『悲劇の誕生』3節第一段落
まとまった量訳してませんが、なんとなく投稿します。区切りのいいところで『悲劇の誕生』シリーズにまとめます。
第一段落
Um dies zu begreifen, müssen wir jenes kunstvolle Gebäude der a p o l l i n i s c h e n C u l t u r gleichsam Stein um Stein abtragen, bis wir die Fundamente erblicken, auf die es begründet ist.
①このことを理解するために、我々はかの芸術性に富んだアポロン的文化の建築から、いわば石を一つ一つ取り除かなければいけない。このことは、くだんの建築がその上に建てられているところの基礎を我々が見出すまで行われなければいけない。
Hier gewahren wir nun zuerst die herrlichen o l y m p i s c h e n Göttergestalten, die auf den Giebeln dieses Gebäudes stehen, und deren Thaten in weithin leuchtenden Reliefs dargestellt seine Friese zieren.
②ここにおいてわれわれは初めて、輝かしいオリュンポスの神々(の形姿)に気づくのだ。この神々は上記の建築の破風の上にいましますもので、その行いはしばしば光るばかりのレリーフに描かれてアポロン的文化の建築のフリーズを飾るのである。
*Fries 男性【建築】 フリーズ(古典建築の小壁,あるいは壁上方の帯状装飾).(小学館独和大辞典)
Wenn unter ihnen auch Apollo steht, als eine einzelne Gottheit neben anderen und ohne den Anspruch einer ersten Stellung, so dürfen wir uns dadurch nicht beirren lassen.
③〔ただし〕もしアポロンもまたこの神々のうちで、ほかの神に並ぶ一つの神性として第一身分の権利もなく存在するとしても、われわれはこのことで惑わされてはいけない。
Derselbe Trieb, der sich in Apollo versinnlichte, hat überhaupt jene ganze olympische Welt geboren, und in diesem Sinne darf uns Apollo als Vater derselben gelten.
④アポロンにおいて具体化されるところの衝動が、実にあのオリンポス世界の全部を生み出したのである。また、この意味において、アポロンはわれわれにとってまさにオリンポス世界の父として認められるある。
Welches war das ungeheure Bedürfniss, aus dem eine so leuchtende Gesellschaft olympischer Wesen entsprang?
⑤オリンポス的本質を持つ非常に輝かしい社会がそこから出現したところの、恐ろしい必要性とはなんだったのだろうか?
解釈
重要なのは③の文。①と②ではアポロン的文化の基礎を見定めようと意欲して、その結果、輝かしいオリュンポスの神々に気づくのである。一見アポロン的文化を支えているのはオリュンポスの神々の一同なのだと思うけど、実際にはアポロンがその中で飛び抜けた位置にあることにニーチェは注意を向ける。④では衝撃的なことに、オリュンポスの神々や世界を生み出したのがまさにアポロン的衝動であると述べられる。このことを踏まえて⑤では問いが提起される。ニーチェはオリュンポス世界を生み出したところのアポロン的衝動がある必要に答えるために生み出されていると考えているのだが、果たしてその必要とはなんだったのか?という問いである。