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ここは全て一つの世界、魂とも言える世界、認識は部分的抜粋に過ぎず。そんな部分的抜粋に自己とやらを委ねてみる。
その前にここに戻る準備でも、
推理作家のお屋敷にて、、
「奥様、このお屋敷内の何処にも手掛かりはありませんね。やはり残るは離れの御主人の書斎です。自分は探偵と言う仕事上クライアントの秘密は厳守致しますので、出来ましたら奥様ですら踏み込んだ事のない書斎を調べさせて頂きたいのです。一週間以上も御主人の行方が分からないのです。通常では警察沙汰となってもおかしくないのです、警察は容赦なく書斎に踏み込んで手掛かりになりそうな物を署まで持って行く事でしょう、そして騒ぎを嗅ぎつけたマスコミが動き出します。大のマスコミ嫌いの御主人のとこです、そんな事態になってしまっては戻る気も削がれてしまうのは必定です。ここでいかがでしょう、私立探偵の私だけにでも書斎を調べさせては頂けませんでしょうか。当然見たものは口外せず、動かした物は1ミリのずれもなく元に戻します。はい、そーですか、助かります、では参りましょう。それにしても奥様に合鍵も預けないとは余程この書斎は御主人にとって特別な場所なのでしょうね。では持参した解錠器具を使わせて頂きます、、あれ、空いてますね、どう言う事でしょう?では失礼して、流石推理作家の巨匠、物凄い書籍の量だ、しかも一見無関係に見える数学、物理学、化学、医学に至るまで、ここはまるで図書館ですな、おや、机の上になにやら、これは描きかけの原稿ですかね、メモにも見える。それとこれはゲーム用のゴーグルでしょうか?何故か二つありますねえ。あれ、更に写真が2枚、これはNASAからの画像ですかね、一つは銀河団の写真、もう一つは、ほー、脳細胞の写真ですね、しかし良く似ている。メモも拝見させていただきます。読ませていただきましょう。『宇宙は一人の人間の脳であるとされる説が出て来て当然だ、しかし虚数的解釈も可能である』
「御主人は何やら宇宙論に興味がお有りな様ですな、しかしこの変わったイラスト、大きな脳の絵に100%と書いていその下に数多の人間の首から下がぶら下がってます。続けて読んでいきます。」
『一人の人間と言うがそうではない、全ての脳だ、数の問題ではない、脳の事だ、我々は宇宙は脳であるとまでの極論から始めるべきなのだ、』
「あら又変わったことを、続けます。」
『死は錯覚の証明、この世界的には数多の世界がある、簡単に考えてみよう。一つは自分が生きている世界二つ目は自分が死んでしまった後の世界三つ目は自分が産まれてないつまり存在していない世界。四つ目は自分が産まれる前の世界少なくとも四つの世界が同時進行している。通常自分の脳を10%も使っていない場合は一つ目の世界しか分からないものだ、もっと脳を開けば多くの世界に同時に居る事ができる筈だ。不思議に思うかも知れないが、私が居ない世界にも私は居る事が出来る訳だ。正に生と死の一体化だ。もし100%脳を使うと全てになる、一つになる、元来の世界、宇宙となる。いや、既になっているのだ。』
「この原稿には自分が居ない世界に身を置く事が出来ると書いてますね、もしかしたら行方不明である事と何やら関係があるのかも知れません。待って下さい、これは推理作家である御主人が自己の小説が如く作り上げたゲームの様な気がしませんか?何故か謎解きをやっている様な、そうでなければ今我々が居る世界は御主人が作り上げた何かなのか、ゲームの中なのか、そしてこの机の上のゴーグルは何なのか、着けてみないと分かりませんね、もしかしたら我々は過去に何らかのゲームに参加しているだけなのかも知れません、もしここから出られたなら何の変哲も無いいつもの生活に戻れるのかも知れません、そして御主人の失踪騒ぎも無いのかも知れませんね、奥様、是非このゴーグルを付けてみて頂けませんか?これでご主人に会えるでしょう。」
ゲームオーバー
「やはり僕を見つけられなかった様だね。
それも当然さ、ずーっと君の背後に居るようにプログラムを組んだのだからね。
一番近くにいて一番遠いのは自分の背後って事だね。」
「そーね、それは見つけられっこないわね。あなたが用意した私立探偵のアバターも意味を成さなかったって訳ね。」
「何だって?そんなアバター作った覚えがないなあ、
もしかして我々ゲームクリエイター仲間で今話題になったいるゴーストアバターと言うやつかもしれないね。
