映画のある日曜日

 休日の朝だからといって、悠然として緩慢な時間を過ごすことは許されていない私は、午前六時半から作業を開始した。
 まずは自室の掃除。国内、海外文学の単行本が並べられたメインの本棚の埃をマイクロファイバー的なハンディモップで取り去る。一週間に一度は行っているので、ほぼ綺麗だが、これを一カ月に一度にしたら確実に忘れる。ただでさえ、背板がないタイプ、放っておけば間違いなくエグイことになる。面倒だが、始まってしまえば本の配置の良し悪しを考え、我ながら素晴らしいラインナップだと楽しくなっていく。その調子でトイレ掃除を終わらせ、手洗い、歯磨き、ドライヤーの準備(別の場所にある為、いちいちビニール袋から出す)をして屋外作業用のズボンを履く。さらに作業用のシャツ、キャップを被りいざ草枝刈り、午前7時。
 不思議な事に細かな枝がところどころに散乱している。冬によくあるような気がする。調べる気はしないがおそらく、弱い箇所が風や野鳥の発着によって折れ、落下したのだろう。それらを拾い、寒冷の為あまり伸びていない草を刈り、夏よりは楽とはいえ約40分をかけて終了した。
 これらの作業さえなければ、優雅な日曜日の朝を過ごせるというのに。
 好き好んで植えた柿や梅の木は伐採、または枯れて消え、知りもしない間に成長した雑木が伸び伸びとしてやがる。
 そして時間がない。
 さっさと洗髪し、パソコンの検索履歴や不要ファイルの削除、数年前に買ったオフホワイトのジップパーカーに着替えて家をでる。
 クソ寒い。
 映画を観に品川へ、その帰り丸善・丸の内本店に寄る。
 バスに揺られ駅。
 朝食は東京へ行く際は恒例となった駅ソバで済ます。
 わかめ蕎麦の麺特盛700円。結局はこういったド定番が一番よいのだ。洒落て高額な意識高めのランチの半値以下で、間違いない鰹節と醤油、ツルリとした麺。体は温まり、総武快速に乗って約30分、チケット発券期限の45分前の10時15分に到着する。
 品川駅はどこか空港のような雰囲気があり、高輪口のハイクラス感、品川プリンスホテルの坂を登ると「T・ジョイ PRINCE 品川」がある。
 此処周辺はベンチや椅子が少ない。
 田町駅周辺とは大違いである。
 まだまだ腹は減っているので、セブンイレブンでオニギリを3個と緑茶を買う。屋外の寒々としたベンチでランチとす。
 それはそうと本日の映画は、
『トワイライト・ウォーリアーズ 決戦!九龍城砦』です。
 ちなみにパンフレットはクリアファイル付きで1300円と少々高額。
 それでは、あらすじ。

【Story】
九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい)――かつて無数の黒社会が野望を燃やし、覇権を争っていた。
80年代、香港へ密入国した若者、陳洛軍(チャン・ロッグワン)は、黒社会の掟に逆らったことで組織を追われ、運命に導かれるように九龍城砦へ逃げ込む。
そこで住民たちに受け入れられ、絆を深めながら仲間と出会い、友情を育んでいく。
やがて、九龍城砦を巻き込んだ争いが激化する中、陳洛軍たちはそれぞれの信念を胸に、命を懸けた最後の戦いに挑む――。
【Cast】
ルイス・クー、サモ・ハン、リッチー・レン、レイモンド・ラム、フィリップ・ン
【Staff】
監督:ソイ・チェン
アクション監督:谷垣健治
音楽:川井憲次

 超弩級の娯楽アクション大作。昔懐かしいカンフーアクションと現代アクションの融合は懐かしくも斬新で、血沸き肉躍る圧倒的熱狂。九龍城砦を日本円で約10億円をかけたセット、神がかり的に細微に至る美術で再現。
 シンプルなストーリーでありながら、違法建築の塊で香港のエアーポケットでカオス、人々の暮らし息づく重厚さは必見です。
 予備知識なしで楽しめる、早くも2025年ベスト級。
 予定にはなかった今回の鑑賞、間違いなく観てよかった。香港映画の新たな傑作、名作を目撃できて至福眼福です。
 鑑賞が終われば品川に用はない。
 とっとと丸善・丸の内本店へ移動である。
 東京駅とある印象を受ける。
 まるで、由緒ある名家の豪邸にやってきたような印象を受ける。荘厳と言ったら言い過ぎだが、やはり、東京駅は別格である。
 勝手知ったる丸善へいざ突入。
 検索機で、ひびこうじの『地中人クローデル族』を探したが、ない。その後ネットで検索してもAmazonにもない。そもそもその存在を、どうやって知ったのかも思い出せない。
 マイナー過ぎたか。
 その後、約1時間をかけ、いつもの通り5冊を選書。
 講談社文芸文庫コーナ―の前で立ち読みしてやがった初老のオッサンに苛々しながらも、颯爽と会計を済ませ(11,412円)て帰路につく。
 こうして「映画のある日曜日」が過ぎ去った。
 帰宅後、久しぶりにジェイソンマークというスニーカー用の洗浄剤で、シュプリーム・ナイキコラボのエアフォース1(白)を洗浄。買ってきた書籍を本棚に収め、シャワーと入浴を済ませこの記事を書いている。
 現在、迫りくる月曜日と空腹の狭間にある。
 そして、本日も鍋は喰えない。
 何故なら、昨日の酒のアテ、鶏の唐揚げがしこたま残っているからだ。つまみを買いすぎる癖を改善しなくては、永遠に鍋を喰えそうにない。
 仕方ない。これも定め(運命)。
 飯と、読書と、ネットサーフィンで日曜日の夜は更けていくだろう。
 明日は仕事といっても、翌日は祝日で幾らか気は楽。
 少しは余裕をもって、束の間の休息に浸ることにする。
 
 
 
 

 
 
 
 
 

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