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「おおかみが眠るとき」

深い深い森の奥におおかみはひとりで暮らしています。
今日の夜もいつもの森の見回りをします。おおかみはひとりでこの森の安全を守っています。この森には足を怪我した子鹿や、心が風邪をひいてしまって悲しくて涙がとまらない猫など、みんな病気の動物たちがひっそりと暮らしています。
おおかみはそんな傷ついた仲間たちをまもるために、いつも夜は特に見回りをしっかりとして、みんなが安心して眠れるように、夜の間ずっと起きていて、森を守っています。
あるとき、心が傷ついた猫がいいました。
「おおかみさんは、いつ眠るの?」
するとおおかみは「僕はこの森のみんなが安心して眠れるようになったら眠るさ。だからしんぱいしてくていいんだよ。安心してぐっすり眠るんだよ」
心が傷ついた猫は、「うん、わかったよ。おやすみなさい」といって自分の家へ帰っていきました。
おおかみは今日も森を見守ります。
すると急に足音が聞こえてきました。おおかみは戦いの姿勢をとりました。
悪さをすることで有名な猿のコニーがやってきました。猿のコニーはここに病気の動物しかいないことを聞きつけて、みんなの大事なものを奪ってやろうと森へ入ろうとしました。
おおかみは「この森へは一歩も入らせない。仲間をきずつけるやつはゆるさない」と強い口調でいいました。
すると。猿のコニーは怒って、おおかみをひっかきおおかみを傷つけました。おおかみはやり返しません。猿のコニーは「かかってこいよ。みんなを守りたいんだろ」
するとおおかみは「おれは誰のことも傷つけない。君も仲間だからだよ」と優しく言いました。
猿のコニーが悪さをするのは、実は仲間がいなくてひとりぼっちで、寂しかったからでした。
猿のコニーは「俺には仲間なんていないんだ。誰も俺のことを好きじゃない」といいました。
おおかみはなだめるように「ほら、君は心が傷ついてる。誰もコニーのことが好きじゃないって思うのは病気だからなんだ」
「大丈夫。こっちへおいで。君にはこの森での治療が必要だ」
おおかみはそっとコニーを抱きしめました。コニーはこっそりと涙を流していました。
やっと自分の気持ちに素直になれました。寂しかったんだと気がついておおかみに聞きました・「この森のみんなは僕のことがきらいじゃないの」といいまいた。
おおかみは優しく「じゃあ、みんながいる森の広場へ行こう」
でも、コニーは「ぼくが行ったら、みんなが逃げてしまうよ」おおかみは「そんなのわからないだろう。さあ、いってみよう」
コニーはおおかみに隠れながら、恐る恐るみんながいる森の広場へと進みました。
みんながたき火を囲んで集まっていました。
おおかみは「みんな、猿のコニーがきてくれたよ」と大きな声でいうと、みんなが一斉にコニーをみました。そしてみんな口々に「こっちへおいでよ」「ここはあたたかいよ」「あたたかいミルクがあるから飲むといいよ」と。
誰も嫌な顔をしたり、怖がったりしませんでした。
みんなでたき火を囲んで、あたたかいミルクを飲んで過ごしました。コニーにとって初めて仲間のあたたかさを知った夜でした。
その夜、おおかみは森の安全をもう一度確認して、みんながたき火を囲む幸せな姿を思い浮かべながら眠りつきました。明日みんなの笑顔にあえることを信じて。

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