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教師である前に、一人の人間として

「今年も大学の院生に向けて授業をしてくれませんか?」

昨年の秋、以前からお世話になっている大学の先生から連絡があった。
「今年も」というのは、去年も教育学部の院生さんたち向けに授業をしたからだった。

去年はオルタナティブスクールの校長という立場で授業をした私。

しかし今は、その学校を休職して退職して……現在無職の私。

立場があまりにも違いすぎる。
だから、最初その電話があった時はただただ驚いていた。

「ありがとうございます。でも、私今無職ですし、週に一回ちょこっと子どもたちと遊んでいるだけですし……学生さんに話すほどの実践はないので……」

正直、もう断る気もちでいっぱいだった。学生さんたちの前に立てる気がしなかった。
すると先生が力強く言った。

「どんな状況でも構いません。ななっぺさんにお願いしたいんです」

心身ともに弱っていた私は、その言葉に涙が出そうになった。他にも県内にはたくさんの実践者さんたちがいるのにも関わらず、こんな状況の私に声をかけてくれることがただただ嬉しかった。

後日、先生はわざわざ私の家の方まで来てくれて、これからの展望をたくさん聞いてくれて、ぜひその展望を学生さんに話をしてほしいと言ってくれた。

気持ちはすごく嬉しいけれどやっぱり自信がなくて、先生が帰ってからもしばらく悩んでいた。

自信がなくても、カッコ悪くても良いんじゃない。そのまんまの私の姿を学生さんに見てもらえばいい。別にすごいことや偉いことを伝えることが全てではないんだから

心の声


自分の中でゆっくり考えて、次の日、授業を引き受けることにした。


1月17日の一限目にある授業の準備は、まだほとんど終わっていない。冬休み中に考えようかとも思ったけれど、直前になってから準備を始めようと決めていた。
それは、最近の自分が毎日何かしらの気づきがあり、小さな変化が絶え間なく起こっているのを感じているからだ。

前もって準備をしていても、何かのきっかけでガラリと授業の根本からメッセージが変わるような、そんな気配さえあった。

……という風にカッコつけて言ってみたけれども(笑)

授業1週間前になった私は、結構焦っている。
授業準備は果たして間に合うのか?という感じだ。

焦りと闘いながら思う。

綺麗な画像や綺麗な言葉を並べて、それっぽく語るのは簡単なことなんだなと。去年の授業を振り返ると、そんな感じだった。質問コーナーは設けていたけれど、90分授業のうちほとんどは私の講義だったし、今思えば、学生さんから質問が来るのも少し怖かったように思う。「ちゃんと答えられるかな?」という気持ちがあった。

それに対して、今年はどうだろう。

今年は、授業時間の6割は私の講義で、4割は演習にしようと決めた。講義の中にも質問コーナーを作り、演習にはグループ討議を発表も入れることにした。インプットだけでなく、アウトプットも入れて、たくさん学生さんたちと意見を交わせたらと思う。

そこには少しのドキドキ感がある。どんな展開になるのか、それに自分がどう答えていくのか、そこには「正しい」レールも何もないからだ。
ただただ正解のない問いをみんなで一緒に考えたい。今はその想いだけがある。


その方向性を決めて、学生さんたちに「授業作りのための事前アンケート」を書いてもらうことにした。項目は三つ。

①今この時代に最も必要な教師の資質は?
②その理由を教えてください
③来週の授業で知りたいことは何ですか?

①と②は演習のグループ討議のための質問で、③は講義の中でできるだけ学生さんの質問に答えるようにしようと思ったからだ。

今朝、教授にメールで送って、すぐに学生さんたちのアンケートの答えが送られてきた。迅速な対応に感謝感激。


この時代に、教師になろうと志し、大学院に進む意思がある学生さんの答えはさすがだな〜と思うものばかりだった。


その中で、「教師として」という前に「一人の人間としてどうあるべきか」を答えている学生さんもいた。

教師である前に、一人の人間として。

私の授業のゴールは、そこなんだと思う。

「良い」教師になるためのスキルは、学校現場で様々な経験を伴いながら、教師仲間と共に学び合いながら自然とついていく。

だけど、唯一無二の自分の幸せを自分で感じることができるか?
自分を心から愛することができるか?
もし、愛せないとすれば、そこには何があるのか?

そこにバックしてバックしてどれだけ自分と向き合えるかどうか。

自分のことを深く知ることは、子ども理解につながる。他者理解にもつながり、相手との対話、コミュニケーション、そして自身の柔軟な感性へと繋がっていく。

そして最後に身につけるべきスキルに自然と繋がっていくんだと思う。


授業を作り始めて、二日目。

学生さんの学びのためにと思って考えていることが、実はめちゃくちゃ自分のためになっていることに気づく。

「君たちはどう生きるのか」

その問いかけは、まっすぐ私に返ってきている。

お庭の蝋梅咲いてた



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