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「動物病院四方山話」30(アロンアルフア)

私の名前は「みぃ」
動物病院で暮らしている猫
私が経験した動物病院での四方山話を紹介しています

前回の動物病院四方山話はこちら


皆さんのおうちに、

『アロンアルフア』

ってあります?

そう、あの瞬間接着剤のアロンアルフア

一平ちゃんが勤めていた病院にもあったのよ。
ちょっとしたものを修復するのに便利だものね。

アロンアルフア』の名前って三つの言葉を組み合わせてできたらしいの。

アロンアルフアは東亞合成株式会社っていうところが作ってるのね。
東亞合成株式会社の前身の会社が矢作工業。
その矢作工業が設立当初に弓矢をイメージしたロゴを使ってたんだって。

それで弓矢(アロー)から

アロ

合成樹脂の名前でよく使われる「○○ロン」(例えばナイロンやテフロン)から

ロン

その二つをくっつけて、

アロン

主成分の「アルファシアノアクリレート」から

アルファ

それをアロンにくっつけて最終形

アロンアルファ

の完成!

ところで皆さん、気づきました?
正式な商品名は最後の文字の「ァ」は大きい「ア」で、

『アロンアルフア』

なんだって。

それにしても、アロンアルフアって便利よね。
いろんなものがすぐにくっつくんだもの。

手に付いたら離れなくなって大変だけど・・・

お尻とお尻がくっいて離れない~っ
・・・なーんてことはないですけどね・・・


そうそう、なんでこんな話をしてるかって言うとね、
一平ちゃんが勤め始めた時に、病院でアロンアルフアを見かけたって言ったでしょ。
でもね、それは一般的に見かける黄色い入れ物のアロンアルフアではなかったのよ。

一般的なアロンアルフア
最後の「ア」の字が大きいですよね


病院にあったのは、水色っぽい容器に入っていたの。

何だか、違いますよね。


商品名もね、

『アロンアルフアA』

っていうのよ。

アロンアルフアに、『A』が付いているのよ。

今まで見た黄色い容器のアロンアルフアと容器の色も違ってるし変だな、って思ったみたいよ。

そうしたらね、その『アロンアルフアA』っていうのはね、医療用なんだって!
一般の物と成分は一緒なんだけど、純度が全く違うらしいの。
だから、基本的には別の物と考えた方がいいんだって。

発売元も医薬品を取り扱っている、

第一三共株式会社

アロンアルフアで指と指がくっつくと離れなくなっちゃって大変ね、って話をしたでしょ。
医療用アロンアルフアはそれを利用して治療に使うらしいの。

傷や血管なんかをくっつけるのに使うそうよ。

医薬品の説明書には、
使用目的又は効果
って項目があるんだけど、アロンアルフアAは、

生体組織(皮膚、血管、臓器など)の創傷癒合を目的とする

って書いてあるの。

もちろん一般のアロンアルフアみたいに、割れたものをくっつけるような単純な作業ではないわよ。
だから決して良い子のみんなは真似しようなんて思わないでね!

そんな一平ちゃんにも『アロンアルフア』を治療に使うときがやって来たの!
皮膚をくっつけるのに使ったわけではないんだけどね。

ケガをしたカメさん


どこをケガしたのかしら?

小学生くらいの子がお母さんと一緒に来られたの。
可哀そうにその子は半ベソをかきながら心配そうにしていたわ。

お祭りの夜店で買ってもらったカメさん。
とっても大切に飼っているんだって。
今年で飼い始めて3年目。

水槽のお掃除をしようとした時に手が滑って落としちゃったらしいの。
運悪く、水槽の角に甲羅をぶつけちゃったらしいのよ。
その時に甲羅の端っこに少しヒビが入っちゃったのね。

当のカメさんはあまり気にしていないみたい。
ここに来る前にいつものご飯もしっかり食べてたみたいだし。

そこまで大きなヒビではなかったので、

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。」
「カメさんも元気に動いているしね。」

って一平ちゃんはその子に話しかけていたわ。

それを聞いて、その子も少し安心したみたい。

「ここのヒビからバイ菌が入らないようにしてあげないといけないね。」
「ちょっと待っててね。」


ここで『アロンアルフアA』の登場!
アロンアルフアAでヒビを塞いで保護するの。

傷を消毒して、ヒビの周りの甲羅をよーく乾燥させます。
薄いガーゼを細長い短冊状に切って、ヒビの上にセット。
その薄いガーゼに『アロンアルフアA』をしみこませて甲羅にくっつけて終了。

「一週間くらいで自然にガーゼが剥がれると思うので、それまであまり触らないようにしてね。」
「その間、傷に水がかからないようにも気を付けてあげてね。」

「はいっ。」

いいお返事ね。
その少年にやっと笑顔が戻って来た。

お母さんにも、ガーゼが早く剥がれてしまった時や、傷が治ってなかった時の注意点なんかを説明をして診察は終了。


「先生、ありがとう!」

安心したのか、すっかり元気になったその子は大事そうにカメさんの入った入れ物を抱えて帰って行ったのでありました。

もう大丈夫!


めだたし、めでたし。

おわり

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