空色
空色が好きだった。
今も好きだ。水色が好きというよりは、空色が好きなんだ。
雲なく晴れた空。風は身体を包んで過ぎ去る。一人空を見上げた者のみが得られる色。
果てしない奥行きにのまれていく。すがすがしい気持ちがする。
橙色も好きだ。夕焼けの色だ。
短い時間しか姿を見せないが、暖かさを感じさせる。優しい恥ずかしがり屋だ。
大きくなったり、小さくなったり、紅くなったりもするが、毎日必ず姿を見せてくれる。そしてその陽で包んでくれる。
空はたまにしか見ない。いつでも見られるのに、見ようとしなければ見えないのが空だ。いつでも平等にそこにある。
挫折しようが、泣き喚こうが、崩れ落ちようが、そこにある。天にある。
子どものときにはこんなことは考えていなかった気がする。「そらいろ」が「そら」と「いろ」に分かれることも、「そら」が空を指すことも分からなかった。
でも、「そらいろ」で塗るのは空だった。
何かを見上げるついでに常に目に映っていたのだろう。空に覆われて生きていた。
今は下ばかり見える。視点は随分上に上がったが、視線はその分下に下がってしまった。
地面には奥行きがない。壁にぶち当たる。閉塞する。
たまには空を見てみよう。ぼーっと。意味もなく。
そして、深呼吸しよう。空を自分の中に取り込むのだ。
身体を空に溶かしてみよう。