【感想】漆黒5.0完走

ということで漆黒5.0を完走した。
このストーリーが好きだという人の気持ちがすごくわかるし、私も好きだった。正直プレイ中、つまらないなとか飽きたなとか、感じる暇がない。
一旦ここで漆黒の物語も折り返しになるし、面白すぎてプレイがやめられないので前半戦の振り返り。
SSは整理して今後追加する元気があれば追加します。

サンクレッドとリーンの擬似親子が好きだ

原初世界のミンフィリアを失い、その時できなかったことをもう一度…と肩ひじ張りまくっているサンクレッド。その隣で自分自身には何の価値もないと諦観の漂うリーン。
最初この二人を見ていて、ハラハラしっぱなしだった。

特にミンフィリア奪還作戦のあと、イル・メグに向かう道中でのサンクレッドの叱り方を見ていたらいたたまれないレベル。
リーンには何の考えもなかったわけではないし、サンクレッドも彼女を思っているからこそこういう発言をしたんだと理解はできる。
それでも10代そこそこの子供にも、十分意思はある。上から押さえつけても意味がないんじゃないかなぁと思ってしまうのは、自分が女性ゆえかもしれない。

だからこそエメトセルクがクリスタリウムで放ったサンクレッドに対する「ちゃんと話してたのか?」という発言に深く共感してしまう。

こういうところは子育て経験者だなぁ!と感心してしまうんだよな、エメトセルク。
とはいえサンクレッドも次第にミンフィリアと同じく変化をしていき、そうしてアム・アレーンでの一件のあとで、これが二人の決断だったのだと受け入れる。
この辺はプレイしながら号泣してしまったし「ちゃんと子離れ親離れができたな……」とひたすら安心してしまった。

子供を思うがゆえにがんじがらめに縛り付け、意思すら奪うランジート将軍が正しいのか、子供の意思を尊重し選択を見守るサンクレッドが正しいのか。
こういうことは結果論でしか話すことができない。子供なんだから育った結果を見なければわからないものだ。
それに自分が愛する人々の選択を尊重し、その人がその選択を後悔しないようにそばにいることは、とても尊く、難しいことだ。
その行為を選択したサンクレッドは強い。めちゃくちゃいいお父さんだ。そうしてその思いに必死に応えようとし続けたリーンも、めちゃくちゃいい娘だ。
よく考えたら3年も一緒にいるんだから、お互いのことをちゃんと理解できるベストパートナーになる素質は十分あったよな。

最初のままの二人だったら、サンクレッドが原初世界に帰るのはひたすら心配だった。でも今のリーンとサンクレッドを見ていたら、きっと二人とも大丈夫だな!と思える。
たくさんの出会いがリーンを変え、世界の未来も変えてくれたのだ。だから「リーンなら絶対大丈夫」だと信じたい。同年代の人なら、これが魔法の言葉だと分かってくれると思うし。

エメトセルク:最後の審判はこの先か?

原初世界から移動した先、第一世界で出会った人々は印象深い人ばかりだ。
個人的にすごく好きだったのはチャイ夫妻だったのだが(二人がお互いのことが好きなラブラブお人よし夫婦なところが大好き。オルシュファンのことを思い出した)、やっぱりインパクトという意味では水晶公とエメトセルクは飛び抜けていた。

特にエメトセルクはその人気の理由や、支持の強さがよく分かった。
エメトセルクたちアシエンはずっと、自分の仲間のことを待っていたのだ。自分の故郷や愛する人々を取り戻したい……彼は何一つ嘘をついていなかった。
ただ、日本語版と英語版ではかなり言っていることに違いがある。
たとえばこれ。

……以上、こんなところでサラリと大事な話をする、 私、アシエン・エメトセルクなのだった……。 いや、だって最初にきちんと宣言しただろう?
聞く耳を持てば、真実を語ろう……と。 ならば、こうしてわざわざ問いかけにきたお前にこそ、 語られる事実があるべきだ。

漆黒のヴィランズ 秘めた覚悟
エメトセルクのヒントトークより

Do you not trust me to speak honestly? Do you hope to catch me in a lie?
Really. I have no need of deceptionーーand even if I did, I assure you: you would find it quite indistinguishable from the truth.

私が正直に話していないと、疑っているようだな?
全部本当のことだ、お前を騙す必要はないだろ。そもそも仮に私がお前を騙したところで、お前には真実と見分けがつかないじゃないか。

同上
翻訳は筆者による。

日本語版では「いい子にして質問してきたからちゃんと本当のことを教えた」という感じだ。
ところが英語版では「お前に嘘を言っても判別がつかないだろ。だから嘘をつくだけ無駄」という方向性になっている。
まあ、言っていることは同じかもしれないが、これ一つとってもエメトセルクというキャラクターの印象はかなり変わる。

いずれにしてもエメトセルクは、光の戦士(第一世界においては闇の戦士)に何か期待している。期待しているから真実を話す。
それはこうして話をすることで、ヒカセンが何かを思い出してくれるかもしれないと思ったからではないか。

