「動物病院四方山話」28（ヘビおばさん）
私の名前は「みぃ」
動物病院で暮らしている猫
私が経験した動物病院での四方山話を紹介しています
前回の動物病院四方山話はこちら
「キャー！」
なっ、何？
待合室から叫び声が聞こえるわ！
どうしたのかしら？
ちょうど手が空いていた副院長先生が待合室の方へ走って行った。
程なくして、誰も使っていない診察室に副院長先生が一人の女性を連れて入って来た。
んっ？
白いマフラーを巻いておられるのかしら？
私が住んでる我が家（実は入院室なんだけどね）からその診察室の中が、ガラス越しに見えるのよ。
あらっ！
マフラーが動いている！？
んっ！
えっ！？
マフラーじゃないわ！
あれはヘビよ！！
実はこの方、通称
『ヘビおばさん』
病院のスタッフが呼んでいるんじゃないわよ。
ご近所の方にそう呼ばれているらしいのよ。
この方は『ふくちゃん』っていうワンちゃんも飼っておられるの。
とーってもおっとりとした男の子。
一平ちゃんは、『ふくちゃんの飼い主さん』としては知っていたんだけど、ヘビを飼っておられるのは知らなかったみたい。
このヘビは
『ボールパイソン』（ニシキヘビの一種）
アルビノの一種で、
『ハイコントラストアルビノ』
っていうらしいの。
体が白っぽくて薄い黄色の斑紋があるんだって。
名前は
『ユキちゃん』
一平ちゃんが、この動物病院に勤めていたのは20年以上前。
ヘビを飼っておられる患者さんはこの方以外はおられなかったと思うわ。
当時は今ほど爬虫類を飼っている人もおられなかったもの。
イグアナの飼育が少しブームになっていたくらいかしら。
一平ちゃんも、爬虫類の診察の経験はあまりなかったみたい。
この『ヘビおばさん』
ベテランのスタッフの間では既に有名人。
ユキちゃんや、ふくちゃんの事をとても可愛がっておられて、気さくでとてもいい人なの。
ユキちゃんを病院に連れて来られる時はいつもマフラーのように首に巻いて歩いて来られるらしいのよ。
それ自体は全然構わないんだけど・・・。
ただね、待合室で他の患者さんに
「可愛いでしょ、撫でてあげて！」
って、ユキちゃんをみんなに触ってもらおうとされるのよ。
ボールバイソンって、とても大人しいヘビだから人に危害は加えないと思うんだけど、いきなりヘビを見せられたらみんなビックリしちゃうわよね。
爬虫類が苦手な人も多いしね。
私は本物のヘビを見るのは初めてだったから、ずーっとユキちゃんを見ていたの。
ユキちゃんはおばさんの肩の上でのーんびりしているようね。
ヘビ達って緊張したりしないのかしら？
それにしてもユキちゃん、どうして病院に来たのかしら？
食欲がない？
元気がない？
私達には分からないかもしれないけど、一緒に暮らしていると些細な変化でも分かるんだわ、きっと。
さすが『ヘビおばさん』
すごいわね。
10分位経ったかしら、副院長先生がその診察室に入って行った。
15分位話していたかしら。
たまに笑い声も聞こえたりして。
あんまり緊張感が見受けられないわね。
具合が悪くて心配じゃないのかしら？
そんな事を思っていると、副院長先生が診察室から出て行ってしまった。
その後、受付の人と一緒に戻ってきて診療費のお支払いもその診察室で済ませたの。
お会計が終わった後、副院長先生はユキちゃん達と一緒に待合室へ出て行かれたわ。
きっと病院の出口までついて行ったのよ。
待合室がパニックにならないようにね😉
安心してください。
実はユキちゃん、特に悪い所があったから病院に来たんじゃないんだって。
定期的にユキちゃんを連れて来られるらしいのよ。
これといって悪いところが無くても。
ことろでこの『ヘビおばさん』
毎日夕方にユキちゃんと散歩されているらしいの。
もちろんユキちゃんを首に巻いて。
だからご近所の方から『ヘビおばさん』って呼ばれてるらしいのよ。
ある日、一平ちゃんがふくちゃんの診察をした時に、
「ふくちゃんとユキちゃんは一緒にお散歩されるんですか？」
って聞いたみたい。
「いいえ、ふくちゃんとユキちゃんは別々にお散歩するんですよ。」
との事。
なんでもね、ご近所に熱烈なユキちゃんファンがおられるらしいの。
散歩の途中で、その方のおうちに寄ってあげるんだって。
だから、ユキちゃんのお散歩が終わってから改めてふくちゃんのお散歩に行くそうよ。
ふくちゃんのお散歩も毎日朝晩されているから、一日3回お散歩されているって事よね。
すごいわねぇ。
ちなみに、「ユキちゃん」は毎日お外に散歩にでかけているから、病院に来てもあんまり緊張しないのね。
・・・知らんけど🙄
おわり