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社会学の名著【100分de名著】『ディスタンクシオン』

社会学という社会問題を調査研究する学問(19世紀頃に概念ができた)の金字塔的な名著『ディスタンクシオン』です。

著者であるフランス社会学者のピエール・ブルデュー(1930ー2002)が趣味と社会構造の結びつきについてアンケートなどの調査から解き明かした学術書です。

本書は、国際社会学が1998年に「20世紀で最も重要な10冊」の1冊にしているほど、社会に影響を与えた名著です。

【100分de名著】の構成

第1回 私という社会
第2回 趣味という闘争
第3回 文化資本と階層
第4回 人生の社会学
解説者 社会学者 立命館大学教授 岸政彦
    ➡地域の人の話を聞いて地域の特殊性を研究する沖縄の生活20年研究

解説者の感想

解説者の岸さんは「自分のことが書かれているような気がした」

「お前は自分が好きなように生きているんだろうけどでも実はすごいその規定されているんだよ。社会で色々規定されているんだよと暴かれた感じがした」

100分de名著 岸政彦さんの言葉より

正直、私には難しい本でしたが、おっしゃるとおりだと思います。自分が思った通りに行動して生きているのに何か見えざる手が操作しているのではないかと錯覚してしまうような本です。

ディスタンクシオンとは

「ディスタンクシオン」舌を噛みそうですが、この言葉は、フランス語で「La  Distinction」区別・差異・卓越という意味を持っています。

1979年に刊行された本書のテーマは「経済中心主義とは異なる文化のエコノミーを問う」=「個人的な趣味と社会階級との結びつき」についての研究をしたものでした。

この本は、692人からアンケートを取って書き上げており、調査に基づき書かれた本となっています。

ブルデューの現地調査のきっかけは、戦争です。
(過去偉大な本やできごとを成し遂げた人は、戦争を乗り越えたり、その怒りや絶望から何かを生み出しているのは、なにか複雑な気持ちになります)

ブルデューは、1955年にフランスからの独立をしようとしているアルジェリアに徴兵されます。

日々の戦いからフランスの知識人は指示を出しているだけで何も考えていないと思うようになり、戦後もアルジェリアで民族の観察やインタビューなど現地調査をずっと行っていました。

そこで元々農家の生まれであったブルデューは、故郷を思い出しました。

今でこそ立派なブルデューですが、彼は、自分のような農民出身者は教育を受けると自分の農民出身ということを恥じる傾向にあると考えていました。しかし、アルジェリアで現地の方々と接し調査しているうちに、自分の文化を取り戻すことになります。

この出来事がベースにあることで、後の研究に影響を与える調査に基づく研究の礎ができます。

※この本のキーワード:ハビトゥス=傾向性 界=闘争場趣味のカテゴリ 文化資本

運命的な趣味なんてない?

たまたま聞いた音楽や絵画、映画など、何か降臨してきたような運命的な、衝撃的な出会いから趣味になるケースってあると思います。

私自身、偶然待ち合わせで立ち寄った本屋で、原田マハさんの『暗幕のゲルニカ』に出会い著者のファンになりました。それは、たまたま早めに着き、時間をつぶす場所として本屋を見つけて、たまたま『暗幕のゲルニカ』のあったフロアを通って、その場所を見つけたのです。

まさに運命的な出会いです!!!

こういうことって、たまたま聞いたアイドルの歌や絵画、ピアノの曲など、色々な趣味であると思います。

しかし、本書では、たまたま選んでいる趣味という枠は、出身階級や学歴が影響を与えており、電撃的な出会いというものはないと否定しているのです。

どういうことでしょうか?

趣味は出身階層や学歴が影響?

趣味は、学歴や出身階層で同質化した集団が作らており、その集団同士で他者を否定し、自分の趣味が良くと他を否定し、闘争することで形成されていくと主張しています。

自分が好きでやっている趣味は、実は小さいころからの社会的階級や学歴と密接な結びつきがあり、影響を受けているのです。

確かに、言われてみると、小学校の時にアイドル好きの子たちが近くにいたし、父がJAZZを聞いていました。祖父祖母の家には美術辞典があり、母は美術館が好きでした。

この本では、階層が上だとゴルフや乗馬などお金もかかる趣味が多かったそうです。

自分が頑張らないのが悪いという意見もあるかもしれないが、本書を読み解くと自分の力だけではどうにもならない幼少期の経験や環境もあると思いました。

家庭環境や学校教育の良さが社会的に有利になるということが多いと思わされた本です。

私も努力をすれば・・・と考えている人ですが、才能や環境など、どうしようもない部分もあるなと感じました。

社会学は現代にこそ必要

社会学とは他者を知ることで、自分達が知らない社会の問題を調査している『世界の悲惨』という別著も紹介されていましたが、見ないようにしていたすぐ隣にある社会的問題や自分もその問題の中にいるのに気づかないようにしていた社会的問題が描かれていた。

他者を理解することで自分のことがわかるし、社会学が問題提起したことを自分を含め社会が向き合い行動すれば少しずつ世の中も変わっていくのではないかと思いました。

昔から世界では、戦争や労働問題、人権問題、環境問題など、形や行為は変われど、言葉にできませんが、本質には変わらない問題がずっとあるんだと感じました。

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