緑の黒髪

なぜ緑なのか気になるところだ。答えを調べるのはつまらない。こういうのは妄想するのが楽しいのだ。

緑の黒髪の意味は、艶のある美しい黒髪、とかだったはずだ。とにかく黒髪を褒めたものだったと記憶している。黒色なのに、緑。観念的なイメージだろうか。この黒髪の持ち主はもっぱら女性だったはずだ。女性の優美な黒髪が、木々や草花の緑と重なったのだろうか。

優美な着物、豪勢な屋敷、屋敷の周りの美しい草花、長い黒髪。髪の美しさを称えるのに比喩として一番近くにあって、かつ使いやすいのが草花の緑だったのだろう。着物だと言い回しが変わってしまうし、黒髪を褒める前に着物を褒める必要が生じる。その点、草花は貴族ならば屋敷周りを整えるついでに綺麗にしているだろうし、整えられた草花は良いものだという暗黙の前提がある。自然物だというのも良い。天からの恵みであるあの素晴らしい草花のように、あなたの黒髪も素晴らしいですよ、と言うことができる。

単純に花に例えればよかったのかもしれないが、黒髪の流線を表現しようとすると、葉脈や茎を出したほうがよく、花には例えられなかったのだろう。黒く長い髪で、現代のように編み込んでもいないものを花に例えるのは無理もあったのだろう。

妄想の割にはいい線いっているのではないだろうか。

ここまで語っているのでおわかりかと思うが、私は少なくとも日本人に限っては黒髪信者だ。やや長めの艶のある黒髪、程よい水分を含んで触り心地も良ければなお良い。やはり生まれ持ったものが一番良いと思うのだよ。だが化粧でより美しくなる、あるいは醜い部分を隠すことができることは否定しないので、個人的な趣味に適当な理由をつけているに過ぎない気もする。

緑の黒髪。この表現自体は気に入っている。緑の瑞々しさや柔和さなどが黒髪に溶け込んでいるような気がするのだ。春の緑、夏の緑、秋の緑、冬の緑。緑は季節によって表情を変える。色々な緑が、黒髪に宿る。何とも素晴らしいことではないか。

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