
「モグラの写真屋さん」第4話 ボニさんのPocketBook
「ところでモグラくん、泉には行けたのかい?」
マングースくんがモグラくんに聞きました。
するとモグラくんは
「フクロウのおじいさんに出会ってさ、うん。」
「フクロウのおじいさんはヤンバルの森の仙人で、うん。」
「ぼくに皮の袋をくれたら大きな木と一緒に消えちゃって、うん。」
「そしたらさ、道があってさ、うん。」
「道の先に泉があってさ、うん。」
「泉に皮の袋を投げたら、うん。」
「金色の泡が出て、金色の泡がチョウチョになって、うん。」
「大きな金色の泡をチョウチョたちが持ち上げて、うん。」
「そしたらさ、うん。」
「金色のサナギになったわけさ、うん。」
「そして、その金色のサナギがこれだわけさー、うん。」
一生懸命にマングースくんに説明しましたが、マングースくんは意味がよくわかりませんでした。
でも、モグラくんが手にしている金色のサナギを見て、泉に行けたのかな?って思ったので
「泉に行けてよかったネ!」とモグラくんに言いました。
するとモグラくんは
「うん!」とうれしそうに大きな声で言いました。
「じゃあ帰ろうか。」
二人は村まで続くヤンバルの森の道を歩き出しました。
ヤンバルの森への帰り道、あたりは明るくなってきましたがモグラくんはマングースくんにフクロウのおじいさんのことや泉での不思議な話をずっとしていました。
マングースくんはうんうんと聞いていました。
でもマングースくんはだんだん返事をしなくなってしまい、ヤンバルの森を抜けて村まであと少しというところで突然倒れてしまいました。
「わー!マングースくん、どうしたのー?」
モグラくんはあわてました。
マングースくんは立ち上がろうとしますが、立ち上がれませんでした。
モグラくんよりマングースくんの方が体が大きいので、モグラくんひとりではマングースくんをかつげません。
「マングースくん、ごめんね。ぼくは小さいから君をかつげないんだ。」
モグラくんは泣きそうな顔で言いました。
「そうだ!ぼく、助けを呼んでくるよ。ちょっとだけ待ってて。」
モグラくんはマングースくんを木の下に寝かせると
「たいへん!たいへん!マングースくんが!」
言いながら村まで仲間を呼びに行きました。
村の仲間が集まってきてくれたので、みんなでマングースくんを街のお医者のナミエガエル先生の病院に運びました。
ナミエガエル先生はマングースくんを見て
「うーん、右足がすごくはれているなー。」
「すごく痛そうだけど、足は折れているのかな?」
心配そうに言いました。
それを聞いたモグラくんは
「マングースくんの足が折れているの?もう治らないの?」
金色のサナギを持ったまま、オロオロしました。
「どうしよう、マングースくんは、ぼくを助けるためにハブの盗賊団と戦った時にケガをしちゃったんだ。それなのにムリをして歩いて帰って来たんだ。」
モグラくんは思いました。
「どうしよう、どうしよう。このままマングースくんの足が治らなかったらどうしよう」
モグラくんが困って泣きそうになっていると、手に持っていた金色のサナギが割れて、中からカメラが出てきました。
「わー!サナギからカメラが出た!!」
モグラくんがおどろいていると
「コホッコホッ」
鳴き声が聞こえてきました。
「コホッコホッ。部屋をうす暗くして、マングースの足を写してみるのじゃ。」
フクロウのおじいさんの声が聞こえました。
モグラくんはナミエガエル先生にお願いして診察室をうす暗くしてもらって、サナギから出てきたカメラでマングースくんの足を写しました。
すると、カメラから写真が一枚出てきました。その写真にはマングースくんの足の骨が写っていました。
モグラくんがナミエガエル先生にその写真見せると、ナミエガエル先生は
「骨は折れてないから、これならしばらく冷やしてはれがおさまればよくなるじゃろ。」と言いました。
それを聞いたモグラくんは、ひと安心してうれしくなりました。
マングースくんの足は、すぐに良くなり前のように立ったり歩いたりできるようになりました。
モグラくんはナミエガエル先生の診察室のとなりにうす暗い部屋を作ってもらい、ケガをした仲間たちの写真を写してはナミエガエル先生の治療に役立ててもらいました。
こうしてモグラくんはレントゲン写真屋さんになって、街や村の仲間たちとしあわせにくらしました。
おしまい
あとがき
この「モグラの写真屋さん」は20数年前にボニさんが沖縄県北部のとある病院で働いていた時に作ったものです。
病院で仲良くしてくれていたレントゲン技師さんの「ぼくたちはモグラだからね。」のひと言がきっかけで思いつきました。
すこしずつお話を作って携帯のメールでレントゲン技師さんに送っていたのですが、当時はスマホなんてなくて、誰もがガラケーの時代で、当然メールの文字数も少なかったんです。どうやって少ない文字で伝えるかボニさんは四苦八苦しながら1話1話作って送っていました。
20数年経って、「note創作大賞」というのがあるのを知って「モグラの写真屋さん」を応募しようと思い立ったのです。
ですが、今度は文字数を稼ぐのに四苦八苦しつつ、ボニさんはこの物語をイチから書き直しました。
でも、どうしても2万字までの大作にすることが出来ず、応募ができなかったのですが、このまま埋もれさせるには惜しいと思ったので、ボニさんのPocketBookとして皆さんに読んでもらうことにしました。
この「モグラの写真屋さん」を読んでいただいて素直な感想を聞かせていただけると、ボニさんがでーじ喜びます。
ボニ
PS.
ボニさんの住む沖縄にはモグラは生息していないんですよね~笑