空井恒

本の要約や感想、あとは考えたこととかを書きます。 記事は自分の考えをまとめる最初のとこ…

空井恒

本の要約や感想、あとは考えたこととかを書きます。 記事は自分の考えをまとめる最初のところを書いたものなので、正確でなかったり、論旨が一貫してなかったりします。

マガジン

  • ハイデガー『カントと形而上学の問題』ゼミノート

    『カントと形而上学の問題』の訳文と、自分なりの理解など。ゼミの予習ノートです。

  • ニーチェ『悲劇の誕生』訳と読解

    『悲劇の誕生』を細々と訳し、解釈をつけていきます。

最近の記事

憎むこと

われわれは憎むことを学ばないといけないのかもしれない。 憎しみのポーズをとった同調の快楽がこんなにも蔓延っているのだから。 本当に憎むことは、対象への憎しみを自身の言葉で表現する(できる)ことだ。そしてその表現は絶対に、自分の憎しみを完全に描写したものにはならない。われわれは憎しみと表現の間にある溝に向き合い続けなければいけない。 今日では誰かを憎んでいるふりをすることがいとも簡単にできる。 日本人が殺された、反日教育をやめろ、中国人を締め出せ、国交を断絶しろ、権威主義

    • ウルトラマンネクサス第35話「反乱 -リボルト-」感想

      3代目デュナミスト千樹憐のターニングポイントであり、そのことが言語的な表現を超えて表情や身体的な演技に反映された最高の回だと思う。 憐の意識はいくつかの段階を経て36話での光の継承に到達している。 (1)自己への強い関心:防衛機関直下のアカデミーでデザイナーベイビーとして生まれた憐は遺伝子的な欠陥を抱え、16歳頃に全身の細胞がアポトーシスを起こすという運命を背負わされていた。特殊な出生と生育環境も手伝って、この頃の憐はいわば自身の生き方への疑問を持ち、やがてそれは自己からの逃

      • やっつけ修論構想

        メンタルが死にそうなので、一度考えてることを吐き出してみます。 ニーチェはニヒリズムを時代の課題とし、その解決策として価値創造を掲げた。価値創造は未来の哲学者などと呼ばれる存在によってなされるものであり、ある種卓越した人物のみによってなされ、創造される価値もそういった人物のためだけのものという様相を呈する(LemmからClarkへの批判?)。 しかし、だとすると、ニーチェは一部の卓越した人間だけをニヒリズムから救い出そうとしていたのだろうか。新たな価値の有効性は非常に限ら

        • 第3回公演「夏陰、陽炎、氷菓。」陽炎「魔法使いにテンキュー」感想

          *ネタバレあります。7月22日19時の回を観ました。 遺書人間はみな遺書を書いておくべきだと思っている。というのも、誰かしらが死んだ時に、残された人が死者のために何をすべきかということはかなりはっきりしていないと大変なことになるから。多くの場合、生きている人間は死者に対して平然としてはいられない。死者は生きている人間の行動をジャッジしたり、その人のために何かをしないといけない存在になる。だからこそ、たとえば戦争で犠牲になった人「のために」平和な社会を作るとか、強い国を作ると

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        • ハイデガー『カントと形而上学の問題』ゼミノート
          3本
        • ニーチェ『悲劇の誕生』訳と読解
          3本

        記事

          カント『純粋理性批判』第二版§15

          原神で万葉を引いたのに熟知翠緑が揃いません!杯か冠で熟知が出てくれればいいだけなのに! 本文はここから 要約 §15に関して。認識に際して求められる、直感や概念の結合は総合と呼ばれ、自発性の能力である悟性によって担われる必要があります。さらに、あらゆる結合が可能であるためには、それらに先立った結合か必要になるのだが、これは対象によっては与えられることができない。このことから根源的な一つの結合が求められることになります(第一段落)。 この、あらゆる結合に先立つ根源的な結合は

          カント『純粋理性批判』第二版§15

          #1. ニーチェ『ツァラトゥストラはこう言った』

          Zarathustra's Vorrede. ツァラトゥストラの序説 § 1 Als Zarathustra dreissig Jahr alt war, verliess er seine Heimat und den See seiner Heimat und gieng in das Gebirge. Hier genoss er seines Geistes und seiner Einsamkeit und wurde dessen zehn Jahre nich

          #1. ニーチェ『ツァラトゥストラはこう言った』

          §34-2ハイデガー『カントと形而上学の問題』ゼミノート(24.4.30分)

          ペーパーバックで買いました。今まではPDFで見ていたけど、授業中にタブレットでこれと邦訳と『純粋理性批判』の参照箇所を見るのが大変だったので。やっぱ紙に書き込むのはいいですね。 190b:純粋直観は純粋自己触発である 前回までの箇所(すべての表象は内感に属する・内感の形式は時間である→すべての表象は時間の自己触発的な構造に準拠する)を踏まえて、「認識の有限性」が直観の有限性に根付いていることが明らかになり、再び直観の有限性に話を戻そうということを言っています。そもそもこの

          §34-2ハイデガー『カントと形而上学の問題』ゼミノート(24.4.30分)

          §34-1ハイデガー『カントと形而上学の問題』ゼミノート(24.4.23分)

          わけがわかりませんが、わからないなりに頑張ります。 § 34. Die Zeit als reine Selbstaffektion und der Zeitcharakter des Selbst 純粋な自己触発としての時間と自己の時間性格188c:時間が対象の表象の概念を触発するとは? ここではもっぱら問いを立てるだけです。 この問題は以前にも登場しています。62 ページ。でもそんなに関係ないみたいです。 カントは「触発する」のは時間と空間の両者だと書いていますが、ハ

