「動物病院四方山話」15（嬉し恥ずかし）
私の名前は「みぃ」
動物病院で暮らしている猫
私が経験した動物病院での四方山話を紹介しています
前回の動物病院四方山話はこちら
お母さんと、女の子。
いつも一緒にトイ・プードルのプー太くんを連れて来られるの。
最初に来られたのは、プー太くんが女の子のおうちの一員になってから1週間後くらいかな。
2回目のワクチンをうつために来院されたの。
とっても人懐っこいプー太くん。
お母さんの手を握って一緒に診察室に入って来た女の子。
その女の子は動物病院は初めてらしく、興味津々だったわ。
お母さんを見上げて、ニコニコと何だか嬉しそう。
プー太くんは診察台の上に乗ってもしっぽをフリフリ。
全く怖がらないのね。
動物病院は、注射をしたり体を触りまくられたりするので怖がる子も多いのにね。
一平ちゃんもなるべく怖い思いをしてほしくないから、一応工夫はしているのよ。
ミルク味のビスケットを診察室に常備しているの。
人用のじゃないわよ、ワンちゃん用のやつをね。
プー太くんもそのビスケットに興味津々だったわ。
クンクン匂って、ぺろぺろと舐めてたわ。
「これって、食べ物？」
「なかなか美味しいんじゃない？」
なんて思ってたかどうかは分からないけど・・・
ビスケットは、小指の爪よりも小さく割ってあるの。
ワンちゃんって丸の飲みする子が多いから、大きさってあんまり気にしてないみたいよ。
小さくても何回ももらえる方が嬉しいんだって。
一平ちゃんは、お母さんにビスケットを三個ほど渡し、
「ワクチンの注射をする時にプー太くんにカジカジしてもらっていてもいいですか？」
ってお願いしていた。
思惑通り、プー太くんがビスケットに集中している間にワクチン接種終了！！
プー太くんは注射には全く気付かなかったみたいよ。
作戦成功ね。
その様子を興味津々に見ていた女の子。
「プー太くん、注射の時に鳴かなかったねぇ。」
「おりこうさんにしてたご褒美に、もう一つビスケットをあげてくれる？」
と言って、一平ちゃんがビスケットを女の子に手渡した。
ちょっと照れながら嬉しそうな女の子。
「はい、どうぞ」
って言って、プー太君にビスケットをあげていたわ。
もらったプー太くんも嬉しそう。
＊ ＊ ＊
月日は早いもので、あれからどれくらい経ったのかしら。
小さかった女の子も、もう小学校の高学年。
今もお母さんと一緒に動物病院に来てくれているわ。
プー太くんも今でも動物病院が大好きでいてくれているみたいよ。
診察台の上でも全然怖がらず、注射をしてもずっとシッポをフリフリしてくれている。
一平ちゃんの病院は小さな動物病院なので、他の患者さんがいない時はプー太くんは病院の中を走り回って遊んでから帰っていくの。
そんなある日、プー太くんが病院で遊んでいた時に、
「ここの病院に来ると、私が癒されるんですよ。」
ふと、お母さんがおっしゃったの。
「えっ？」
って一平ちゃんが聞き返すと、
「ここに来て、プー太が喜ぶ姿を見たり、先生や看護師さんと一緒にこうやって時間を過ごしておしゃべりしてると、私が癒されるんですよ。」
と言ってくださったの。
そんなことを言っていただいたのは初めてだったので、少し驚いたのと同時にとても感激していたみたいよ、一平ちゃんったら。
それにちょっと照れていたみたい。
さらに、娘さんについても意外なことをおっしゃったの。
「この子もね、病院に来るのが大好きなんですよ。」
「ここの動物病院の匂いが大好きみたいなんです。」
「えっ、そうなんですか？」
って一平ちゃんは、またまた驚いていたわ。
「小さい頃からこの病院の匂いが好きで、プー太を連れてくる時は、必ず私も行くって言うんですよ。」
「消毒の匂いとかで病院の匂いが嫌い、っていう話は聞きますけど、病院の匂いが好きだっていうのは初めて聞きました。」
一平ちゃんはとても意外そうだったわ。
だけど、嬉しそうでもあったわ。
そんなやり取りの最中も、女の子は病院の中で楽しそうにしているプー太くんを見て、嬉しそうにニコニコしていたわ。
何だか嬉し恥ずかしで心温まるエピソードね。
＊ ＊ ＊
里塚はこの時「癒される」とおっしゃっていただいて、とてもうれしく思った事を思い出します。
女の子も可愛いですね。
私としてはその逆なんです。
病院に来てくれる動物たちと触れ合う事で、私やスタッフのほうが癒してもらっているのです。
病院が好きな子達だと、一緒になって楽しい気分にさせていただけますし、
病院が苦手な子は、
「ごめんねー」
「もうすぐ終わるからねー」
「終わったよ、頑張ったね」
と、心の中で応援している自分がいたりして・・・。
（動物たちにとって、注射したり嫌なことをしている自分が言うのも何ですけどねぇ・・・）
おわり