私の野球人生⑥「コロンビアでの生活」
文化の違い
なんとかコロンビアに到着した私たちは、これから3ヶ月間住むアパートへ向かった。コロンビアの選手以外は皆同じアパートに住み、メキシコやドミニカの選手、中にはアメリカのマイナーリーグ3Aでプレーしている選手もいた。日本人の私たち3人は同じ部屋に割り当てられ、3ヶ月間共に暮らすことになった。野球よりも、この共同生活が大変だったかもしれない。
予定より1日遅れで到着した私たちは、アパートに荷物を置くや否や、すでにチーム練習が始まっている球場へ向かった。しかし、コロンビアの選手たちはあまり歓迎ムードではなく、冷たい視線を感じながらチームメイトに挨拶を済ませ、軽く体を動かしてその日は終わった。夜は治安が良くないため、あまり外出しない方が良いと言われていたこともあり、その日はアパートに戻ったのがもう夜で、ご飯を買いに行くこともできず、簡単に荷物を片付け、疲れた私たちはそのまま眠りについた。
翌日は遠征で朝8時に迎えが来ると聞いていたため、準備をして部屋で待っていたが、いつまでたっても迎えが来ない。不安になり、他の外国人選手の部屋に行くと、「コロンビアでは時間通りに迎えが来ることはまずない」と言われ、皆まだ準備もしていなかった。結局、10時にようやく迎えが来て、前日から何も食べていなかった私たちは、ようやく朝食を買い、遠征先に向かうバスに乗り込んだ。しかし、そのバスもなかなか出発せず、全員が揃ってようやく出発したのは12時を過ぎた頃だった。初めから12時集合にしてくれればよかったのに、と思いながらも、初日から文化の違いを痛感させられた。
そして、舗装がほとんどされていない道を10時間も移動することになった。途中で食事のために一人1500ペソ(日本円で約750円)のミールマネーが渡され、見たこともない食べ物を口にした。調理された肉は真っ黒に汚れた手で扱われ、ハエがたかり、痩せ細った犬やカラスが周囲で食事を狙っている。コロンビアの食事に慣れるのには時間がかかった。
最も困ったのはトイレ事情だ。便座はなく、トイレットペーパーも有料。使用済みの紙は流さず、設置されている箱に捨てなければならない。紙を流してしまうとすぐに詰まってしまい、多くのトイレが頻繁に詰まっていた。私は食事をするとすぐにトイレに行きたくなる体質だったため、このトイレ事情は大きな悩みだった。
ようやく球場に到着すると、日本のようなロッカーはなく、地面に道具を置き、バスタオルを敷いてその上に座るという状態だった。日本の独立リーグの球場も狭かったり不便な面はあるが、コロンビアと比べると日本の環境は恵まれていると感じた。
さらに厄介だったのが「蚊」だ。初日の練習でもそうだったが、肌を露出すると数十箇所刺されてしまう。チームメイトが持っていたモスキートスプレーを借り、その日はなんとか凌いだが、これで持ち歩かないといけない物がわかった。それはトイレットペーパーとモスキートスプレー。この二つは欠かせない必需品だった。
最後に大変だったのは、シャワーからお湯が出ないことだ。シャワーヘッドもなく、蛇口のような所から最初に錆びた色の水が出て、少し経つとややマシな色になるが、それでも濁った水が流れてくる。コロンビアは基本的に暑い気候なので水で体を洗えないことはないが、日本に帰ってきた時には、きれいなお湯で体を洗い、湯船に浸かることが本当に幸せだと感じた。
続く:私の野球人生⑦「コロンビアの野球」