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「みぃ物語」#08(動物病院での新生活 #03終)

前回はこちら

 看護師さんが私のケージをのぞき込み、そっとケージを開けた。私はできるだけケージの扉から離れるように奥の方に後ずさりをした。看護師さんは私をのぞき込んで、

「大丈夫よ。」

 と言ってそーっと手を入れてきた。

 緊張したらいつもそうなってしまうのだけど、私はカチカチに固まって動けなかった。こんな時、果敢に猫パンチを繰り出して攻撃できるといいんだけど、私って固まって手も足も出せないタイプなのよね。

 それを見透かされたかのように、看護師さんは私の両脇に手を入れて、私を引きずり出そうとしてきた。私もできる限り抵抗しようと思ったわ。必死で爪をケージの凸凹に引っ掛けて引きずり出されないようにしたの。
 でも、そう、私の爪はお姉さんにいつも切られて短くなっていたので、凸凹に引っかからずにズルズルーとケージから出されてしまったの。

 ケージの中だと、まだすみっこに隠れていられたので守られている感じだったけど、診察台の上に出されたら隠れるところも無くなり、ますます緊張してきた。そして、さらに体がこわばってきた。

 診察台の上で固まっていると、看護師さんが私をつかんでいる手をそっと放した。そしたら、診察台から「ピッ」と音がした。何?と思ったら、看護師さんが、

「3.5キロです。」

 と獣医さんに伝えた。そう、私の体重。この机って体重も測れるの?なんて少しびっくりしちゃった。

えっ、この子が3.5kg!?

 緊張してるのに、そんなことを考えていると、獣医さんが私の体を触りだした。

 何、何?って思ってると耳を触られたりお腹をぐりぐりもまれたり、変な硬いものを胸やわき腹にあてられたりした。聴診器っていうもので、私の心臓の音とか胸の音を聞いていたんだって。

「大丈夫そうだね、それじゃあスポットしましょうか。」

 獣医さんが看護師さんに言うと、看護師さんが緑色の小さな容器を獣医さんに渡した。何をされるのかドキドキしていると、その緑色の容器を私の首の後ろにくっつけてきた。冷やっとした感覚があり、何か液体が首の後ろに垂らされたみたい。あんまり気持ちいいものではなかった。

フロントラインの公式HPから引用させていただきました

 緑色の容器には、中に液体が入っていて、ノミやダニが付かないように予防する薬なんだって。もし、既にノミやダニが体についていたとしても、液体を垂らすとやっつけることもできる優れものなの。

 病院で暮らす子たちは、入院する子や診察にくる子に病気などを移してはいけないので、ノミやダニの予防や、伝染病にかかっていないか等のチェックをするの。あと、ワクチンも必ずしないといけないんだって。
 私は、ワクチンは打っていなかったので打たないといけないらしいんだけど、獣医さんが、

「ワクチンはこの子たちがここの生活に少し慣れて、ストレスがかからなくなってからうちましょうか。」

 と、看護師さんに言っていた。今日はワクチンはうたれないみたい。

「はーい、分かりました。」
「みぃちゃん、終わったわよ。この中でもう少し待っててね。」

 と言って、看護師さんが私のケージを診察台の上に置いて扉を開けてくれた。私は一目散に中に隠れたわ。
・・・と思っていたんだけど、実際には、ほふく前進みたいにのそのそ入って行ったみたい。

 そんなやり取りがあり、ケンタも同じように色々された後、ケージに入れられた。ちなみにケンタは5.3キロあるんだって。

「そしたら、二人を入院室に連れて行ってあげてください。」

 獣医さんはそう言って診察室を出て行った。

 そう、実はこの獣医さん、里塚一平先生が後に私たちを引き取ってくれることになるの。でもその時は何も決まっていなくて、しばらくはこの大きな動物病院で暮らすことになったの。

動物病院での新生活 おわり


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