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「みぃ物語」#02(プロローグ #02)

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 それから2ヶ月くらい経った頃かしら、何故か朝からご飯もお水ももらえなかった。おかしいな、と思いリビングへ行ったら、あのケージが準備されていた。

 私は嫌な予感がして、そーっとお姉さんの部屋に入り、ベッドの下に隠れて息をひそめていた。階段の下から、お母さんが、

「みぃちゃん、どこに行ったの?」

と、私をさがしているみたいだった。やっぱり嫌な予感が当たったんだわ。私は、見つからないようにじっと身を縮めて息を凝らしていた。
お母さんが階段をのぼって来る足音が聞こえた。
その足音がどんどん近づいてきた。

「やっぱりここだったのね。」

 と、お母さんの顔がこっちを覗いていた。
 見つかっちゃった!どうしよう、と思っていたら、お母さんはすぐに離れて行った。
 ふうっ、と安心したのもつかの間、

「お姉ちゃん、ちょっと来て。みぃちゃん、やっぱりお姉ちゃんのベッドの下にいたわ。ちょと捕まえて。」

 と、お姉さんを呼びに行った。

「なんで私がミースケを連れて来なきゃいけないのよ。」

 と、お姉さんは不服そうに二階へ上がってきた。

「だって、お姉ちゃんの方がみぃちゃん、懐いてるでしょ。」

そんなやり取りをしながら、お姉さんはベッドに近づいてきて、手を伸ばしてきた。私はさらに体を縮めてお姉さんの手が届かないようにしたけど、無駄な努力だった。
お姉さんに手をつかまれてしまった。私の手を握り締めてお姉さんは私をベッドの下から引きずり出した。
そう、引きずり出したのよ!
少なくともその時の私にはそう思えた・・・。

でも実際は、優しく手を引かれベッドの下から出されたみたい。お姉さんは、いつもとても優しいの。

私の本当の名前は、もちろん「みぃ」なんだけど、「ミースケ」って呼ぶのも、親しみを込めて呼んでくれてるみたい。
でもその時は、そんな余裕もなく、引きずり出された気分だったの。

そのままお姉さんに抱っこされて階段を降り、リビングへ連れて行かれた。私は、ドキドキして、体が動かず固まってしまっていた。

そしたら、あのケージがまた目に入ってきた。
あれに入れられるんだわ、逃げなきゃ!って思たんだけど、緊張しすぎて行動に出るのが少し遅すぎたみたい。身をひるがえそうと思った時には体のほとんどがケージの中に入れられていて、扉を素早く閉じられてしまった。

私っていつもそう、一テンポ遅いというか、どんくさいというか、緊張すると固まってしまうタイプなの。でもまだ遅くないわ、と思って、ささやかな抵抗をしてみた。

「ちょっと、ここから出してよ!」

って鳴いてお願いしてみた。そしたら、ひどいじゃない、お母さんったら、

 「相変わらずみぃちゃんの声はダミ声ね。」

って笑い合ってるの。
ひどいじゃない!

そんな調子なので、私のお願いなんて聞いてくれるはずもなく、ケージごと車に乗せられたの・・・。

そう、その時の記憶がよみがえってきたの。

連れて行かれたのは、動物病院っていう所だった。その時も緊張して手の汗が止まらなかったの。
もう一年以上前のことだけど、しっかり覚えているわ。

でも、今思い出してもぞっとする出来事だったから、もうこれ以上この話はしたくないわ・・・。

つづく


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