最高の瞬間を
最高の瞬間を求めている。
その瞬間のためにすべてを捧げられるような、そんな瞬間を。全人格を捧げられるものを。
きっとその時はキラキラしているはずだ。幸せな気持ちで、すべてがきらめいているはずだ。煌々と、爛々と。
息を切らしながら走り続けた道中を、誇りに思えるはずだ。
道を間違えた上に事故に巻き込まれたことも、懐かしく振り返れるはずだ。
そんな瞬間が来てしまったら、もう死んでもいい。自分で自分を認められたなら、許せたなら、そこが終わりでいい。
まだ許せないから歩き続けている。どこにあるか分からないゴールを目指し続けている。終わりのないマラソンだ。
自分の能力の限界にそろそろ気づいているのに、それを受け止められなくて、受け止めたくなくて、必死に身の丈以上を目指している。
こんなもんじゃ自分を認められない。許せない。
もっとやれ、やらないといけない。自分で自分を追い詰めていく。逃げ場はない。前にしか道がない。歩いたそばから道は崩れ落ちていく。
腐り落ちていく。
最高の瞬間を。この辛く苦しい道のりに価値を与えてくれる瞬間を。報われたと思える瞬間を。
そんな瞬間を、求めている。