総体とも呼んでいる奴もいるんだ。」
「総体?私立探偵が?」
「これは実に矛盾かもしれないけどね、僕でもあり君でもあり全ての人間でもあり生き物でもあり、つまり全宇宙って事かな。
その私立探偵の容姿を覚えてるかい?」
「それが全く特徴が無いと言うかメガネをしてたかしてなかったか、下手すれば性別まで覚えてないのよね。」
「そうだろうね、総体は何にでもなれるからね。」
「そー言えばゲームの御屋敷内のあなたの書斎に入ったのだけれど、」
「おいおい、書斎なんてプログラムしてないよ。本当にこれはどういうことなのだろう?」
「知らないわよ、しかもあなた書斎を私にまで立入禁止にしていたわよ、でもドアの鍵は空いていたけどね、
机には奇妙な絵と写真が二枚そしてゲーム用のゴーグルがあったわ、
そしてその私立探偵さん、これがゲームの中だと気づいたみたいね、
行方不明のあなたに会いたければこのゴーグルを付けてゲームオーバーにするようにと言われたわ。」
「それでなのか、僕がマシンでゲームオーバーにする前に君が既にゴーグルを外していたのは。」
「でもオカシイと思わない?何故ゲームオーバーの為に逆にゴーグルを付けたのかしら?」
「そこなんだけど、つまりは君がゴーグルをゲーム内で装着してここに戻ってきた事を考えると、
戻ってきた今のこの世界もゲームってことになるよね。つまり2つのゲームを行き来しているのだろうか?
これは僕が君の背後にいつでも居る言わば表裏一体の状態をゲームで展開したことでとある総体がやってきて何かを伝えたのかもしれないね。」
「でも総体なる探偵さんはゲームだと気づくまで試行錯誤していたわよ。」
「さっきも言ったように総体とは君でもあり僕でもあり全生物でもあり全宇宙でもあるのだから
探偵さんだって我々と同じで何らかの形で抜粋された狭い空間に置かれたのだろうね。
しかし総体に戻る為に何らかの保険をかけている筈だ、その書斎とやらの事をもっとききたいね。」
「まるで図書館だった、限りなく広くってね、机の上にさっきも言ったように奇妙な絵と写真とメモがあったわ、」
「君の言う限りなく広い図書館はアーカシックレコードってやつかも知れないね、つまり宇宙の全情報が詰まってるって代物だ。
多分総体が用意したのだろうね、で机にあった絵と写真とメモだけど、」
「よく似た二枚の写真で一枚は宇宙の銀河団、もう一枚は人間の脳細胞の写真、ホントによく似ていたわね、」
「成程、この全宇宙は誰かの脳の中である、みたいな極端な説もあるからね。後全宇宙はゲームのなかであると言う説だ。
つまり全宇宙は何者かが作ったゲームで我々はアバターである。しかも増殖機能付きのね。で、奇妙な絵ってのは?」
「大きな脳の絵に100%と書かれていてその下に沢山の頭から下の人間がぶら下がるみたいにくっついていたわね。」
「脳を100%使えると全宇宙になり全てが一つになるみたいな事かな。何処にでも行けて何でも出来るみたいなね。」
「そー、自分が存在していない世界にも行けるとか、矛盾した文章もあったわね。」
「やはり総体が自分で用意したのだろうね。」
「ねえ、もう一度このゲームに潜っても良いかしら?探偵さんに会ってみようかな。」
「多分もういないんじゃないかな、でも君が潜りたいならどうぞ。」
彼女はゴーグルを装着した。
その時ドアのベルが鳴った。
出てみると以前注文した新しいマシンが届いた様だ。
しかし私にはこの新しいマシンで面白いゲームを作ろうとかいう気は完全に失せていた。
総てランダムにしかもAI任せでランダムのジューサーミキサーの様な出鱈目かつ不可解なゲームとは言えない何かを私は求めていた。
そしてそこに潜ってみて如何なる結末がやって来るのかが知りたかった。
『AIの所有する全ての情報、物体、物語、現象をごちゃ混ぜにした世界』
早速私はゴーグルを装着した。
「雀の形をしたビル、コタツが逆さまにパチンコを打つ、裏返したやかんの蓋に佇む海辺、、これ等がヘルメットの中で闘っている。、、」
私はみたことの無い異様な風景に喜びすら覚えた。
「さあもともっとランダムに、気が狂う程異様に、笑い死ぬ程滑稽に、巨大に、、、」
やがて私は真白になった。
ここは全て一つの世界、魂とも言える世界、認識は部分的抜粋に過ぎず。そんな部分的抜粋に自己とやらを委ねてみる。
その前にここに戻る準備でも、
私は私立探偵になっていた。
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