ここからもうしばらく彼や、彼の仲間たち、彼が取り戻したかった人々の物語は続くと思うが、彼に一番スポットが当たったのは、彼自身が人間性を失わず、一番アシエンのなかで人間的な造形をしていたからだろうな、と思う。
彼がヒントトークで話す通り、多分他のアシエンたちは長い時間を生きる中でだんだんと自身の形が変わっていってしまった。そのため一番人間だった頃に近い精神や考えを維持していたのがエメトセルクだった、と考えるのが自然ではないかと思っている。

このことがこれから対決することになるエリディブスと最も違う点だろうし、エリディブスにとって最大の弱点になりうることは想像に難くない。
多分単純に人間性を無くしただけではない。エリディブスはそれと同じくらい大切な何かを失ってしまった。それはエメトセルクがなくしたくなかったもののはずだ。

一体エリディブスはなにを無くしてしまったんだろう?

Remember:エメトセルクの訴えからここから先を思う

さてエメトルクの最期の言葉。
日本語版ではこうだ。

ならば、覚えていろ。
私たちは……確かに生きていたんだ。

ところが英語版になるとこうなる。

Remember...remember us...
Remember... that we once lived.

ここで使われている「Remember」には色々な用法があるが代表的なものはこの二つ。

  1. 覚えている

  2. 思い出す

ディズニー映画の「リメンバー・ミー」は「私のことを思い出してね」という意味にも「私のことを覚えていてね」という意味にもとれる、ダブルミーニングなタイトルになっている。
だからこの映画の主題歌では「リメンバー・ミー」と歌わねばならないのだとすら思う。ただ日本語で思い出してね、覚えていてね、と歌うのではダメなのだ。

閑話休題。
つまりここの文脈で、日本語版のエメトセルクは「忘れるな(ちゃんと覚えていろよ)」としか発していなかったが、英語版の彼は「忘れるな、あのときのことを思い出せ」と言っていると想像の余地がある。

つまり、私流に翻訳するとこうなる。

Remember...remember us...
Remember... that we once lived.

覚えていろ、私たちのことを。
そして思い出せ、私たちが確かに生きていたということを。

この言葉の後半だけに絞れば、それは暁のメンバーではなくヒカセンだけに向けられていることが何となく理解できる。ではエメトセルクはヒカセンに対してどんな話をしていたか?と思い出してみると、特に印象深いのはメインクエスト「高き場所より見る景色」のワンシーンだ。

ユールモアからも見える大昇降機を動かすというこのストーリーの中盤、エメトセルクは人々が集まった様子を見て古代人たちとともに過ごした時代を思い出す。

いい世界だったんだ、穏やかで朗らかで……。
真なる人は頑強な魂を持ち、ほとんど永遠の時を生きられた。
だから、余裕のなさから生じる、さもしい争いをしなかった。
ときに異なる意見を持ったとしても、同じ分だけ認め合えた。
アーモロートの街並みは壮麗で美しく、高い塔のさらに上、遥かな空から日差しと風が注いでいた。
……なんて。
言ったところで、思い出すわけもないか。

メインクエスト「高き場所より見る景色」
エメトセルクのセリフより

これ以外にも、いろいろな話をエメトセルクがしてきたり、アーモロートにヒカセンが市民登録されていたりする。
つまり、エメトセルクにとってヒカセンの魂を持つ人は身近な人で、思い出してほしいからこそそういう振る舞いをしていたと考えると、かなり納得できる行動だと思う。

そうしてそのことを、自分が消滅すると分かったその瞬間でもあきらめられていない。むしろ、消滅するからこそ思い出してもらいたいと思っていたのではないか、とすら思う。
だからこの言葉をベースにさらに翻訳文に追記してみる。

Remember...remember us...
Remember... that we once lived.

覚えていろ、私たちのことを。
そして思い出せ、お前が私たちとともにアーモロートのあったあの時代、確かに生きていたということを。

ここまで書いてみると、これは本当にヒカセンだけに向けられた言葉だったのか?という疑問が出てくる。場合によってはこのやり取りをもう一人聞いている可能性があるやつがいる。それはエリディブスだ。
エリディブスは大切な何かを忘れている…その何かとは、アーモロートのあった時代のことではないか。
エリディブスが忘れてしまった何かは、たぶんアーモロートが栄えていたころにあるはずだ。そこにそのまま、まるごとおいてきてしまった何かは彼に確認するしかない。

ここからもうひと山あるのが信じられない

ということで5.0をクリアした今のうちに書きたいことをまとめた。
ここから暁月までもうちょっとあるが、話がずっと面白いってすごいことだと思う。

もちろん、この形式のゲームでこういうストーリーを作っていくことに色々思うところもあるのだけれど、それはそれ、これはこれ。
闇の戦士になった自機を、その隣で一緒に冒険する一般人視点で追いかけているのは楽しい。

ここから原初世界に戻る自機や暁のメンバーたちが、どんな風な結末を迎えるのか…もうしばらく見届けるために頑張りたい。

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