「動物病院四方山話」36(それ、ちょっと間違ってる!?)
私の名前は「みぃ」
動物病院で暮らしている猫
私が経験した動物病院での四方山話を紹介しています
前回の動物病院四方山話はこちら
ガルルルルル・・・
待合室から怖い声が聞こえてきた。
何よ、なに!?
誰かが唸り声をあげているわ!
それも大きなワンちゃんの唸り声だわ。
その子は誰を威嚇しているのかしら?
誰かがその子を怖がらせたり、悪いことでもしたの?
跳びかかったりして、取っ組み合いの喧嘩になったりしない?
飼い主さん、しっかりリードを持ってくれている?
大型犬が暴れて大乱闘!、なんてことになったら大変よ!
「あはははは、ジェニー君、『喜び方』を間違ってるよ~。」
んっ!?一平ちゃんの声だわ。
なに呑気なこと言ってるのよ!
えっ!?ちょっと待って・・・
『喜び方』って、どういう事なの?
「そうなんですよー。」
「この子ったらいつもこうなので、みんなに怖がられるんですよ。」
「本人は喜んでるんですけどねぇ。」
えっ!?
飼い主さんまで。
『喜んでる』ですって??
ウソ!、あの声は完全に唸り声よ!
「どうして『喜んだ時に唸る』んでしょうね、ジェニー君は。」
一平ちゃんも不思議そうに、また笑ってるわ。
ジェニー君は、バーニーズマウンテンドッグの男の子。
体重が45キロもある大きな子なの。
その子が待合室でお腹を出してしっぽを振っている。
お腹をなでてもらって気持ちよさそう。
なのに、
ガルルルルル・・・
って唸り続けているのよ!
実は、唸り声を出すのって、ジェニーくんの
『嬉しい時の表現方法』
らしいの。
それって私達ネコがノドをゴロゴロ鳴らすのと同じってことなのかしら?
でも、その事を知らない人はびっくりするわよね。
いくらシッポをフリフリしてくれているからっていっても、大型犬の子に唸られると怖いわよねぇ。
実はね、嬉しい時に唸ってしまう子はそんなに珍しいことではないらしいの。
確かに、お腹を出して怒る子っていないわよね。
ジェニー君の話は少し前の事なんだけど、最近も同じような事があったの。
秋田犬の善(ぜん)ちゃん、
この子も30キロ以上ある男の子。
この子はお腹は出さないけど、撫でてもらうとしっぽをフリフリ
ガルルルルルル・・・
ウソでしょ!?
善ちゃんも嬉しい時に唸るの?
ジェニー君の事があったから私達はもう驚かないけど。
善ちゃんは子犬の時から病院に来てくれていたから、善ちゃんの性格をスタッフは良く分かっているの。
子犬の頃からずっといい子。
でもね、子犬の時は嬉しい時に唸ったりしなかったわよ。
いつから嬉しい時に唸るようになったのかしら?
おうちの人は気にもしておられなかったから、いつからかは分からないんだって。
それどころか、他の人に指摘されるまでは唸っているという認識が無かったみたい。
本当に猫達がノドを鳴らすのと同じ感覚でとらえておられたみたいなのよ。
そう言われてみれば、本気で唸る時の『ガルルルル・・・』よりも少し優しめの『ガルルルル・・・』のようにも聞こえなくもないかも。
でも、やっぱり大型のワンちゃんが唸ると、知らない人は怖いわよねぇ。
あっ、でも気を付けてね、秋田犬に限らず日本犬の子たちの中には寡黙な子もいるから。
『私はおうちのご主人様にしか仕えません!』
ってタイプの子たち。
そういう子たちの中には、知らない人にあまり近づいて欲しくない、っていう子もいるの。
近づいて欲しくない時には、
本気で唸ったり、
耳を伏せたり、
こわーい顔で牙をむいたり、
それなりの合図を出してくれる子がほとんどなんだけどね。
だからそういう時は近づかないように気を付けてね。
でもね、特に日本犬の中には警戒していても全く表情を変えない子もいるから用心しないといけないわよ。
ヒトにもパーソナルスペースがあるように、ワンちゃんにも
「これ以上近づかないで!」
っていう距離があるの。
その距離よりも近くに行った瞬間に、何の前触れもなく、
ガブッ
って咬みつく子もいるから。
可愛いからって道で出会った子をむやみやたらに撫でたりせずに、必ず飼い主さんに確認してみてね。
「撫でてもいいですか?」
って。
ワンちゃん達の中には怖がりな性格の子もいるから、飼い主さんにお聞きしてお互いを尊重し合いましょうね。
おわり