こどものこころ
いつの間にか、8月が終わった。
常軌を逸した暑さも引いて、窓を開けると、虫の音が響く。
ほっとするとともに、ちょっとさびしい。
夏の終わりがさびしいのは、子どもの頃から変わらない。夏が苦手なのに謎だ。
年をとって、若い頃とは価値観もずいぶん変わったけれど、子どもの頃の自分とは、地続きのような気がする。
少し前の日経新聞に、童話屋の創業者の方のエッセイが載っていた。
目の悪くなったまど・みちおさんのために、「ぐりとぐら」を読んであげたときのエピソードが素敵だった。
大きな卵を発見したぐりとぐらが、大きなカステラを作って、森のみんなと食べるお話。
すごい!みんなで分けて、しかもひとり1個ずつあるんですねと、まどさんが大声で感動して、その姿に童話屋の主人も感動した、というもの。
大人になっても、子どもと同じように大声で感動できるまどさんは素敵だ。
いつまでも子どものようだというのは、社会では批判的な文脈で語られることが多い。
でも、世界と触れあうとき、子どもらしいみずみずしさをいつまでも失わずにいたいと思う。
いやいやえん読んでたころの風が吹くせたがやだいたの駅を降りれば
(2024.8.31日経歌壇入選・穂村弘選)
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