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国産材はなぜ売れなかったのか 読了

国産材を使った木製品を主に作る工房で働いているので、日頃から国産材を消費して日本の林業を応援したいという気持ちがある。
日本の林業は衰退している、なぜならお金にならないからだ。
ではどうして国産材は売れないのか?安価な外材が輸入されるようになったから、と今までなんとはなしに思っていたが、本当のところはどうなのか。
真実を知って驚いた。

戦中戦後で木材がたくさん必要だったとき、まだ外材は入ってきていなかった。
どんな木材でも飛ぶように売れた。
必然、木材の価格は高騰し、規格に満たない材がその価格で売れる。それが業界の当たり前になっていた。
10センチ四方の角材として、直径10センチの丸みのあるままの材が売られていたのだ。「空気売り」とか「歩留まり100%」という言葉に驚く。
今では考えられないことだ。

外国から大口径の材が輸入されるようになって、規格に満たない材ばかりの国産材は、当然売れなくなる。当たり前だ。
なんだ、国産材が売れなくなったのって、殿様商売してたからじゃん……

でもこれは時代のせいだ。
それでも需要があって売れたんだから。そんな中でまもともなことをやってたら馬鹿を見る。資本主義の悪いところだ。
今はそういった体質は是正されて、どこの製材所もちゃんとしてる。

木材の需要はやはり、住宅建築だ。
日本の住宅はほとんど洋室化されて、木材は目に見えない。そういう時代もあって、役物材(高級志向の国産材)の需要も減った。
そして、クロス張りの洋室が増えたことで、シックハウスなどの化学物質に対する問題が出てくる。天然木材への回帰だ。
しかし、木材はどうしても乾燥による割れや歪みが出てしまうので、品質を保証するのが難しい。
ここで、木材を貼り合わせて作る、集成材が主役となる時代になる。狂いがほとんどなく、歩留まりもいい。木材はくるところまできたなという印象だ。

阪神・淡路大震災により、木造家屋の火災が問題になった。耐火基準が大幅に見直され、マンションなどの高層建築や、ホールなどの大規模建築を木造にすることが難しくなった。
しかし、最近それが見直されたらしい。
これからは、高層建築も、大規模建築も、木造できるのだ。
現実的に、そういった建物が増えている。これはとても素晴らしいことだ。

だけど、国産材の価格はもうこれ以上上がらないと言われている。
廃業する製材所も増えている。
これは、製材に使う機械がむちゃくちゃ高価だからだ。主に乾燥機。
機械乾燥の技術は新しく、昔ながらの製材所は乾燥機を持っていないところも多い。自然乾燥だ。
材の乾燥はとっても重要なので、これからバリバリ製材やってくぞ、という会社は乾燥機を導入した方がいいけど、何せ高い。次世代が後を継いでやっていってくれるなら導入するけど、自分の代でもう終わりかな……という製材所は乾燥機を買わない。当然の選択だろう。
こうして製材所は減っていく。

一次産業として林業が注目され、都会から林業がやりたくて移住してくる若者もちらほらいる。
林業ももちろん大事だが、製材所も大事だよ!と言いたい。
生業としての林業を守ろうとする自治体は、そういうところにお金を!かけているんですよ!!鳥取県さん聞いてますかーーー?!?!

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