          §34-1ハイデガー『カントと形而上学の問題』ゼミノート(24.4.23分)

          カント『純粋理性批判』ゼミノート(24.4.22分)

          位置付け 超越論的原理論/超越論的論理学/超越論的分析論/概念の分析論/純粋悟性概念の演繹について 22節 カテゴリーは、経験における対象に自らを適用する以外のいかなる認識上の使用法も持たないこの節全体として、このタイトルの命題を証明しようとしています。 この引用箇所の最後の部分は文の切れ目ではないのですが、一回ここで切ります。この範囲は特に問題はないでしょう。有名なカントの認識論(認識は直観と概念の結合によって成り立つ)が確認されているだけです。 一つ前の引用箇所を概

          カント『純粋理性批判』ゼミノート(24.4.22分)

          ハイデガー『カントと形而上学の問題』ノート(序論〜#1)

          引用においては、「有」を「存在」、「有るもの」を「存在者」などと断りなく変更します。 序論 研究の主題とその構成要点:ハイデガーはカントの『純粋理性批判』を「形而上学の根拠づけ」として読もうとしている。そして、「根拠づけ」ということを分析することで、本書の方向性を提示している。 ハイデガーは、この本を通して『存在と時間』で行っていた基礎的オントロギー(存在者を存在者たらしめる「存在」の意味を解明する視座としての現存在の分析)を、実はカントが『純粋理性批判』という書物の中で

          ハイデガー『カントと形而上学の問題』ノート(序論〜#1)

          #1. キリスト教は嫌いだけどイエスは大好きだ! byニーチェ「天国とは何か」

          ニーチェといえばキリスト教の批判者として知られているけど、実はイエス本人に対してはむしろ肯定的な評価を加えている…このことがどの程度人口に膾炙しているものなのかはわからないけど、この記事ではまさにそのことを書いています。 題材をニーチェの著作とか遺稿全般にしたらそれはそれで面白いのだと思うけど、そうすると本当にキリがなくなってくるので、ニーチェの晩年の作品(生前に出版はされていない)である『反キリスト者』から肝心要になりそうな文言をいくつか抜き出して自分なりの解釈をつけていき

          #1. キリスト教は嫌いだけどイエスは大好きだ! byニーチェ「天国とは何か」

          #2 ゼロから始める修論計画(24.2.25~3.3)

          今週の目標主要二次文献リストアップ完了→前回からの引き継ぎ。若干のみ ニーチェ研究なら読まなきゃいけないものをリストアップ。 現時点でリスト化している文献のオーバーヴュー→前回からの引き継ぎ 15ほどあげている。序文、書評、訳者解説などで内容や主張の概要を掴む 『反時代的考察』第一部『デーヴィットシュトラウス』を読む→完全に引き継ぎ ドイツ語 単語帳、DWを読む、リスニング教材からわからない表現をノートに書く、(中級文法書を読む) 研究以外にやらなくてはいけないこと就

          #2 ゼロから始める修論計画(24.2.25~3.3)

          #1 ゼロから始める修論執筆(24.2.14-2.21)

          今週の目標主要二次文献リストアップ完了 ニーチェ研究なら読まなきゃいけないものをリストアップ。 現時点でリスト化している文献のオーバーヴュー 15ほどあげている。序文、書評、訳者解説などで内容や主張の概要を掴む 『反時代的考察』第一部『デーヴィットシュトラウス』を読む ドイツ語 単語帳、DWを読む、リスニング教材からわからない表現をノートに書く、(中級文法書を読む) 研究以外にやらなくてはいけないこと演劇 23日に本番、18日から小屋入り。稽古はかなり多い。 就活

          #1 ゼロから始める修論執筆(24.2.14-2.21)

          『悲劇の誕生』3節第二段落

          Wer, mit einer anderen Religion im Herzen, an diese Olympier herantritt und nun nach sittlicher Höhe, ja Heiligkeit, nach unleiblicher Vergeistigung, nach erbarmungsvollen Liebesblicken bei ihnen sucht, der wird unmuthig und enttäuscht ihne

          『悲劇の誕生』3節第二段落

          『悲劇の誕生』3節第一段落

          まとまった量訳してませんが、なんとなく投稿します。区切りのいいところで『悲劇の誕生』シリーズにまとめます。 第一段落 Um dies zu begreifen, müssen wir jenes kunstvolle Gebäude der    a p o l l i n i s c h e n  C u l t u r  gleichsam Stein um Stein abtragen, bis wir die Fundamente erblicken, auf d

          『悲劇の誕生』3節第一段落

          『罪と罰』人物紹介・あらすじ

          『罪と罰』の台本を読むときに、「この人どんな人?」「この場面はどんな流れの中にあるの?」ということが少なからずあるので、自分の理解の刷新も兼ねて簡単な人物紹介とあらすじを書いてみたいと思います。 *途中ですが、長くなるので、公開して徐々に修正していきます。 人物紹介ラスコーリニコフ(ロジオン・ロマーヌヴィチ・ラスコーリニコフ) 父親をはやくに亡くし、一家の希望としてペテルブルクに移って大学の法学部(超絶エリート)に学ぶが、少し前に家庭教師の仕事ともども大学も辞めてしまう

          『罪と罰』人物紹介・あらすじ