愛しみながらレイチェルを大切にしてくれるノアに、時々どうしようもなく感情がはじけてノアを遠ざけるようなこと言ってしまう。これ以上好きになりたくない、惨めになりたくない。黒い感情にのみ込まれたくないーー。
アリシアを大好きな感情が痛いくらいに揺れる。

これがコメディだったらよかった。いや、しかし実のところ、アリシアもオースティン(ノアとアリシアの兄。タラシ。人をからかって試す)も陽の人で、その母も大いなる陽の人だ。
レイチェルも本来なら陽の子なのに、アリシアが向かいゆく「死」にあてられ、からめとられていく。

そんな様子がリズムよく叙情詩のように語られるものだから、少しダークな作品でありながらスルスルと読めてしまった。
そして多分ティッシュ一箱は使ったんじゃないかと思うほどに泣いた。

やっぱりノアの兄、オースティンが好きだ。
主人公レイチェルの「隠したいノアへの気持ち」に気付いており、またノアの自覚ない頃からレイチェルへの恋心にも気付いていると思われるため、ふたりをからかうのだが、レイチェルからしたら悪魔にしか見えない。
オースティンはアリシアやノアと同じく、レイチェルのことずっと好きだったんだよきっと、とか妄想し出すと止まりません。

軽薄チャラ系たれ目デキル男が本命と結ばれず読者愛を注がれるやつ。。
これ、どこが初出だろうと考えると、「ッポイ!」の万里かなあ?
「フルーツ果汁100%」のなっちゃんもそうかな。。「BASARA」の揚羽も。。

悲しすぎるシーンはあっさりと書かれているのも良い。あそこを掘り下げてくれたらヤバかった。病んじゃう。

レイチェルの日記を読んでいるような小説。
とても素晴らしい作品だと思う。
カンカンに明るくはないが、日溜まりのような温かさがそこここにあって、辛く引きずるタイプの物語でありながらそうさせないところも、作者の腕が魅せるさじ加減だなと思います。

コミカライズでもその叙情詩ぽいところも周到しつつ、明るいところは明るく描かれていて読みやすい。

どうしても暗く辛い話は引きずってしまって読む気になれないのだけど、この作品はちょうどよい塩梅。
ただ叶わない片思いに病んでいる人は避けた方がいいかも。悩んでいるくらいなら大丈夫。
レイチェルの自己犠牲モノローグは結構くる。

だからほんとは、似た者同士のノアより、オースティンとがお似合いだと思う。考えすぎるとぐんぐん深みに嵌まるレイチェルと、あっけらかんと引っ張ってくれそうなオースティン。
でもオースティンは、両想いな弟とレイチェル、そのふたりを引き離して自分が恋を叶えるより、大事なふたりを早くくっつけさせて、レイチェルを諦めたかったのかなと。
オースティンも叶わない恋を隠していたんじゃないかな。
本当の傍観者の恋とはオースティンなんじゃないかと。
泣けますな。

是非、オースティンのレイチェルからの嫌われぶりを確認してみてください!
いやいやオースティンはただの悪魔。
そんな声がレイチェルから聞こえてきそう。


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おじゅ
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